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配信に誰も来ないんだが?  作者: 常夏野 雨内


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34話 ツバサの配信

 エリスもミナミもルルエルちゃんもツバサも自分の事を慕ってくれる、だが思い返すのは昨日のライクスペースでの一件だ。


 長く一緒に居れば気味悪がられる、少し助けた程度でいい気になるな、どうせ能力のせいで嫌われる、そんな思いが心の中に強くなっていく。


(やっぱり、潮時(しおどき)なんだろうな)


 灰川は子供の頃から呪いや悪いモノが見える体質の家系に生まれた、その力は自身にもある。


 小さい頃は物事の分別が付かないものだ、灰川は人に起こる不幸を言い当てたりして気味悪がられたのだ。仲の良い友達も離れて行き、教師からは腫れ物を扱うような態度で接しられてきた。


 中学以降は分別が付くようになったため問題は起こらなかったが、それまでの経験で心に壁を作りやすい性格になってしまっていた。これは霊能力ではどうにもできない事だ。


 他人と違うという事はそれだけで苦痛な事だ、心の何処かに常に孤独感を抱える事になる。幼少期からその特殊な孤独感を感じてきた灰川は、少しだけ歪んだ感性を持ってるのかもしれない。


 オカルトも人の心も解明される日は遠いだろう、灰川は心の何処かで「自分は理解されない」と感じてる自覚がある。それを自覚できる程度には大人だ。


 理解出来ないものは嫌われる、だからエリス達からも長く接すれば嫌われる。嫌われるのは構わない、もう良い年こいた大人だ。


 しかし彼女たちの中に嫌な思い出として刻まれてしまうのは嫌だと感じてしまう、そう思ってしまうのは彼女たちが灰川の中で他人ではなくなってしまった証拠なのだろう。


 だが今灰川が去った所で恐らくはエリス達がハッピーリレーを辞める事は無いだろう、そこまでの大きな絆ではない事は自覚してるつもりだ。灰川と彼女たちは学校の友達ではないのである。社長が灰川を繋ぎ止めようとするのも念のためという意味合いが強い。


 ツバサの配信を見る、画面の中でもツインテールを揺らして勝気に元気に喋る彼女から元気を貰った気がした。


「まあ良いか! どうせバカなんだし考えても無駄だな! そんな事よりツバサの配信見よっと」


 先のことより目先のこと、先々の事は考えられない性分だ。そもそもハッピーリレーに残るか否かを決めるのにエリス達の考えや思いを判断材料にするのが間違ってる。


 これは灰川の問題であってエリス達に判断の理由を押し付けるのは違う、あくまで自分がどうしたいかだ。他人の事を気にしてる場合じゃない、自分と言う人間を少しでも高く売りつけるのが大切だ。

 

 そんな事を考えながらツバサの配信を見る、今日の配信はゲーム配信だったが今は終わっており、最後の短時間の雑談配信になっていた。



 

  ゲーム後雑談!何でも答えてあげるわ!


  破幡木(はばたき) ツバサ


  視聴者登録50000人 同時視聴者1500人


『アタシに質問しなさい! なんでも答えてあげるわ!』 


コメント;なんでVtuberやってんの?


『なんでやってるか忘れたわ! 楽しそうな気がしたからだと思うわ!』


コメント;どうやったら企業系Vtuberになれるんですか?


『募集に応募して合格すれば良いわ! ハッピーリレーは狙い目よ! 集団面接にアタシ一人しか居なかったわ!』


コメント;ちょ!そういうの喋ったら怒られるんじゃ


 ツバサは元気よくアレコレ喋る、中には会社が明かして欲しくない事もあったがストップが掛かってない事からセーフなのだろう。 


コメント;中学生だけど私もVtuberになりたいと思ってます。

     ハッピーリレーは今回の法改正で中学生Vtuberに

     力を入れて採用などはあるんですか?


『コメントが長くて頭が混乱する! よく分かんないけど応募すればハッピーリレーは合格する率は高いと思うわ!』


コメント;バズって視聴者増えて嬉しい?

     俺はツバサがバズってくれて嬉しい!


『ボンバーソーダさん、1年前から来てくれてありがと! 超ウレシイわ!』


コメント;視聴者の名前覚えてるの?


『覚えてるわよオクラ餅さん! アナタは4か月前からコメントしてくれてるわね! 感謝してるわ!』


 ツバサは頭の回転は悪いかもしれないが記憶力が非常に良いらしく、視聴者の名前はかなり記憶してるらしい。


 覚えてくれてるとなると配信に来たくなるものだ、前から来てる人達はツバサを熱心に応援してくれてる人が多い。


 そんな中、ネットの有名人が避けては通れない事態が発生してしまった。



コメント;パンツの色教えて?



 卑猥な質問やイタズラのコメント、荒らしである。ハッピーリレーは荒らしを弾くアルゴリズムを使ってるようだが完璧ではなく、稀にこういったコメントを通してしまうらしい。


『アタシも知らないわ! 3Dモデルはスカートの下にショートズボンを着てるから、おパンツは見たことない!』


コメント;おwパwンwツwww

コメント;そういう質問すんなや荒らしが!

