345話 ジョシュアとアヅチと灰川と
「まずは私が日本に来た理由は、オセアニア地域の諸島の国家で発生したオカルト事件を解決した後に、日本が経由地点だったので少し寄ろうと思ったからです」
「諸島の国家というとコモンウェルス(イギリス連邦)の一国でしたっけか、オカルトでも結びつきがあるんですね」
「はい、オカルト事件の数は多くありませんし、現地にも優秀な霊能者は居るのですが、今回は協力しなければならない案件が出まして」
その案件を済ませてからヨーロッパに帰る際、日本が中継地点だったためアリエルに会おうという事にしたのだそうだ。MID7に妹に会いたい旨を話したら、ちゃんと会ってしっかり話して来なさいと勧められたらしい。
しかし日本が中継地点な事には海上で気付いたらしく、一般旅客機ではない飛行機のため無線機は使えるが携帯電話などは使用できず、事前の連絡は出来なかった。
日本に到着してからはスマホがアリエルに繋がらなかったそうで、それはネットトラブルの影響だと分かったそうだ。どうやらトラブルの影響で、海外のサーバーを経由する電話は繋がらなくなる事態も出てるそうなのだ。
仕方なく日本の国家超常対処局に連絡を取ってどうにか妹に会いたいと伝え、その連絡を局長のアヅチが受け、灰川が来る予定であるフォレストガーデン・渋谷に来たという事らしい。
アヅチは訳あって電話で灰川に連絡する事は避けたかったらしく、現地に来たのは仕方なくの措置だった。ユニティブ興行の予定については情報網で何とでも掴めるのだろう。
「何があったのっ? 悪魔でも出たの兄さんっ!?」
「その事に関しては喋れない、仲間であっても任務については話せない事が多いのは知ってるだろう」
「そうだよね、ゴメンよ兄さん。それにボクはMID7は実質的に出向中の扱いなんだしね」
国家超常対処局もMID7も秘密機関であり、仲間であっても話せない事などは普通にあるようだ。そこは仕方ない部分であり、関わるなら納得しなければならない。逆にどうしても納得できないならば身を引くしかないだろう。
ジョシュアもアヅチもここに来て灰川たちに会ったのは成り行き上の理由が強く、今は特に大きな目的などは無かったとの事だ。
しかし兄妹で積もる話もあるし、アヅチは灰川と是非に話してみたいと思っていたそうで、丁度良い機会でもある。
「アリーは日本で元気にやれているようで安心したよ、友達も出来たそうだし、食事もしっかり摂れてるみたいで良かった」
「カナミとはスゴく仲良しさっ、スクールも楽しいし授業以外にもジャパンは学べる事が多くて楽しいよ。食事も美味しいんだっ、特に甘いパフェは最高だね!くふふっ」
「ファースの事も聞いています、ハイカワさんがエネルギー充填を出来るそうですね。最初に聞いた時は驚きました、私は絶対にそんな事は出来ませんから」
「いや、まあ、たまたま得意な分野だったみたいなだけですよ」
灰川もジョシュアと少し会話をしたのだが、やはりアリエルに家族同士で話させてあげたいと思い、談話室には2人を残して灰川とアヅチは廊下のベンチに席を移したのだった。
「国家超常対処局の局長さんは女性だったんですね、タナカさんとかサイトウさんとかとしか会ってないから、女性ってイメージがありませんでした」
「そうでしたか、一応は灰川さんはカワノも見ているはずですが」
「怪人Nの時の人ですか、気を失われてたようですし顔も見てませんから。その後はお会いしてないので、やっぱりイメージが残っていません」
灰川は国家超常対処局の局員はタナカとサイトウくらいしか知らない、名前を聞いた事はあったかもしれないが顔は見てないし印象も無かった。
「灰川さんはとても強い霊力を有しておられるそうですね、しかし失礼ながら、今の状態ではそれがあまり感じられないのですが」
「そんなに大した事はありませんよ、タナカさんが大袈裟に言っちゃってるだけだと思います。ははっ」
アヅチは灰川が普段は霊力を抑えて生活してる事は知っていた。そうでなければ霊能力がある人に無駄に威圧感を与えてしまったり、霊魂を問答無用で消滅させてしまったりするためだ。
今の状態では特に大きな霊力は感じられないのだが、それでもアヅチは灰川を軽く見たりはしない。陽呪術という霊術体型も興味深いと思っている。
「局には灰川家の記録などは殆どないのです、どうやら大昔に失われたか伝えられてなかったようでして」
