待っていたのは
私たちはそのまま何も話さず移動し、教室の前についた。
だが紅前は少し待っていてくれと言い、ガラガラとドアを開け、教室に入っていった。
「よし、そろっているな」
そう言いドアを閉めた。
(ドアの前で待つの変だよね)
開けたら目の前にいるのは少しホラーだろうな、と考えて壁に寄りかかって待つことにした。
(それにしてもさっきまでここには本当にまずい怪異がいて、空気まで淀んでいたのに)
そんなものは始めからいなかったかのように、他の空気感と遜色なくなっていた。
そうやって考えると先ほどまでのここは本当にまずいものだったと分かる。
(そんな怪異を対話のみで除霊?してしまうなんて)
鳥肌がたった。一気に紅前という人間の得体の知れなさに触れてしまった。転校初日だから知らないのは当然だが、本来は“得体のしれない”を知ることはないだろう。
(頭痛くなってきた…)
考えたところで頭痛に悩まされるぐらいなら、いっそのことなるようになれ。
そう腹を括ったときだった。
『ガラッ』
廊下に音が響いた。教室のドアが開いたのだ。
そして教室からひょこっと顔が覗く。
「ああ、いた。よかった。帰ったのかと」
「ここまで来て帰れないでしょ」
「そうか?別に帰ったところで俺はなんとも思わないが」
「……」
(やっぱり帰ればよかった)
「まあ俺としては帰ってなくてよかったがな」
「ああ、そう」
(やっぱりよく分からない)
「おい紅。話してないでさっさと入れろよ」
「そうだった。さ、入ってくれ」
「失礼します…?」
何となく言わないといけない気がしてつい言ってしまったけどおそらく必要なかった。
中にいたのは同じ制服を着た男子生徒たちだったからだ。
(なんだ、大人じゃないんだ)
組織という言葉に引っ張られすぎたようだ。
「礼儀正しい子だね~」
「評価されに来たんだから当然だろうが」
「それは紺が勝手に言ってるだけでしょ」
「そーだよ。紅は見てほしい人がいるって言っただけじゃん」
「つまり評価しろってことだろ?なあ紅」
「あながち間違いじゃないが、完全に正解でもないね」
「はぁ?」
「それで紅、その子の話でしょ。紺に構わなくていいから」
「おい!」
「そうだったね。まずは紹介させてくれ。彼女は城沢和沙、俺と同じクラスで…」
紅前はそこまで言って止まった。そしてちらっとこちらを見た後、目を閉じた。
ああ、視えることを言っていいか聞いているのか。
(それを言わないと提案できないのならいいよ)
そう心の中でつぶやいた。
「五感延長の持ち主だ」
『ガタッ!!』
紅前の言葉に三人は椅子と机から立ち上がった。
そのうちの一人がツカツカと私の方へ向かってくる。
(黒髪かと思ったけど、よく見たら深い青色だ…)
「おいお前。どこの延長だ」
「え?」
「どこの延長か聞いてんだよ」
「どこのって…目?」
「!!」
「視覚の延長か。紅、どこで拾ったの」
「拾ったんじゃないよ。彼女は人間だからね」
「紅、多分そういうことじゃないと思う」
「待て!視覚の延長だろうが、肝心なのは視えるものだ。何が視える?」
「…紅前、これ答えないとだめ?」
「答えなくていいよ。すまないね。みんな各々聞きたいことはあるだろうが、まずは俺の提案を聞いてくれるかい?」
「提案って紅、まさか」
深い青色の髪の男子が何か言おうとした、その時
「シーーー…」
紅前は唇に人差し指をあて、まるで幼い子をあやすかのように囁いた。
(目が離せない)
幼い子をあやすような仕草なのに、なぜか目が離せない。
怪しげな雰囲気が教室内に漂った…




