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配信に誰も来ないんだが?  作者: 常夏野 雨内


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344/345

344話 予定外の事が多い日

 事務所でアリエルを拾って、フォレストガーデン・渋谷に佐嶋の車で連れて来てもらった。


 地下駐車場に入ってもらい、既にそこそこ車が停まってる状態だ。見覚えのある車も数台あるため、既にスタッフは何人か現地入りして準備が始まってるらしいのが分かる。


「サジマさん、送ってくれてありがとうございます! またドラマでよろしくお願いしますだよ、くふふっ」


「こっちこそよろしくねリエルちゃん、前はヤバイ演技しちゃってゴメン」


「ありがとうございますねぇ~、佐嶋さん。いつか配信でコラボして私のことバズらせてくれたら嬉しいですよぉ、うししっ」


「いつが良い!? ネットトラブル明けたら配信一発目でやる!? 俺のチャンネルに出て!マジで!」


「おいおい佐嶋君…まあ、そこら辺は事務所の意向とかもあるだろうしさ。砂遊も冗談言うなって」


 佐嶋は砂遊からコラボしたいと言われたら即座に頷くくらいになってしまっている、モシィの配信も相当に繰り返して見てるようだし、体調とか大丈夫なのかと灰川は思ってしまう。


「…あ…っう……、…その…」


「藤枝さんは“佐嶋さん、送ってくれてありがとうございます”だって、俺からもありがとう佐嶋君」


「~~! いや、お礼を言うのはこっちだって藤枝さん! キョウヤのことありがとう! いや~、本当にユニティブ興行さんは逸材揃いで羨ましいなぁ!」


 慣れない人を相手に喋るのが藤枝は苦手で、しかも男が相手だと尚更にその傾向が強くなる。もはやまともに会話が成り立たないレベルになってしまうのだが、それすら佐嶋にとっては好みの琴線に触れてしまう。


 灰川 砂遊と藤枝 朱鷺美、佐嶋にとって奇跡のようにタイプにマッチした女子だが、2人は中学3年と高校1年、口説いて良いような年齢ではない事も充分に知っている。


「はぁ~、俺も3社パーティーに参加したいなぁ~、面白そうですしね」


「無茶言わないでよ佐嶋君、そんなに砂遊と藤枝さんが気になるの?」


「…っ……、…あの……」


「ん? ああ、佐嶋君は藤枝さんのファンになっちゃってるよ、砂遊とか藤枝さんのような人がタイプみたいだからさ」


「……!? …っ…ぁぅ…」


「自分みたいな人がタイプなんて変?そんな事ないって藤枝さん、でも恋愛的な意味じゃなくて推し的な意味での好意だから、そこは取り違えないであげてね」


 灰川は藤枝がこういう状態の時でも言ってる事が普通に理解できる、砂遊も同じような感じであり灰川家は藤枝と波長が合うのだろう。


 藤枝はまさかあの佐嶋純輝が、陰キャで暗くて人とまともに喋れなくて目を合わせるのも無理な人に好感を持つなんて思っておらず驚いている。あんまり佐嶋の事は知らないが、人って色々なんだと改めて思うのだった。


「あ、車が来たよぉ~、ちょっと避けてあげよっかぁ」


「さすが砂遊ちゃん! 細かい所に気が利く女の子って良いよね!」


「細かくもないだろ佐嶋君…坊主憎けりゃ袈裟まで憎いの逆バージョンになっちゃってるな」


 灰川たちは車から降りて駐車場通路に近い所で会話しており、念のために皆で端の方に避ける。


 その近くに先程に来た車は駐車し、その車から2名の人が降りて来る。運転席からは30代後半くらいの女性、助手席からは20歳くらいの外国人と思われる男性だ。


「…佐嶋君、悪いんだけど皆を連れてドライブに行ってくれん? 早く…!」


「えっ、でも…え? あの人達って知り合いとかですか?」


 灰川は車から降りて来た2人を見て何かを感じた、それは危険性のある場所に身を置いている者の空気感なのか、彼ら自身が危険な者達なのか。


 詳しい判断は付かないが、とにかく何かが普通とは違う感じがする。そんな者と地下駐車場なんて場所で出会う、偶然とは思えなかった。


 ここには人気俳優の佐嶋と資産家の娘であるアリエルが居る、何かの危険に巻き込まれてもおかしくはない。注意力が欠けていたかと思ったが…。


「兄さん!? ジョシュア兄さんなの!? ボクだよ!アリエルだよ!」


「久しぶりだアリエル、突然に来てしまってすまないな」


 「「!?」」


 助手席から降りて来た男性は何とアリエルの兄、ジョシュア・アーヴァスだった。灰川たちは初めて見る人物である。


 身長は180cm以上で細身だが、しっかりしている体格なのが衣服の上からも分かる。服装は青いカジュアルスーツと青いインナーシャツであり、動きやすさと格好の良さが両立した出で立ちだ。