「自分も没落したのは江戸時代よりもずっと前って聞いてますし、記録とかは無いと思いますよ。実家には口伝えで残ってた話を記録した書物とかありますが、歴史的な信憑性は薄いでしょうね」
灰川家の記録は公式な物ではないし、よく調べると時代が合わない文書や齟齬があったりする記録なども多い。古い本だが書き留められたのは明治時代以降であり、歴史的な価値や信用は無いに等しいのだ。
「昨今はオカルト情勢も色々と大変でしてね、局の力だけでは対応しきれない事態も多い中で、灰川さんの協力は非常に助かっております」
「そう言ってもらえると嬉しいですよ、自分もタナカさんとかと関わるようになってから、裏ではオカルトに対処する機関がちゃんとあるんだって驚きました」
取り留めのない会話をしつつアヅチは灰川家の事を聞いたり、どんな対処を今までして来たのかなんていう事を聞いて行く。
特に聞かれて困る事もないので灰川は話すし、アヅチも情報を引き出そうと思って聞いてる訳じゃない。そもそも本気で情報を引き出そうと思ったら、こんな直接的に聞いたりしないものだ。
「局としては灰川さんの霊能力は非常に稀有な力として見ています、緊急時に力を何度かお貸し頂き助かっていますが、謝礼は全くと言って良い程に足りてない自覚もあります」
「いや、サイトウさんからパソコンとかカメラとか頂きましたし、局はそこまで資金が豊富な機関じゃないとも聞いてますので」
「そう言う事をハッキリ言える人なんですね、確かに局は資金が豊富とは言えませんが、普通の霊能者なら命が幾つあっても足りない状況を何とかしてもらってるのですよ」
怪人N、闇部屋怪異、上位ヴァンパイア、五角屋敷城と国家超常対処局が関わった案件だけでも最高レベルの危険度、もしくは高い解決困難レベルがある案件に貢献した。
そんな灰川に対して局から謝礼を払ってないに等しい状況であり、これはアヅチは様々な意味で問題があると感じている。
灰川は口も堅いし局の存在は四楓院家にも言っていない、以前にサイトウがハプニング的に胡桃名家の子孫に漏らしてしまった以外では、外に情報は漏れてないだろうと踏んでいるのだ。
「先に言っておきます、国家超常対処局員の給料は最低額でも月に100万円です」
「えっ! そんなに高いんですか!?」
「この金額が高いか低いかは意見が分かれる所ですね、ですが事実です」
「タナカさん、給料は低いみたいなこと言ってたのにっ」
「タナカはギャンブルが好きですからね、借金はしませんが金が出て行く生活スタイルなのは本当のようです。サイトウも機械いじりが好きだから金を使うでしょうし」
タナカは危険度や忙しさに対して給料が低いといった感情を持っており、実際にはそこまで安い給金ではない。
「それに対して灰川さんには事情があるとはいえ謝礼が出来ないのは、信用を得られているか心配になるという心持ちもあるのです」
「それは、まあ…でも信用してますって」
「加えてMID7とのコネクションが出来たことは、灰川さんのおかげと言っても過言じゃありません。アーヴァス家とのパイプも同様です」
国家超常対処局としては聖剣の担い手を2名も有するアーヴァス家との繋がりが出来たのは嬉しことであり、そのパイプのジョイント部分である灰川を冷遇してると思われるのは非常に厄介なのだ。
しかしアーヴァス家も灰川の性分は知っており、金銭を受け取る事を強く渋る人物だという事は理解している。だがアーヴァス家はユニティブ興行に良い仕事を回すという形で礼をしようとしている最中だ。
アリエルの聖剣のエネルギー充填を行い、上位ヴァンパイア捕獲の手柄を実質的にアーヴァス家にもたらし、アリエルを狙った人造悪魔の疑いが強いルーザを倒した。
アーヴァス家にとって灰川はもはや無視など不可能な存在であり、どんな形であれ娘と一緒になって欲しいとまで考えている段階だ。
「灰川さん、お金や権力を恐れる気持ちは納得は出来ます。しかし自営業者であり所属者や職員を守る上では金銭が必要になる場合もある筈です」
「それは分かってるんですが…でも簡単には…」
「生活だってあるでしょうし、この先でお金が必要になる場合だってあるのですよ。若いから分からないかも知れませんが、病気や怪我、何らかの問題が起こった時に~…」
灰川はこれと同じ事を九州に行った時に出会った特殊な霊能者である悠遠に聞かされた、何かが起こった時の備えとして金を持った方が良いという事だ。
