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配信に誰も来ないんだが?  作者: 常夏野 雨内


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341話 アリエルと来苑がヤバい話をしてくる

今回はセンシティブ描写が少しありますが、小説家になろうへの投稿分はセンシティブ描写が苦手な方のために表現を抑えた文章になっています。カクヨムの方はセンシティブ描写が強いので、同じと思って読んでしまわないようお願いします。(これは341話の本編のみです)


 市乃と史菜をホラー系ロケハンに連れて行った後、夜に灰川は渋谷の事務所でパソコンを触っていた。仕事ではなく暇つぶしのネットサーフィンで、今夜は事務所の仮眠室に泊まる。


 アリエルも隣の自室に居て、今は漫画とかアニメとか見たりしてる時間だ。


 現在は動画サイトなどがトラブルで使用不可なため配信も出来ず、雑多な情報を集めたりしながら過ごしつつ色々な事を思い返している。


 今週のパーティーの事だとか、シャイニングゲートの桔梗とコバコは予定が飛んで暇になったとか、シャルゥとケンプスは時間が空いたのを機に秋の芸術祭に向けて作品を仕上げてるとかも聞いた。


 そして何より、今週の日曜日の事がどうしても気になってしまう。市乃や空羽たちから大切な事を伝えられる日だが、灰川としては今も決心が付かないでいる。


 社会人として正しい選択は全員の申し出を断り、その上で今までと大きく変わらない関係性を保つ努力をするのが正解かも知れない。


 しかしそれは無理だと告げられている、空羽たちは『もし灰川さんが全員から断ってもアピールは続くよ?』なんて言われたりもしたのだ。逃げ道は塞がれた状態なのだ。


 断れば皆からの自分への興味は薄れるかとも思ったのだが、何だかそういう感じがしない。断っても興味は向けられそうな予感がある。


「あっ! そうかっ!! こうすりゃ良いんだ!」


 無理に1人を選んで皆の仲を乱すよりは、全員の申し出を無理にでも断って状況が激化するよりは、皆から幻滅されて『それはダメでしょ!』なんて言われてしまった方が良い。


 そう思うと灰川の心は格段に楽になる、この方法は誰も傷付けない可能性が今の所は最も高いように思える。犠牲になるのは自分の名誉だけ、しかも自分の名誉など大きなものじゃない。


 この方法が一番だと灰川は感じる、後はどのように切り出すかという問題があるが、ここで電話が掛かって来てしまった。


「はい、もしもし」


『灰川さんですね、アリエルの母のエリカ・アーヴァスです』


「どうも、どうされました? アリエルの近況とかの要件でしょうか?」


『それもあります、アリエルは灰川さんから見て、ちゃんと日本で生活できていますか?』


「もちろんですよ、アリエルは凄い子です。芸能仕事は関わった人達から絶賛されるし、生活も勉強だとか学校だとかは問題なし、剣術の練習もしっかりやってるし~~……」


 灰川はとにかくアリエルを褒め尽くす、実際に何も問題はないし凄い子なのだから真実しか言っていない。


 オカルト関係のことは最近は五角屋敷城の後は危険な状況は発生しておらず、聖剣の担い手としての責務は発生していない。


『オカルト問題は発生していないのですね、道理でファース本体の反応が落ち着いているはずです』


「大きなオカルト問題なんて、そうそう発生しませんよ。そうなる前に対処してる人も居ますし、そんな問題が幾つも発生してたらそれこそ問題ですから」


『そうですね、感知してないだけでオカルト問題は発生はしているのでしょうが、簡単には察知できないのは日本も変わらないようですね』


「アリエルくらいになると歩いてるだけで浄化の効果がありますし、怪奇現象の情報察知とかは簡単ではないので、即座に対応とかも難しいと思います」


 国家超常対処局は強力な秘密の情報網はあるが、全てのオカルト問題を察知できる訳ではない。灰川やアリエルはオカルト問題を察知するために各地を歩き回ってる訳ではないから、足で情報が入手できるという訳でもない。