 顔は物凄いイケメン、男だろうが女だろうが美男と認めるレベルの顔立ちだ。映画俳優だと言われたら信じるだろうし、1回の撮影で何万ポンドも稼ぐモデルだと言われたら信じるだろう。


 彼の容姿を例えるなら『アリエルを男性にして成長させた容姿』と言えそうだ、兄妹なのだから似てる部分もあり、やはり顔立ちの整い方は同じタイプな感じである。


「ふぉぉ…すんげぇイケメンだねぇ~、うししっ」


「…ぇと……アリエルさんの……お兄さん…?」


「マジか…なんか佐嶋君とアリエルの兄さんと一緒に居ると、自分がクリーチャーくらいの容姿に思えて来るんだが…」


 イケメンではない自覚がある灰川は何となく居づらさを感じる、上位種の中に1人だけ混ざった劣等種、そんな感覚がしたような気すらした。


 日本屈指の美男の佐嶋、初めて会う最高レベルのハンサム外国人青年、そんな者達がこの場に居る。


「兄さん!会いたかったよ! ボク、ジャパンでガンバってるんだ!くふふっ」


「活躍は聞いてるよアリエル、俳優をやっているそうだね」


「うん! まだ放映されてないけどドラマに出演してるんだ! それとフォトモデルのお仕事もしたよっ」


 アリエルがジョシュアに走り寄って話し始める、久方ぶりの家族との再会なのだ。顔には兄妹とも嬉しさが滲んでいた。


 なんだかアーヴァス兄妹を見てるだけで視力が回復しそうな気がして来る、アリエルだって容姿が非常に整った子であり、それは兄を凌ぐか同等かというレベルなのだ。


「うししっ、灰川兄妹とはレベル違いだねぇ~。お兄ちゃんも私とブラザーシップでも深めとくかぁ~?」


「じゃあ深めとくかぁ、明日は猫どもの部屋の掃除よろしくな砂遊」


「明日はお兄ちゃんの当番だろぉ~! そ~いうのはブラザーシップって言わないべやぁ!」


 そんな冗談を言い合っているとジョシュアが灰川一行に向かって歩いてきたのだった。


「こんにちは、貴方がハイカワさんですね? 妹がお世話になっています」


「あ、いや! 俺は違います!灰川さんはこっちです」


 ジョシュアは佐嶋を灰川と間違えてしまう、明らかにイケメン度合いでは佐嶋の方が上だからだろうか。


「すみません、貴方がハイカワさんですか? 噂は伺っております」


「あ、どうも、こちらこそ」


 あまりの美男子ぶりに灰川は内心で恐縮してしまうが、そこは表に出さず対応する。


 頭の中では『この人も聖剣を持ってるのか』『凄い霊力なんだろうな』とか思うが、そんな事は今の場で言わない。活躍もしてるのだろうが、それらは世の表には出ない活躍なのは分かる。


「兄さんっ、どうして連絡してくれなかったのっ? なんでジャパンに居るのっ? そちらの方は誰? あとねっ、えっとねっ」


「アリー、質問が多いな。そんなに長く日本に居る訳じゃないさ、来たのは色々と要件があってだ」


「とりあえず立ち話も何ですから、場夜を変えて~~……」


 積もる話もあるだろうが地下駐車場というのは場所が悪い、しかしジョシュアと一緒に来た女性も誰なのか分からず、疑問は積もる一方だ。


 ここはフォレストガーデン・渋谷に入って何処かで話でもしようと思ったのだが。


「おーす、灰川さん! こんちわー!ってスゲえイケメンが2人も!しかもスゲぇ可愛い男の子も居るじゃん!? なんだこれ!」


「どうもこんにちは灰川さん、ネットが使えなくなったのって私の不幸体質が原因じゃ…すごいハンサムな人が居てますね…!」


「雲竜コバコさん! ボクは男の子じゃないよ!でも兄さんは男の子さ!」


 そこに車で送られて来たと思われる飛鳥馬桔梗と雲竜コバコが来て、イケメンだとか騒いでしまう。


「あっ、灰川さんだ! オータムアート芸術祭の作品は良い感じに行って~…うわっ!佐嶋純輝さん!? と、そこに匹敵するくらいのイケメンさん!?」


「どうも灰川さん、私もピアノの練習の時間を~…すっごいハンサム男子! えっ、サジジュン!? もう一人も凄い品性があるハンサム男子…!!」


 同じ車に乗せられて来たと思われる赤木箱シャルゥとケンプス・サイクローも来て、やはり2人を見て驚く事になった。佐嶋は有名人だから普通の反応かもしれない、ジョシュアは有名人ではないが美男子っぷりに驚いている。