それは分かっている、だが金に溺れるのが怖い、その気持ちは前よりは軽くなっているとはいえ今もある。
「私が見た所、灰川さんには金銭を持って不幸になるような呪いだとか霊的な念はありません。もう少し考え直して頂けませんか?」
「そうですね…自分でも分かってるし、前より金は取るようにしてるんですが、やっぱり霊能活動で多額の金を持つのは…、事務所の仕事では適正の金額をもらってますけど」
「…やはり霊能活動に関しては考えは変わりませんか、それなら我々も回りくどい方法を取るしかないかも知れませんね」
「それって、どういう事でしょうか?」
「公共事業アンバサダーとか、JHK放送の仕事、公共広告などの仕事に興味はありますか?」
これがもし灰川が意図して自分の得を取らず事務所の得として立ち回っていたのなら、そこそこのビジネスマンだとアヅチは感じる。
自分が金を受け取って終わりではなく、仕事をもらって次の大きな仕事に繋げつつ事務所の業界知名度も稼いでいく、それを意識してやっているのなら立派な一つのスタイルと言えるかもしれない。
しかし彼は無自覚で『恩への投資、利益確定の先延ばし』をやっているのは分かっている。彼はそれを完全に意識せず行っているのが見て取れる。
アヅチは裏では様々な方法で各所に手を回せる政治力があり、それを使ってユニティブ興行に大きめの仕事を回すという方法で謝礼とする事に決めた。
彼女が回す仕事はどれも簡単には取れないものであり、それらの仕事を取るためには普通の芸能事務所なら長い年月と資金力と伝手、そして知名度がある所属者などが必要になる。
灰川は今までの功労を直接的な金銭ではなく、大きな仕事を更に取るための時間の短縮、地盤を更に固めるための材料に変える事に図らずも成功したのだ。
ドラマの仕事があるから事務所は安泰とか、大企業の仕事があるから安心なんて事は無い業界だ。
知名度を上げたなら維持しつつ更に上げなければならない、そのための道を更に硬くする。
四楓院家に頼れば何とかなるのは灰川も分かる、しかしそれだけでは英明や陣伍に迷惑を掛けるだけ、そういう存在になってしまうのは避けたい灰川にとっても良い話である。
「ハイカワさんに明日に大切な事を伝えるそうだねアリー、上手く行きそうかい?」
「……! う、うんっ!もちろんさ! たとえ明日が上手く行かなかったとしても、何度でもチャレンジするまでさ!」
「彼の人格はどうなんだい? 私には普通の人という印象が強かった気がするんだが」
「ハイカワはとっても優しいよっ、普段はスゴい所はないように見えるけど、イザという時は凄く頼りになってくれるんだ」
ジョシュアは妹に呪いが掛けられたと知った時は、すぐにでも自分が向かって対処したいと考えていた。
今それをしようと霊視をしているが、呪いはジョシュア対策も万全であり詳しく感知できず、自分や聖剣の力を使っても解呪は無理だとすぐに分かった。
同時に灰川の事を聞いたりして、彼がどのような人物なのかも見聞きしたが、特に危険な人物ではないという事も分かっている。
出会い頭にアリエル達を下げて守ろうとした事もジョシュアの中では好印象であり、灰川は霊力を隠してはいたが強い事は聞いていたため信じてもいる。
「まずは元気そうで安心したよ、日本の芸能の仕事も上手く行ってるようだしね」
「うんっ、ファースもハイカワがエネルギー充填してくれるし、今はとっても落ち着いているよ」
「しかし、こんな時にフィアンセを決める話が出るだなんてね、アリーはまだ9歳なのに」
「兄さんがそれを言うの? 兄さんはワーズに選ばれた時から誰と結婚させるべきか親族の中で論争になったのに」
「それを言われると弱いな、はははっ」
ジョシュアは聖剣の担い手として非常に高い素養と能力を有しており、彼に見合う結婚相手は今も見つかっていない現状がある。
もし仮に灰川誠治が女であったのなら、どれだけ金を積んででもジョシュアの妻として迎えていただろうというのが、アーヴァス家の見解だ。
「それとアリー、呪いを掛けた相手は今も捜査中だけど、スオード家は関わってない可能性も出て来た。個人的な見解だとスオード家は関わってないと思う」
「そうなのっ?それなら良かった! あ、でもレオニーを引っ叩いて吠え面かかせられないのは残念かなっ」
「アリーはレオニーとは仲が悪いからな、私にはそんなに突っかかって来ないけどね」