 そういった事情はMID7なども同じらしく、簡単には問題を察知は出来ないらしい。だが情報網と活動地域は広いから忙しさは強く、専業隊員などはヨーロッパ各地を回って解決に勤しんでいるとのことだ。


 霊能力を持つ者の減少と、除霊やお祓いが出来る霊能者の減少によりオカルト被害は強まっている。しかし察知の難しさは今も昔も変わらず、離れた場所で発生している怪奇事件はネットが発達した現在でも簡単には分からない。


『日本の国家超常対処局にも連絡を取っていますが、今の所は火急の要件はないそうです。ですが備えは常にしておきなさいとアリエルにも言ってあります』


「はい、アリエルにオカルト解決の話をする時は必ず俺にも~~……」


 その他にもアリエルは仕事も学業も生活も問題ないと言い、オカルト仕事でも何かがあった時は一緒に対処に当たるとか、ファースのエネルギー充填なども問題ないと知らせて安心させる。


 母としてアリエルは気に掛けているし、本人ともたまに電話で話して元気な声を聞いているとも言っていた。


 とりあえずは各方面に関して問題はなく、アリエルに呪いを掛けた者は今も調査中だとか、ファースも眠りに付くような心配も今はないそうで灰川も安心したのだった。


 しかもアーヴァス家関連の企業からユニティブ興行に芸能仕事も頼みたいとの事で、それについては今後に話を送りたいとも言われた。嬉しい話である。


『それと今週の日曜日、アリエルを含めた数名の方達から大事な話をされるようですね? その事に関しても伝えておきたい事があります』


「~! あ、えっとっ、そのですねぇ…」


 エリカはアリエルに灰川と結婚しなさいと言った張本人であり、それに関しては家族なども了承してるという姿勢を示された。しかし灰川としては色々と問題がある気がしてならない。


『灰川さんがどのような答えを出すかは分からないと言っておきますが、灰川さんには事前にアリエルに関する、とある事を教えておかなければと思いまして』


「えっ、それって何でしょうか?」


 日曜日にどう答えるのかとか聞かれずに済んで安心したが、まだ話は終わっていない。何やらアリエルに関して灰川が教えられていない話があるそうなのだ。


『知っての通りアリエルは聖剣の担い手ですが、担い手は性格的に変わった部分というか、少しばかり個性が強い者が多いのです』


 エリカが言うには聖剣の担い手はアーヴァス家に限らず個性が強い者の割合が多いらしい、これは加護の影響なのか聖剣がそういった者を選びがちなのかは分からないという。


 普通の性格の者も居るらしいのだが、そういった人物は加護も少ない形でしか恩恵を受けられず、あまり強さも高くならない事が多いのだそうだ。


 アリエルの兄のジョシュアは精神性は高潔だが、変わった部分も大きい人物らしく、アリエルも同じように変わった部分があるとエリカは言う。その部分には母であるエリカは予測できているとも言った。