 普通なら街中でイケメンを見たってこんな反応にはならない、しかし佐嶋とジョシュアは街中で見るイケメンとは全く格が違う美男子であり、こういった反応になってしまうようなのだ。


 こういったレベルの美男を生で見て来ていない彼女たちにとって、彼らを生で間近で見たのはショックが大きかった。そのためこんな反応を示している。


「ハピレさんかユニティブ興行さんの配信者さん!? すごっ、私の絵のモデルになって欲しいよ~!」


「うわぁ…サジジュンさん、生で見るとこんなに格好良いんだ…! リエルちゃんのお兄さんも凄いイケメンだし…!」


 このまま人数が増えたら厄介だ、地下駐車場なんて車も通るのだから危なくもある。


 とりあえずは灰川を先頭にしてフォレストガーデン・渋谷に入り、そこに流れで佐嶋も付いてきてしまったのだった。


 その一行の中にはジョシュアを連れて来た車の運転手、どこか鋭い目をした女性も付いてきている。




 フォレストガーデン・渋谷のエントランスホールに入り、まずは桔梗とコバコ、シャルゥとケンプスに3社パーティー会場になっている最上階に行くよう伝える。


 ここは2階まではイベントホールとしてレンタルが可能であり、最上階はパーティー会場などで使用できる造りになっているのだ。


 現在はイベントホールで誰かの写真展覧会の準備をしているようで、客などは居ない状態だから多少は話が出来る。イベント準備の業者とかも今は居ない状態だ。


「灰川君、もう来ていたのか。さっきすれ違ったシャイニングゲートの人達が何か騒いでいたのだが、何かあったのかね?」


「あ、どうも花田社長。実は佐嶋さんとリエルのお兄さんがイケメンだって話題になって」


「えっ、佐嶋純輝さん? どうも、ハッピーリレー代表の花田です、リエル君のお兄さんが来てたのですか、よろしく」


「どうもっ、相田イースト所属の佐嶋です!ユニティブ興行さんと織音リエルさん、実原エイミさんにはドラマ撮影でお世話になってまして」


「初めまして、織音リエルの兄のジョシュアです。お見知りおきを」


 ジョシュアは早くも今の場では妹を芸名で呼ぶ事を覚え、すんなりとそれを受け入れる器量を見せた。


 佐嶋にはアリエルの本名が知られてしまったが、芸能界では本名が知られている人なんて珍しくもない。そこは本人も事務所も受け入れざるをえないだろう、それに佐嶋は口が堅いと評判と灰川は聞いている。


