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紅前の考え

 

 紅前は少し考え込み、口元を片手で抑え顔をあげた。


「さっきの昔語りで俺がとある組織にスカウトされた、と言ったのは覚えているか?」

「うん。聞こうと思ってたし」

「組織については後で必ず教える。今は俺の提案を聞いてくれないか?」

「承諾するかは内容次第だけどそれでもいい?」

「ああ、もちろん。だが俺としてはのんでもらいたいと思っている。そして提案をするにあたって場所を変えたい」

「いいけど、どこに?」

「さっきの立ち入り禁止の教室だ」

「人に聞かれたくないってこと?」

「頭の回転が速いな。それもあるが少し時間が欲しいんだ」


 なぜ時間が欲しいのか、そう聞こうとしたが紅前はスマホを取り出しどこかに電話をかけてしまった。

 内緒話のようだから、ほぼ完全に人が来ないところで話したいのは分かるが、なぜ誰かに電話をかけるのだろう。



(ありえるのは組織の人にだけど)



 そんな近くにいるのだろうか。少し教室を移動するだけでそろうような組織なのか...

 安易に話を聞くなんて言わなければよかった。さっきから私は何かとおかしい。

 本来なら昔語りまで聞かない。なぜ紅前のことを、能力のことを聞いてしまったのか。



 私の能力のみ教えればよかったものを。紅前のいうおしゃべり好きは高度の会話術をカモフラージュしているような気がしてくる。



 ぐるぐる考えているうちに紅前が電話を終えたようだった。

 どうやら一人だけにかけたのではく、三人にかけたようだった。



「すまない待たせたね。さあ行こうか」



 私はこくりとうなずいた。



 紅前に続いて教室を出る。



 何を話せばいいのか分からなくて無言のまま紅前の後ろをついていく。

 流石にここで世間話をするような空気の読めない人間ではない。



「……」

「……」



 紅前も何も言わずに歩く。

 後ろからじゃ顔が見えないからどんな表情をしているのか分からない。



 なんとなく今から会う人たちのことを考えているような気がした。


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