五感の延長とは
紅前の一人語り
昔は普通の人が聞こえないものが声となってひっきりなしに聴こえた。普通の話し声も聞こえるからかなり辛かったよ。
今考えると”聞こえないが声として分類されてしまうもの”が俺には音になって、話し声含めすべて聴こえていたんだろうね。
そしてそれらは時折ノイズがかかっているように聴こえたりもした。
この能力のせいで当時は毎分毎秒情報でパンクする脳と戦っていたよ。
俺がこの能力をここまで自分で操れるようになったのは、ある組織にスカウトされたから。そこで自分の能力を調べてどう扱うのか学んだんだ。俺の能力は聴覚が異常に発達しその結果自分を中心とした半径数十メートルの本来ならば聞こえないはずの声と分類されるものすら普通の音として全て拾ってしまう、というものだったよ。
それと同時にこの能力を操れなかったらあと数年で俺の脳は耐えきれなくなると。所謂寿命を伝えられたよ。そりゃあそうだろうとも思った。ただでさえ人間の五感は刺激を受け続けているからね、それに聴覚が異常発達なんてなったら今まで無事だったのが不思議まであるよな、とも思ったかな。
ただだからこそ一番の対処として五感のうち一つを一時的にシャットダウンするだった。
一番やりやすいのは視覚だからね、試しに数秒間瞑ってたら頭の中がクリアになった。ノイズは相変わらず混ざるけど、すべての音が混ざっていた時とは違って全部はっきり聴こえるんだ。脳の処理が追いついたんだろうね。
これも今思えば無意識にやっていたことなんだ。寝るときとか聴こえてなかったし。気が付かなかったのはそこまで考えれるほど目を瞑ったまま意識がもたなかったからね。すぐ寝ていたんだよ。
おっと、話がそれたな。目を瞑るという方法の後に、決まり事のことも教わった。慎重に決めたよ。課したことはさっき言ったね。あれのおかげで能力をほぼ操れるようになったんだ。あとは常時聴こえさえしなければ。つまり自分のタイミングで聴けるようになること。
必死に練習したよ。目を瞑って開けてまた瞑って。それの繰り返しさ。何か月も続けた。気が付いたら聴こえなくなっていた。そこからだよ。俺は何も課さずに能力の発動を自分の意思でできるようになったんだ。
さっき城沢は俺に聞いたね。
少しだけ訂正、いや詳しく言うと
「”今は”目を瞑らないと聴こえない」