アーヴァス家と昔から仲の悪い家であるスオード家には、レオニー・スオードという娘が居る。彼女はアリエルと同学年で、本国で同じスクールに通っていた子だ。
スオード家も聖剣の家系であり、レオニーは将来的には担い手になるだろうと目されている子だ。
かつてはアーヴァス家とスオード家は政治的に酷い対立をしてしまい、その時から今に至るまで仲は良好とは言えない。かつてから受け持って来た場所が地理的に近く、色々と揉めてきたのも仲が悪い原因の一つだろう。
アリエルは同級生のレオニーと仲が悪く、矛盾の呪いが発覚した時は真っ先にスオード家の関与を疑った程だ。
本国では2人を違う学校に通わせるという手もあるにはあったが、伝統的に2つの家は同じ学校に通っており、それを変える事はなかった。
学校の方はアリエルとレオニーを極力に離させて学校生活を送らせるという手を講じ、大きな喧嘩とかにはならず過ごせていたのだ。
「兄さんは学業と任務は順調なの? ジャック隊長から兄さんはスゴいって聞いてるけどねっ」
「順調にやっているさ、ワーズも問題なく力を貸してくれている」
その後も兄妹で積もる話をしつつ時間が過ぎて行き、やがてパーティー開始時刻に近付いて行った。
「あ、来苑、桜ちゃん、もう来てたんだね」
「空羽先輩、どうもっす!」
「こんにちは~、今日から明日にかけてパーティーだね~」
会場に空羽も到着して来苑や桜とも合流する。砂遊たちは既に来ていて、朋絵などを含めたユニティブ興行の所属者も到着している事なども聞いたのだった。
「市乃ちゃん達も着いてるそうだよ、さっき電話が来たから」
「SNSが使えないと不便っすね、今まで意識して無かったけど、自分も相当に頼っちゃってる方なんだって思いましたっすよ」
「ロズさんとか智草さんとかも来てるよ~、シャルゥちゃんとケンプスさんも来てるね~」
「うん、コバコちゃんと桔梗さんも来てるって、私は来るの遅い方だったんだね」
既にかなりの人数が会場に集まっており、後はパーティー開催の挨拶があって、それぞれに食事をしたり出し物があったりなどの予定である。
空羽は配信やネット活動が制限されている時間を使って資格勉強などをしたり、仕事を片付けていたりと有意義に時間を使っていた。
「ちょっと会場とか回ってみようか、幾つかパーティースペースがあるんだよね?」
「そうみたいっすね、自分もさっき来たばっかりで中は見てないっす」
「私も見てないよ~、というか見えないって言った方が正しいかな~、むふふ~」
「ちょ、割とブラックなジョーク飛ばすね桜ちゃん!」
空羽たちは最上階のエレベーターホールに近い場所に居て、まだ会場などは見回っていない。パーティー開始の前に少し見ておこうという運びになった。
「ここは料理とかが出されるバイキングスペースだね、広くて落ち着く照明で良い場所だと思うな」
「うぅ…明日は大事な日だから、調子に乗って食べ過ぎないようにしなきゃっすね…!」
「れもんちゃんは食いしん坊さんだもんね~、私もだけどね~」
そこそこ広いスペースで、パーティーが始まったら料理が並ぶであろうダイニングがある場所だ。
テーブルや椅子などもあるし立食テーブルなどもあるため、結構な人数が居ても問題ないメインのルームである。
ドリンクカウンターもあり、成人している所属者などにはアルコール類も提供される。
「こっちはお洒落なシアターっぽいサロンって感じのスペースだね、ピアノとか置いてあるんだ」
「あちこちにモニター画面とかあるんすね、挨拶とかはモニターで流すって感じにするっぽいねっ」
「カラオケの機械があるって聞こえたよ~、誰か歌うのかもだね~」
大人っぽい空間のイベントスペースもあり、シックモダンな照明でラグジュアリーな雰囲気の会場だ。
その他にも個室で談話が楽しめるルームとかもあり、広いスペースを豪華に使って所属者達に楽しみつつ親睦を深めてもらいたいという、社長達や役員たちの考えが見える雰囲気だ。
「空羽先輩たちも会場に来てたんですねー、こんにちわー」
「今夜はよろしくお願いします、私も市乃ちゃんもシャイニングゲートさんのVの方々とは会った事が無い人がほとんどですので」
「こっちもよろしくね市乃ちゃん、史菜ちゃん。私たちもハッピーリレーさんのVさんと女性配信者の人達は、会った事が無い人がほとんどだよ」
「由奈ちゃんと佳那美ちゃんは向こうでハピレのVさんと話してたっすよ」
「灰川さんはお仕事中かな~、こういう時ってスタッフさんは忙しいみたいだからね~」