 変わった部分は普通は他者にはあまり見せないが、灰川が相手だったら話は違う。変わった部分は必ず灰川に対しては表になる筈だと説明された。


『アリエルは~~…』


 そこからアリエルの変わった部分について話を聞いて行き、灰川は驚きつつも『そんなまさか』と思うのであった。




 金曜日の午後になり、開店休業状態のユニティブ興行事務所に灰川は居た。前園はネットトラブルの影響で暇になったので、今日は休みになっている。


 だが事務所の中には灰川以外にも人は居て、ソファーには学校帰りの来苑とアリエルが座っていた。


 来苑はアリエルに呼ばれて学校帰りに来たらしく、アリエルは今日はトラブルの影響でオフになったため時間はあった。佳那美はオフなので自宅で帰ってるだろう。


「ハイカワ、今日はボクとライエさんのために時間を取ってくれてありがとうっ」


「えっと、自分はアリエルちゃんに呼ばれて来たんすけど、どうしたんすか?」


 アリエルは神妙そうな面持ちだが来苑はそうでもない。来苑は用件を聞いていないが予定キャンセルで時間があったので、学校帰りに来たとの事だ。


 来苑は事務所に来た時は日曜の予定を気にして緊張気味だったが、今は気を持ち直して普通の状態になっている。しかし何があるのか知らないから混乱気味でもある。


「そのっ…ハイカワはボクとライエさんのこと、どう思ってるのっ…?」


「えっ、まあ、そりゃ凄い才能あるVとキッズタレントみたいに思ってるけど」


 灰川は普通に本心を言う、2人とも凄い才能もあるし努力を楽しみながら出来る精神がある。苦しい時でも悲観的にならず、努力も思考も継続できる人間だと感じているのだ。


 来見野 来苑はVtuberとして人気を博する存在で、陸上競技を諦めた時は悲しんだが、しっかり前を向いて今という結果に繋げている。とても凄い事だと灰川は思っている。


 アリエルは聖剣の担い手としての責任感や使命感を持ち、その責務を果たそうと努力している。芸能活動においては凄い才能を発揮してるし、灰川としては仕事面でもオカルト面でも頼れる存在である。


