336話 流行りの服はどんな感じ?
水曜日の昼下がり、ユニティブ興行の事務所にはハッピーリレー所属の男性配信者、ボルボルこと本名・鍵崎 琢磨が来ていた。
前園は仕事で外に出ており、藤枝は学校に行ってるから事務所内には灰川とボルボルだけである。
「じゃあ男性配信者の今後の動きは伝えた通りになりそうだから、ボルボル君もよろしくな」
「俺らも遂に動く時が来たって感じっすね! 腕が鳴るってもんですって!」
ハッピーリレーは男性配信者も多数が所属しており、温度差はあるが活動に真面目に取り組んでいる者も多い。
3社の活動が活発になる中で男性配信者たちの今後の活動の方針が決まり、今日はそれをボルボルに伝えたのだった。ハッピーリレーは忙しいため所属者に何かを伝える事は、灰川が今も少しばかりやっている。
男性陣はとにかく名前を上げる事を最優先で行うのだが、そのための中心となる活動者には計画の大まかな内容を伝えている。
「昨日は佳那美ちゃんとアリエル君のドラマ撮影だったんすよねっ? どんな感じなんですか?」
「有名俳優とかいっぱい居たよ、マジ凄かった。佐嶋純輝とRIKAMさんも居たし」
「佐嶋純輝にRIKAMっすか!? ヤベェ!マジ有名人じゃないっすか!」
話しても問題ない程度の事を言うが、それでもボルボルは驚いた。そのくらい2人は有名な俳優なのだ。
ちなみに佐嶋純輝からは先程に昨日の礼の電話が来ており、スランプは完全に抜け出せたとの事だった。
今日の別仕事の収録での演技は絶好調で、それを聞いて灰川も安心したが、やはり佐嶋は砂遊の事が気になって少し聞いて来たりもした。
『灰川さん、モシィちゃんの配信って予定とか決まってますか? メンバーシップ登録してもアーカイブが残らないで見れなくなる配信とかあったら~…』
『それとモシィちゃんのグッズ販売とかはあります? 等身大フィギュアとか等身大パネルとか、あとVtuberさんってASMRとか出すそうですね、モシィちゃんはASMRボイスとか出す予定は~…』
なんか一夜にして詞矢運モシィ、そして灰川 砂遊の熱いファンになってしまい、まだ出ても居ないし出す予定もない大掛かりなグッズが欲しいとか言ってきた。というかモシィのグッズだけでなく、砂遊のグッズが欲しいとかまで言ってる始末だ。
今の佐嶋は陰キャ女子好きが爆発的に加速しており、スマホの検索文字には『詞矢運モシィ、ユニティブ興行、陰キャ女子』の3つがトップに来てる。
そんな佐嶋から『今度にユニティブ興行さんの事務所に行って見たいです!』と言われたが、灰川は『来ないで良いから!』と言っておいたのだった。売れっ子俳優なんだし、そんな時間も取れないだろう。
もし佐嶋がユニティブ興行に来て藤枝を見てしまったら、砂遊と藤枝の同時推しみたいな事になるかもと灰川は思う。それどころか藤枝にもVか何かの活動を進めて来そうだ、藤枝も佐嶋のタイプにガッチリとハマってるのは確実だ。
「そういや灰川さん、なんか今って若い女子の間で流行ってる物があるらしいっすよ、ファンの子がコメントに書いてたんすよね」
「流行りもの? こっくりさんとか一人かくれんぼとか?」
「そう来ると思った! やっぱ灰川さんはそっちの考えになるっすよね!」
オカルト系の何かが流行ったのかと思って灰川は少しばかり興味を持つが、そうではないらしく興味が一気に薄れる。
「そんな露骨に興味なさそうな顔しないで下さいよ! 流行りとかを知るのも芸能関係だったら大事でしょ!?」
「まあ、そうなんだけどね。でも若い女の子の間で流行る物って満遍なく俺が興味無い事だしなぁ」
「それ聞いたら佐嶋純輝さんの立場がないっすよ、まあでも男が興味無いものが大半っすよね」
若い女の子の間で流行るもの、イケメン芸能人、可愛いとか綺麗なファッション、オシャレなお菓子、女子向けソシャゲとか、どれも灰川の興味は薄い。
そういう類で灰川の興味あるものは、美人、安くて着心地の良い服、スナック菓子、配信に使えそうな無料ソシャゲ、とかだろうか。
「ほら、これ見て下さいって。こんな感じのが流行ってるらしいっすよ」
「TwittoerXだよね? これって女子大生くらいの人の写真? うわっ!これマズイんじゃ!?」
ボルボルのスマホに映された画像は、2人の女子大生っぽい人達が自らスカートを捲り上げてる写真だった。
「こんなんパンツ丸見えっ……じゃないな? ナニコレ?」
「これが今の流行りのパンツ見え防止のペチパンツ、ノンギルティインナーっていうらしいっすね。まあ、いわゆる“見せパン”ですって」
写真の女性2人が着用しているのは下着ではなく、ファッションメーカーが出したパンチラ防止や透け防止のために着用するペチパンツだったのだ。
「じゃあ、こっちのブラジャーっぽいのは?」
「それもいわゆる“見せブラ”ですよ、エクスポーズドブラって言うそうっすね」