「それにしても…凄い男前だ…。佐嶋さんはもちろんだが、リエル君のお兄さんも凄まじいハンサムだ…」


「ですよね花田社長、佐嶋君はちょっと成り行きと言うか流れでここまで来ちゃったんですが、すぐに帰ると思いますんで」


 花田社長と灰川が小さな声で喋り、花田社長は佐嶋とジョシュアの美男ぶりに驚く。


「すみません、リエルとハイカワさんとお話したい事があるのですが、少しだけお時間を頂けないでしょうか?」


「えっ、ああ、それなら灰川君、パーティー開始までジョシュアさんと話をしていて構わない。スピーチで言う事は決めて来ているんだろう?」


「はい、大したこと言う訳じゃないですし、昨日に花田社長に見せた原稿の通りに喋りますよ」


「じゃあ安心だな、こちらは気にせずしっかり話し合ってくれ。子役タレントはご家族の理解や話の疎通が何より大事なのだからね」


 パーティー準備は灰川が居なくても問題ないし、アリエルの家族と話す時間を設けた。


「砂遊君と藤枝君は会場に行っててもらって構わないよ、まだ準備は終わってないが個室などもあるからスタッフに聞いて入ってもらって構わないからね」


「分かりましたぁ、行こうぜ朱鷺美ちゃん~。個室があるのは嬉しいなぁ、私らみたいな陰キャには助かるって、うししっ」


「……砂遊ちゃんっ……あんまり…、…会場に行かないように…しよう…っ?」


 砂遊と藤枝は先に上に行って待つ事になり、あまり人が多い場所に行かないようにしようなんて話している。藤枝は特に陰キャ気質だから、これが普通の反応なのだろう。


 2人とも佐嶋や花田社長などに挨拶してからエレベーターに乗っていった。


「じゃあ佐嶋君、また何かあったら言ってくれて良いからね。じゃあジョシュアさん、自分たちも個室を借りれたんで、そこで話し合いましょう」


「灰川さん、今日はありがとうございました! また何かあったら、すぐに連絡しますんで!」


 灰川たちもその場を離れて行き、花田社長と佐嶋がそこに残る。佐嶋は帰るのかと花田社長は思っていたのだが、その予想は外れた。


「花田社長さん、ハッピーリレーさんのお話も灰川さんから少しだけ聞いてますよ、男性配信者も在籍する配信企業なんですよね?」


「そうですよ、女性配信者や女性Vtuberも居まして、割と手広くやっています」


「実は自分もたまにネット配信をやってましてね、やっぱり本職の配信者さんのように上手いこと出来ないな~とか~…」


 佐嶋は花田社長に普通に話しかけた、彼はこういったコミュニケーション能力が高い人物であり、それでいて自分たちより遥か格上の超有名人だから花田社長も邪険にする事など絶対に無い。


 彼は演技力や歌唱力だけの男ではない、自分に適度に自信があって世渡りも上手いタイプだ。だからこそ有名になれており、その能力をこの場でも使う。


 佐嶋は運が良い男と巷で言われているが、実際には運やチャンスを掴みに行く事に労力を惜しまない人間性なのだ。そこに臨機応変に立ち回って好かれるという技能も合わさって、運を良い形で物にして若い身で成功した。


 ルックスの良さ、行動力、精神性、それら全てを活かして芸能界での高い地位に上がって来た人物だ。事務所や敏腕マネージャーの力もあるが、彼自身も相応に立ち回り能力が高い性質である。


 ハッピーリレーは佐嶋の所属する相田イーストとは畑が少し違う事務所だが、所属者の総合的な知名度や活躍期間は相田イーストが遥かに格上だ。


 花田社長は佐嶋がエイミとリエルの共演者であり、その関係で灰川と一緒に居たと思っている。今の時点では特にビジネス的な打算とかナシに会話しているが、佐嶋の話の運び方によっては何かがあるかもしれない。