「えっとねっ…、その…活動がどうとかじゃなくてっ、ボクとライエさんは女の子として見てるのって話だよぅ…!」


「えっ! ちょっ、アリエルちゃん!?」


「いや、そりゃ見てるって」


 女かどうかで言えば2人とも女に決まってる、確かに以前はアリエルを男の子と間違えた事はあったが、それに関しては謝罪してる。


 来苑はボーイッシュな所はあるが普通に女子である事は見た目で分かる、竜胆れもんの時はボーイッシュさが強くなるが、それでも声が可愛いし男と間違うような事は無い。


「ボクは不安なんだっ…! ハイカワはボクやライエさんが女の子だって分かってても、心の何処かで男だって思ってるんじゃないかって…っ!」


「ちょっ、ええっ!? アリエルちゃん、そんなこと灰川さんは思ってないっ……すよね…?」


「お、思ってるわけないだろ! 今更なに言ってるんだっての!?」


 そんな事など灰川は思っていないが、アリエルが言っているのは無意識の部分の話だ。


 無意識下で灰川は『男っぽい』『女の子として見れない』みたいに危惧してる、というようなニュアンスの話をアリエルは続ける。


「ボクとライエさんは髪の毛が短いし…ボクは普段の服装は男の子っぽい服が多いし……ライエさんは男勝りな性格って言われてるって聞いたんだ…っ」


「い、いや、自分は配信の時はそんな感じっすけど、実生活だとそこまで男っぽくないっていうかぁ……でも灰川さんにどう見えてるかは…」


「髪の毛とか服装とかで今更判断しないって! 性格にしたって来苑は過剰に男っぽいとか思った事ないぞ!」


 アリエルは不安を口にして、最初はまともに聞いて無かった来苑も少しづつ表情が曇って来る。


「ボクは自分がハイカワに女の子として見てもらえているのか、すごく不安なんだっ…! 学校でだって男みたいだって言われた事があったしっ…ぐすっ…」


「じ、自分っ…そのっ、あんまり女の子っぽくない自覚もあるからっ…、何がとは言わないすけど…不安になってきたっす…っ」


「いや、不安になるなって! アリエルも来苑も男っぽくはないからな!?」


「口では何とでも言えるよっ! ボクがハイカワの立場だったとしても、そう言うさっ」


 アリエルの口が達者だ、自分の不安を伝えつつ灰川の心を乱し、そんな事はないと灰川が言っても簡単には信用しないぞという姿勢を声色と言葉で伝えて来る。


 その中で来苑も心の奥にある自覚していなかった不安を掻き立てられ、今になって自分はあまり女子として見られてないのではという精神を揺すられていた。


「アリエルがパフェを食べてる時の顔と声なんてスゲェ可愛いと思うし、来苑とか普通に美人で明るいから可愛いって普段から思ってるって!」


「~~! んっ…くふふっ…、かわいいって言われちゃった…っ」


「あぅぅ…美人と可愛いって一度に言われたっ…、うれしいけど恥ずかしい気もするぅ…」


 灰川にはあまり聞こえないように2人は照れる、灰川としてはこういう事はセクハラ問題とかになる可能性もあるため言わないが、心の中では思っている。


 こんな事を口に出すのは恥ずかしいが、今は何か分からないが緊急時なので声に出して言った。


「とりあえずアリエルも来苑も女子だって事は分かってるのは理解してもらえたよな? そこは流石に心配しないでくれ」


「うん…そこは分かったよ…、口では何とでも言えるから、しっかり分からせるつもりだけどねっ…」


「じ、自分もそのぉ…分かってくれてるとは思うんですけど、もっと分かってくれた方が安心かなぁとか…」


 とりあえずは格好だけでも理解してくれてると示され、灰川はこの件は保留にする事に決める。


 しかし理解はしても不安は消えていないらしく、もっと言えば別の不安もあるようなのだ。


「他にも心に引っ掛かってることがあるんだっ! ボクはこのままじゃ日曜日を安心して迎えられないよっ」


「っ…! に、日曜日っ…! そ、そのっ…自分もちゃんとっ…、相手にしてくれるっすよねっ…? うぅ…」


「ちょ、日曜のことは日曜に回そうや! 何がとは言わないけど、ちゃんと考えてあるからっ!」


 日曜に何があるかを明言するのは暗黙の了解のような形でナシになっている、そういう空気が皆と灰川の中に流れているのだ。


 しかしアリエルは日曜日への不安を凄く感じており、特に自分は年齢が最も下だから弾かれる可能性が高いと感じている。だからこそ不安材料は少しでも除いておきたい。


「ボクね…インターネットで色々と見たんだっ…。どういう女性が男の人は好きなのかとか、調べられる範囲でだけど…」


「いや、まあ、そうなのか…」


「自分もその…調べたりする事あるっすよっ…!」


 アリエルのインターネット端末にはチャイルドロックが掛かっており、自分のパソコンとかでは調べられる事は少ない。


 しかしロックに引っ掛からないページもあるし、常識的な範疇のことが書かれているページなどは弾かれない。そういった所を見て何かの情報を仕入れたらしい。


「男の人ってっ、ヘンな香りがしてる人って好きじゃないんでしょ!? ボクはレッスンとかスポーツの後は汗とかかいちゃうしっ、撮影の後とかもっ…!」


「は? いや、汗とか誰だって出るだろっ、そんなこと言い始めたらキリがないっての!」


 エリカ・アーヴァスから灰川が聞いたアリエルの変わった精神の特性の一つは、たまに物事を深く考え過ぎて変な方向に思考が向かう場合があるということだ。


 1の情報から10を予測する頭があるが、それが変な方向に向かって考えを発展させ肥大化する場合があるという感じである。


 この場合は来苑が自分の匂いに関してコンプレックスがあると聞いたりして、それが今の知識と合わさって変な方向に行ったという形だ。


「それにっ、バストの大きな人の方が男の人は好きなんだよねっ!? イチノさんやサクラさんみたいなっ、あとサユみたいな子とかっ!」


「ちょ! おまっ、そういうこと誰かに聞いたりするんじゃないぞ!? マジで!」


「ボクはまだバストがないけど…! これから大きくなる可能性はたっぷりさっ! 投資するには優良な株だと感じてる!」


 胸がどうとかの話をするんじゃないとも思うがアリエルは止まらない、もう思考が完全に予想外の場所に到着しているようだ。


 アリエルはインターネットで一般的な範疇を越えないセンシティブ知識を手に入れたようだ、恐らくは子供向けのサイトで一般常識レベルの異性モテ知識みたいなモノだろうと灰川は思う。


 胸に関しては『まだまだこれからさ!』という感じで自信満々の表情をしている、微笑ましい表情なのだが灰川としては非常に困る話題だ。


 来苑はこの話題に焦りを感じてる、胸が大きいという話題で自分の話がアリエルから出なかったのも一因だろうか?