コメント;俺のパンツの色で我慢しとけ、紫色だ

  

 こういった質問は無視が一番だが、ツバサは答えてしまう。だが3Dモデルの話と判断する事で難を逃れた。


 タイミング的に完全に無視は出来ない場合があり、今回はそれだったのだ。うまく切り抜けたと思う。


『じゃあまた次の配信にみんな来るのよ! またね!』


コメント;今日も楽しかったよ!

コメント;また来るぞ~

コメント;ここも視聴者増えたな


 ツバサは今日は良い感じに調子に乗れた配信が出来ていた、視聴者も満足してくれた感じが伺える。


 視聴者もツバサには優しく、援護してくれてる。かなりタチの良いファンがツバサには多いようだ。



「お疲れ様ツバサ、面白かったぞ」


「今日も頑張ったわ! 視聴者さんがたくさん来てくれるのは嬉しくて楽しいわね!」


 ツバサは気分が良い時は声の大きさと騒がしさに拍車がかかる、そんな所も魅力を感じてくれるファンも多い。灰川もツバサのそんな所が可愛いとも思う。


「ゲーム実況も笑いを上手く取れてたし、初めてじっくり見たけどまた見たいって思ったよ」


「そうよね! でもまだまだこんな物じゃないわ、次はもっと面白い配信にするわよ!」


「それに荒らしの対処も見事だった、雰囲気を壊さず3Dモデルの話題に持ってったのは良い判断だったと思うぞ」


「おパンツの話ね! あれは本当の話よ、アタシも気になって見た事あるけど、スカートの中はショートズボンだったわ」


「大きな声でおパンツ言うなって、まあ凄く良い配信だったぞ」


 ツバサはまだまだ子供だが才能はある、運だってある。分別は多少ないが、そこは仕方ないだろう。中学2年生だが言動が佳那美と同じくらいに思える、パンツの色を聞かれて3Dモデルのパンツの色を思い浮かべる辺り、まだまだお子様だがそこも持ち味だ。


 ツバサの配信は今日は悪い点は見当たらなかった、プロが見ればまだまだなんだろうが、灰川から見れば充分に満足のいく配信だ。


「あとはツバサの配信は明日だな、今日みたいに頑張るんだぞ」


「そうね! 誠治もお仕事がんばりなさい! じゃあねっ」


 ツバサは母親が迎えに来たため、そのまま帰って行った。灰川はそのまま配信を見て感想を伝える作業に戻る。




 配信を見ながら横目でスタッフ達をたまに見たりする、今日は全員がとても忙しそうだ。


 企画部の人達は他社の配信を見ながら、ハッピーリレーで真似できる事は無いか目を光らせてる。


 人事部はシャイニングゲートの新人Vtuber達を見ながら、どんな人材をトップ企業は集めてるのか見てる。


 3Dモデルのデザインなどの方向性やキャラクターを考えるデザイン部門は、各社のVtuberに釘付けだ。


 そんな中で灰川はハッピーリレーの配信者を見て時に感想をメモし、感想を尋ねられたら率直な感想を言ってあげた。


 結果から言うと悪い配信をしてる人は居なかった、出て来るのは少しの気になった点と多くの褒め言葉だけだ。お世辞では無いのだから、そう言うしかない。


「ありがとうございます灰川さん、参考にさせてもらいます!」


「いえ、これからも頑張ってください。本当に面白かったです」


 今の配信者で一区切りがついた、ここからは遂にエリスやミナミの怪談配信が始まる。



 

  怪談でみんなを怖がらせる!

 

  三ツ橋エリス


  登録者数98万人 同時視聴者20500人 


『みんな、今から怖い話の時間だよー、苦手な人は覚悟してね~』


コメント;待ってました!

コメント;どんな感じになるんだろ?

コメント;怖いの苦手だけどエリスちゃんだから聞く

コメント;ホラー大好き!初見です!


『前は怖い話配信で中断しちゃったけど、今回は最後まで行くからねー』


『今日はガタガタ震えて寝てねっ、夜中にトイレ行けなくしちゃうんだから』


コメント;子供も聞いてるから控えめねwww

コメント;どんな話が飛び出すやら

コメント;エリスちゃんが寝れなくなんじゃね?

コメント;なんだかんだ言って楽しみにしてたよ~


『じゃあ行くよ、私が用意してきた話は~……』 



 こうして怪談配信が始まった。エリスとミナミはホラー配信の一歩目を作る係だ、この後にも各配信者やVtuberが怪談や心霊動画を動画サイトに上げる事になっている。


 切り抜きなども公式切り抜きやファン切り抜きを作って多数の人の目に止まるようにする、そういった戦略も組んでいる。


 だが取りあえずは目先のエリスやミナミの怪談だ、灰川はしっかりと二人の勇姿を見届けようとパソコンに向かい直した。

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