 灰川、アリエル、ジョシュア、謎の女性はパーティー会場とは別の3階にある談話室を貸してもらい、そこで話す事になる。


「あの、失礼ですが、そちらの方はジョシュアさんのマネージャーさんとかでしょうか?」


「私はマネージャーとかは着いていませんよ、アクターでもないしタレントでもありませんから」


「そうなんですか、いや、凄い美形だから映画俳優とかなのかと思っちゃいましたよ!」


「ジョークでも嬉しいですよ、褒めて頂きありがとうございますハイカワさん」


「ジョシュア兄さんは何処に行ってもルックスもスタイルも褒められるね! そこもボクの自慢のブラザーなのさっ、くふふっ」


 話が逸れたが流石に誰とも知れない人を交えて深く切り込んだ話も出来ない。再度に灰川が女性に身の上を聞こうとするが、彼女は自分から話し始めた。


「初めまして灰川さん、国家超常対処局の局長、アヅチです」


 「「えっ??」」


 灰川とアリエルは同時に声を出した、なんと彼女はタナカやサイトウの上司であり、国家超常対処局の局長と名乗ったのだ。


「ウチのタナカとサイトウが世話になっていますね。これまでの功労、大変に感謝しております」


「ちょっ、えっ? す、少し確認させて下さい!」


 驚いた灰川は急いでタナカに電話を掛けた。


「もしもしタナカさんですか!? 国家超常対処局の局長さんってアヅチさんって方ですか!?」


『どうした誠治? そんな藪から棒に~…局長の名前は俺は言ってない筈だが、サイトウから聞いたのか? まあ誠治になら言っても大丈夫だろうがな』


「目の前に居るんですよ! ちょっと本人かどうか確認してくれませんかっ」


『ええっ!? 俺は何も聞いて無いぞっ、ちょっと声を聞かせてくれ、本人かどうか確かめる』


 タナカがスピーカーモードにしてくれと言ったため言う通りにし、少し話したら本人だと太鼓判を押した。


『誠治、局長はお前の事を高く評価している。気負わずに話してみると良い、勧誘とかそういう目的はないだろうからな』


「ほ、本当っすよね? なんだか心の準備が出来てなかったから、落ち着かなくて」


『大丈夫だ、もし何かあったら俺に連絡してくれ、局は一般人にも要人にも基本的に何もしない。ましてや四楓院家と繋がってる誠治に何かするなんて論外だ』


「分かりました、とりあえず気負わず話してみます」


 電話は終わって灰川はその場にいる者達と向き合う、まずはジョシュアが何故に日本に居るのか、何故に国家超常対処局の局長と一緒に居るのかを聞かなければならないだろう。


 だが灰川はアリエルからジョシュアはMID7の隊員である事を聞いており、国家超常対処局の者と居てもおかしくはなさそうだ。そう思うと少しは落ち着いた気分になれる。


「改めまして、私はアリエルの兄のジョシュア・アーヴァスです。大学生ではありますが、同時にMID7の隊員でもあります」


「国家超常対処局長のアヅチです、質問などは色々とあるかと思いますが、順に説明させて頂きますので」


 欧州特務機関MID7のジョシュア、国家超常対処局の局長のアヅチ、そんな思ってもみなかった人達と突然に会ってしまった。


 広くはない部屋の中、椅子に座って4人の話が始まる。


 同時に今夜は3社の親睦パーティーが始まる日でもあり、灰川にとっては何ともイベントが盛り沢山の日になってしまった。




「思ってたより空いてるねぇ~、まだ時間あるしなぁ、早く来過ぎたかぁ」


「…お祓い……灰川さんが…、…簡単にやったもんね……」


 砂遊と藤枝は最上階の30階の廊下を歩きつつ10室ほどある個室のいずれかに向かう、その道中では何名かの所属者と思われる者達とすれ違って会釈挨拶したりなんかもした。


「なんか聞こえて来る話が女の嫌な部分が垣間見える会話とかだったねぇ、こりゃシャイゲさんは派閥が出来とるなぁ~、うししっ」


「……女が集まれば……当たり前だと思うよ…、……私はそういうの……苦手…」


「私も得意じゃないなぁ、派閥とかに入ってもキモがられるしなぁ~」


 砂遊が予測したようにシャイニングゲートには所属者や職員において派閥が形成されつつあり、それは主に2つに分かれている。


 特に争いをしている訳ではないのだが、争いの火種は既に燻っている現状があった。


 片方は活動においてとにかく上に行きたい者が集まった『登り派閥』、とにかくアクティブに活動して視聴者を楽しませ、世間でも目立って知名度と収益を稼いでいこうという派閥だ。


 登り派閥は姫田ゼロルとアリアム・アサギという、2人とも150万人くらいの視聴者登録を持った者達が実質的なリーダーであり、いわゆるツートップの派閥のような感じである。


 この派閥は主に勢いがある性格の所属者が多く、自分たちはもっと伸びるし、そのための努力も工夫も惜しまない性格の者が集まっている。


 もう片方のリーダーは弐星(にぼし)クーヤというシャイニングゲートの初期から所属してる人物で、マイペースに活動して無理なく行こうという気持ちを持った者達が集まっている『マイペース派閥』だ。


 クーヤは視聴者登録は220万でシャイニングゲートの登録者数のナンバー5である。落ち着いた性格の30代前半女性であり、配信でもキャラを過剰に崩す事無くやってきた。


 どちらも明確と言える派閥メンバーは10名ほどで、シンパと言えそうな半メンバー所属者を合わせれば更に増え、15名を少し超えるくらいのメンバーとなる。


 一見すると大した人数に見えないが、2派閥を合わせて30名くらいという感じになる。


 それに対してシャイニングゲート所属者はアカデミー生を入れずに160名であり、それを鑑みるとまずまずの人数となるだろう。


 双方とも作ろうと思って作った派閥ではなく、元は気の合う者達が集まって自然形成された派閥だ。しかし所属者の中に確かな影響力を持ち始めている段階でもある。


「私らには関係ないかぁ、ウチらはユニティブ興行だしねぇ」


「…ぇっと……私は活動者じゃないから……、…もっと…関係ないよ…」


 この2派閥は互いに仲が良いとは言えず、派閥が拡大すれば大きな分裂にも繋がりかねない。しかも少しづつ2派閥の間の争いの火種は増えつつあるのだ。


 その事を早く解決するために渡辺社長を始めとした運営は動き出したのだが、それが上手く行くかは未知数だ。


 こういった問題はデリケートなもので、簡単に解決しないのは目に見えている。視聴者に悪い意味で話題になる何かが起こる前に、決定的な亀裂が入る前に何とかしなければならない。


 実は以前にもシャイニングゲートは栗同事業部長が間に立って、双方が仲良くなるよう立ち回ろうとした事があったが、それは失敗に終わってしまったなんて事もあったのだ。


 どんな会社や集団でも内部にはドロドロした話や、人間関係のマイナスな話なんかもあったりするものだ。それは業界1位のシャイニングゲートも例外ではなく、むしろ業界1位だからこそ人間関係の話なんかは嫌な部分があったりするかもしれない。

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