 だが何より、来苑の焦りの一番の原因は『ヘンな香りの人はモテない』という部分だ。来苑はまだ完全にはワキの事を気にする心は消えておらず、その懸念が今の話題で心に再燃する。


「は、灰川さんっ、そのっ! 自分っ、やっぱりワキとかニオってっ…!」


「匂ってないから! そもそも今日だって長袖制服じゃん、気にし過ぎ!」


「で、でもっ…! まだ夏服の人も多い時期で長袖だしっ…気になってきたっすっ…!」


 来苑は小学校の頃に男子に言われた言葉が切っ掛けで軽い自己臭恐怖症がある、その事はアリエルは薄い所しか知らない。


 しかし以前にアリエルは来苑がワキを気にしてる事は少し知っているため、日曜日への備えとして今のような話題を出していたのだ。


 来苑としても心の何処かに『ニオイが原因で断られたらどうしよう…』みたいな不安があり、長く培ってきた怖さに向き合わなければならない時が来るのは分かっていたが、それが突然だったため焦りは隠せない。


「だからね、ボクたちはハイカワにバストアップのサポートのお願いや、ボクたちの香りを好きにさせるために~…」


「この話は止めだー! なんか危ない感じがしてるぞ!こういう話は危ないんだっての!」


「ええっ!? でもハイカワはボクたちを平等に見るために、こういう事への理解も必要だよぅ! そうじゃなきゃフェアじゃなくなっちゃうよっ!」


「胸がどうとか匂いがどうとかなんて大した問題じゃないんだっての! そんなこと言い始めたら俺だって汗かいた時は匂うっつーの!」


「で、でもぉ…それとコレとは話が違うって言いますかぁ…」


「同じなの!来苑も過剰に気にするのはダメな! 気になるのは分かるけど、俺は何も気にしてないから!」


 もう灰川は強制的に話を終わらせるために言葉を発し、アリエルの言葉と来苑の不安を断ち切ったのだった。


 来苑は普段は男勝りな部分があるが、こういう時は途端に引っ込み思案になる。なんだか大胆なんだか弱気なんだか分からない部分も多い性格なのだ。




「まったく、アリエルはこういう変な話を誰かにするんじゃないぞっ? 約束だからなっ」


「うぅ…いま考えると、なんだかボク…スゴいこと言っちゃってた気がするよぉ…! ゴメンなさいハイカワっ、ライエさんっ!」


「アリエルちゃんの顔が真っ赤っすね…たぶん自分もでしょうけど…あはは…」


 2人は顔が真っ赤だ、特にアリエルは自分から率先してあんな事を話していたため尚更だ。後から凄く変な話をしていた事に気が付き、話していた時とは違ったタイプの焦りが後から湧いて、今まで見た事が無いくらい顔が赤くなっている。


 バストアップの方法とかは知らないままだが、そもそも胸の話をしまくったというのが恥ずかしさを増強させてるようだ。


 来苑も普段はあまりしないタイプの話をバチバチとしてしまい、胸がどうとか匂いがどうとかの話で恥ずかしさが込み上げて顔が赤い。白い制服との対比で余計に赤く見える。


 灰川はエリカからアリエルの2つ目の精神的特性も聞いており、それは『本気で好きな人には予想以上の頑張りと大胆さを見せるだろう』という予測だったのだ。それは当たっている可能性は高いだろう。


 1つ目の特性である考え過ぎて変な方向に思考が向かうというのと合わさると、今回のようになってしまうのかも知れない。何らかの行動が伴わなかったのが幸いだ。


「まあなんだ、何事も気にし過ぎるのは良くない。2人とも変な方向に考えて妙な事とか話とかしないようにな」


「うん、そうだねっ! 考え過ぎてたみたいだっ、ハイカワなら日曜日に皆が満足する答えを出してくれる筈だから心配ないよねっ!」


「自分も日曜日はっ、そのっ…! ちゃんと伝えますんでっ…良い返事が聞けたらな~…なんてっ…!」


 今回はアリエルの緊張感とか子供ゆえの無邪気さとかが重なって変な方向に行ってしまったが、そこは仕方ない事だろう。子供というのは時に思いもよらない考えや発言をしたりするものだし、育ちも境遇も普通ではないから予測不能な部分もある子なのだ。