市乃や史菜とも合流し、これで灰川と仲の良い者達やユニティブ興行所属者は揃った。シャイニングゲートとハッピーリレーの所属者やスタッフも集まって来ており、そろそろパーティー開始の挨拶が始まる頃合いである。
なお、ハッピーリレーの男性所属者たちは28階にある小規模なレストハウスを貸し切って、そこがパーティー会場となっている。
女性所属者が男性側に行くのは自由だが、男性は女性の会場に入れないという形式になった。
これでもシャイニングゲートは譲歩した方であり、パーティー開催も急に決まったため男性は参加させないという意見もあったほどだ。
しかしシャイニングゲートは男性と距離を置き過ぎる今の社風では、芸能活動にて限界があると考えており、その壁を少しでも下げる足掛かりとして今回のような方策を取った。
「私たちもメインスペースに行こうか、そろそろ始まるだろうから」
「あっ、砂遊ちゃんと朱鷺美ちゃん、それに朋絵さんも来ましたよー」
「由奈ちゃんと佳那美ちゃんも来ましたね、佳那美ちゃんのお母さんも一緒ですよ」
「アリエルちゃんは居ないっすね、灰川さんと一緒に居るそうっすけど、何かあったんですかね?」
やがて開始時刻が迫り、所属者達はメインスペースや談話スペースなどに集まり始める。
既に会場はシャイニングゲートとハッピーリレーの所属者が多く集まっており、中には会社の垣根を越えて話して親睦を深めている者なども出て来ていた。
「それでは灰川さん、私はこれで失礼いたします。ユニティブ興行さんや提携事務所さんに斡旋できる事業内容は、灰川さんの携帯にメールで送っておきましたので」
「ありがとうございますアヅチさん、また何かあったら無理がない範囲で協力しますので」
「よろしくお願いします、祓いの御札も作って頂き助かりました。本当に凄い霊力だ……」
アヅチは灰川と言葉を交わし、御札の製作で力の一端を見て驚きながら帰る事になったのだった。
ユニティブ興行としても大きな仕事をもらえたし、今まで協力して来て良かったと灰川は感じる。
「ジョシュアさん、アリエルともっと話したいと思いますから、良かったらパーティーに参加して行って下さい。男性の会場もありますので」
「ありがとうございます、アリーがどのような人達と仕事をしてるのか気になってましたので、少しばかり参加させて下さい」
滅多に会えない家族が来たのだから、今日は帰って2人で過ごした方が良いのではと灰川は言ったのだが、アリエルとジョシュアがそれを断った。
このパーティーは小中高の学生の者達は家族の同伴も認められており、アリエルはそこに含まれる年齢だ。とはいえ高校生くらいになれば親は付いて来なくても大丈夫だし、中学生所属者である由奈も親は付いてきていない。小学生は可能な限り家族の同伴がなければいけない。
アリエルとジョシュアにとってパーティーをすっぽかすなど絶対にやってはいけない事であり、参加すると言ったパーティーに行かない事は、主催者を侮辱するようなものだという考えを強く持っているのだそうだ。
アリエルとしても今日のパーティーは親睦を深める大切な催しだと聞いてるし、数少ないユニティブ興行の所属者である自分が参加しなければ、所長である灰川の面目を潰す事になると感じている。
「じゃあ案内しますんで、俺と一緒に来て下さい」
「分かりました、よろしく」
「兄さんは男性所属者のスペースに居るんだね、後でボクも行くからっ」
こうして3社合同の親睦パーティーは始まり、それぞれの時間となっていく。
会場の参加者は仲の良いメンバーや気の合う者同士が集まっている所が多く、まだ完全には親睦ムードにはなっていない。
そして、シャイニングゲートの内部派閥の者達も同じように集まっている。
「うししっ、騒がしい会場になりそうだなぁ~、女の巣窟なんてロクな話が飛び出さないぞぉ~」
「…さ…砂遊ちゃん……そういうこと…、…言わない方が……」
「女なんて2人集まりゃマウント合戦、3人集まりゃ陰口大会だからねぇ、うししっ」
「…うぅ…4人集まったらイジメが始まるよ……、…そうじゃなくて…っ」
この場には仲の良い者も多いが、中には対立する者やグループ、意見や性格が決定的に合わない者なんかも居たりする。
人気Vtuberが揃っており、彼女たちの中には尖った性格や変わった性格の者なんかも居たりするのだ。上手く行く所もあれば上手く行かない所が出る可能性もあるだろう。




