帰り道
「そういえば四人とも転校生だよね」
「そうだな」
「怪しまれたりしなかったの?」
「俺らもそれは危惧していたんだが」
「他学年っていうのと、新学期っていうタイミングだったから、転校生どころじゃなかったみたい」
「だとしても紅と紺まで騒がれないのはおかしいでしょ」
…あぁ。何となく分かってしまった。
「もしかして転校するって情報漏れないようにした?」
「何かあったら困るからね。校長先生に転校生が来ることはなるべく内密にと頼んだよ」
「…色々聞きたいけど、とりあえず明日から頑張って」
「?」
「は?」
「何を?」
「……なんとなくわかった」
紅前、紺汐、彩木は何が?とでも言いたげな表情だが、閃雪はみるみるうちに顔が青ざめていく。
どうやら明日以降のことを考えて、自分たちがどうなるかを想像したらしい。
「なんだよ明日から頑張れって」
「勉強ってこと?」
「それはお互いだろう」
「そうだよねぇ」
なんて三人が話しているのをよそに、顔が真っ青な閃雪。
年下と意識した途端なんだか可哀そうに思えてしまって、気が付いたら口を開けていた。
「連絡くれれば助けに行く…よ…?」
気が付いたら発せられていた言葉。全くそんなこと思っていなかったのに。
「ほんと?」
そういってこちらを向いた閃雪は某付きキャンディを舐めていた。
そのまま距離を詰められ、気が付いたら腕を掴まれていた。
「いつの間に…」
「和沙、さっきの言葉忘れないで。約束しよ」
「約束って、私別にそんなこと考えてなかったんだけど」
「気のせいじゃない?ね、ほら約束」
そういって閃雪は指切りげんまんをしようと小指を差し出してくる。
自分の意図に反して自身の小指を絡めようと腕が動く。
「待てガキ。テメェ能力使ってんじゃねえよ」
視界の端から腕がにゅっと伸びてきて私の手をパッとつかんだ。
私の腕を掴んだもう一人は紺汐だった。
「え、能力?」
「使ってないけど」
「嘘つけ。キャンディ咥えてんだろうが」
「??」
訳が分からず脳内に大量のはてなが思い浮かぶ。
(そういえば味覚の延長って言ってたっけ)
だとしてもどういった能力なのか分からず、結局はてなの数はたいして減らなかった。
「いいか、こいつの能力はざっくり言うと”対話の場に参加してる奴が一人でも飲食をした場合対話すべてがこいつに有利に動く”とかいうクソ迷惑な能力だ。今度から気を付けろ。いいか」
「う、うん」
ものすごい剣幕で迫られて思わず返事をしてしまう。紺汐は案外面倒見がいいのだろうか。
「邪魔しないでよ。せっかく言質とってたのに」
「アホ。任務以外で使うな」
「そうだな、城沢が余計に混乱してしまうだろう」
「してないよ。だって完全に有利に動かなかったし」
「棒付きキャンディだからね、完全には発動しなくてよかったよ」
「こいつと二人で弁当食べたら確実に言質取られるからな」
(また釘を刺されてしまった)
面倒見がいいというより、私が引っかかりそうに見えるのだろうか。
(年齢変わんないんだけどな)
「和沙?怒った?」
「え、あ、いや怒ってない」
「本当?我慢してない?」
「してないです。少しぼーっとしてただけで」
「ならいいんだ。っていうかなんで敬語?」
「閃雪から三年って聞いたので」
「え、雪言っちゃったの?」
「上下関係大切なんでしょ」
「そう教えたけどあくまで一般論だって言ったよ?」
「なに、じゃあ慧はちがうの?」
「俺は距離感じるから、よく話す子には敬語よりタメの方がいいタイプだよ。いい加減覚えて?」
「興味ないし」
案の定、しゅんとしてしまった彩木を見て思わず年下みたいだなって思ってしまった。
「なるべくタメで話すから」
ね?と思わず言ってしまった。
「…子供っぽいとこあるなって思ったでしょ」
「えっ」
(正直思ったからこそ、ね?とか言っちゃったけど)
「思ってないよ」
流石に年上にそれは失礼すぎるから、思っていないことにした。
「城沢、嘘はよくない」
「!?」
「やっぱり思ったんだー」
「それはずるくない?!」
「ずるい…?はて、なんのことだろうな」
…やっとわかった。この四人のなかで一番警戒しなくちゃいけないのは閃雪でもなくて、紅前だということに。
(よりによって一番警戒しなくちゃいけないのと同じクラス…)
とりあえず、紅前がそばにいるときは気を付けよう。そっと心に誓った。
紅前を見ると目は瞑っていなかった。
それでもなぜか、心を覗かれているような。聴かれているような、そんな感じがしたのはきっと気のせいだろう。