 配信の講義とかで何を言ってはいけないかとかは学んでいるが、それはあくまで配信だとか芸能活動での事である。自分たちの間柄にはそれは当てはまらない。


 アリエルも来苑も変な緊張で変な事を言ってしまった、正直に言えば灰川は先程の会話で妙なマニアック精神を刺激されたが、そこは黙っているしかないだろう。


「日曜の前に親睦パーティーもあるし、まずはそっちで色んな人と仲を深めたりとか頑張ってな」


「なんだか会場と時間は決まったそうっすね、サプライズパーティーだから、まだ場所は知らされてないっすけど」


「近くでやるんだよね? 服装はどうすれば良いのかな、ドレスコードはどうなってるの?」


「ドレスコードとかは無いだろ、ラフな服装で充分だと思うぞ」


 パーティーは明日だが所属者達には全容は知らされていない、今夜には情報が送られるらしいのだが、まだ完全決定はしておらず灰川も社長達に聞くような事はしていなかった。


 急遽のパーティーではあるが、ネットトラブルで配信などが出来ない期間の開催であり、所属者の多くが参加すると市乃や空羽から聞いている。時間が空いた者も多いから、この機会に仲を深めたり話をしてみたい所属者仲間なんかも居るのだろう。


 所属者にはインドア派もアグレッシブな人も居るし、どんな感じになるのかは分からない。明日の夕方くらいから日曜の午前までの開催で、その間は所属者は会場に出入り自由という方式になるらしい。


「じゃあボクはゲームの練習してくるね、ドラマでどうしても自分でプレイしなきゃいけない場面も出るって言われたんだ」


「どんなゲームっすか? 自分もゲームは配信でもよくやるよ」


「プレイしておいて欲しいって言われたのは機動勇士シュテルンのゲームと、ゴールデナックルファイター3っていう格闘ゲームでね、あとプリコーダーズのゲームも出せるかもって言ってたんだ!」


「プロゲーマーが題材のドラマだもんな、色んなゲームが出て来るらしいぞ」


「ゲームって楽しいよねっ、ボクは大好きになっちゃうかもだよっ!くふふっ」


「アリエルちゃんって、やっぱ可愛いっすね~。笑顔の破壊力が高い!」


 2人ともいつもの調子に戻り灰川は安心する、もう変な心配は無さそうだ。


「ハイカワっ、パーティーの後はゼッタイに時間を空けておいてよっ! また後でねっ!」


「そのっ、また明日にパーティー行きますんでっ! 自分も明日と明後日はよろしくお願いしますっ」


「無理しないようにな、丸く収まるように俺も返事をするつもりだからよ」


 灰川は皆への返事の方法は決めてある、後はどんな文言を口にするかだ。


「そうだっ、ハイカワ! さっきはあんなこと言っちゃったけどっ、ハイカワがボクたちにしたい事も聞いてあげるからねっ。楽しみさっ、くふふっ」


「え、えっとぉ…お手柔らかな感じのことからお願いしたいっす…! あはは……うぅ~…」


「なんか無駄に含みがある言い方に聞こえるよな……普通に仕事とか頑張ってって頼むと思うぞ」


 灰川は勘違いとかしないよう自分を律し、考えが変な方向に向かないように姿勢を取ったのだった。アリエルが言ってるのは遊びとかサプライズの事だろう。


 とにかく今日の騒動は終わってアリエルは隣の部屋でゲーム練習をしに行き、来苑はタクシーで自宅マンションに戻っていく。


 明日の夕方からは親睦パーティーであり、ユニティブ興行も出席予定である。


 だが灰川としては日曜が気掛かりだ、皆から何を言われるかの予想は付いている。そして灰川は人生で誰かにそういった事を言われるのは初めてだ。


 日が近付くにつれて心持ちが変わる、だが明日も皆に緊張は気取られずに立ち回ろうと思うのだった。

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