割と以前からそういった、下着っぽく見えるけど見せてもOKな衣服というのは存在しており、今は様々なそういったものがファッションに活かされていたりする。
今はベンチャーの下着メーカーが出した新型の見せ下着、ノンギルティインナーというシリーズが話題になってるらしい。
一見するとパンツやブラジャーに見えてしまうが、少し見ると違う事が分かる作りになっている。インナーとアウターの中間であり、下着とコレだけで外出しても法的には問題ないという服なのだそうだ。
「これをデザインした会社は衣服の法律に詳しい弁護士に相談して、試行錯誤しながら作ってるらしいっすね」
「へぇ~、ギリギリを攻める会社って感じなんだなぁ。うおっ!セクシーな写真だ!」
「人気の美人配信者がこのシリーズを着てyour-tubeで配信したけど、停止されず普通に配信できたらしくて、かなり話題になったそうっすね」
とはいえノンギルインナーだけで外出するような人は殆ど居らず、あくまで『見えても大丈夫』という本来の見せ下着に沿った使い方がされている。
お洒落さもあるし値段も手頃、今はかなり売れてるらしい。
「って言っても、俺には関係ないからなぁ。こんなの着ないし」
「そりゃ男っすからね、でも目の保養になるし! 今夜は風俗にでも行こうかな!灰川さんもどうっすか!?」
「俺は行かないっての、仕事も入るかもだしよ。でも確かに目の保養になる!」
そんな話をボルボルと交わしつつ、SNSとかでノンギルインナー関連の写真を見てたら前園が帰って来てお開きとなったのだった。
夕方になり今日の業務終了時間になる、前園は子供の迎えがあるので既に帰っており、事務所内は灰川だけである。藤枝は昨日に来ており今日は非番だ。
今日は佳那美とアリエルは、昨日のドラマ収録の疲れもある事を見越してレッスンは無し。
アリエルはユニティブ興行事務所の隣の部屋も自室なため、今日はそちらに帰って漫画やアニメを見てサブカルチャーの勉強を楽しんでいる。夕食も今夜は体型管理食のため、別に摂る事となっていた。
「さーてと、ファースのエネルギー充填もしたし、もう少し事務作業を片付けるかなぁ」
灰川も今夜は事務所の仮眠室に泊まって仕事をする予定だったのだが、予想より早く前園が済ましていたため急ぎの仕事は無い状態だ。
ゆっくりと朋絵か砂遊の配信でも見ながら仕事するかなんて考えていたら、急な来客があった。
「こんにちはだよ~」
「ハッピーリレー事務所に来たから会いに来たわよ誠治! わははっ」
「桜と由奈? おう、いらっしゃい」
灰川事務所に来たのは桜と由奈で、桜がシャイニングゲートに用があって来たら由奈と会ったらしく、灰川事務所にも寄ってみたそうだった。
仕事の来客などがあれば入る前に帰るつもりだったらしいが、その気配も無さそうだったから遠慮なく入って来たのだ。
「桜が来るならマフ子も連れて来れば良かったなぁ、由奈は家が近いからアレだけど」
「私はいつでもテブクロと福ポンに会えるものね! 桜ちゃんと会うことが分かってたら、朝にでも言っておけば良かったかもだわ!」
「マフ子にも会いたかったけどね~、灰川さんにも会いたかったから問題ないんだよ~、むふふ~」
桜と由奈は夏休みに灰川の実家に行った時から凄く仲が良く、普段でも2人でメッセージのやり取りをしたり、お茶などを一緒に飲んだりして会話を楽しんでる。
そんな2人が偶然に渋谷で会って、そのまま灰川事務所にも行こうという話の流れになったのだ。
「そういや前の小路の配信、凄い盛り上がってたな。格ゲーで連勝して日本ランカーにも勝ったって話だもんな」
「ゴルナク3の配信だね~、あのゲーム得意なんだよ~」
「ゲーム音が視覚障碍者にも分かる音響になってるんだってな、前は桜が格ゲー強いとか思ってなかったよ」
「目の悪い人にも分かりやすい音になったのは偶然なんだってよ~、凄いよね~」
桜はゴールデンナックルファイター3というシリーズ最新作の格闘ゲームで相当な強さを誇っており、日本ランカーに乗ってもおかしくない腕前なのだ。
しかし他の配信や執筆活動もあるためプレイ回数がそこまで多くなく、ランキング入りはしていない。隠れたランカーという感じであり、界隈では注目されてるVtuberという感じである。
「ツバサはコミックストレスゼロのCMナレーションが良い感じだったな! ローカルとはいえテレビCMでも流れたしなっ」
「央敬出版の人達からも感謝されたわ! 売り上げが良かったらしいわねっ、Vモデルが映らないお仕事だったのが残念だわ!」
「ツバサのSNSでも宣伝したし、反響は割とあったらしいぞ。ハピレのV仲間もSNSで引用投稿したりコメントしたりしてたしな」
「事務所のみんなにも感謝ねっ、誰かが何かのお仕事したら今度は私が広めちゃうわ!わははっ!」
その後も少し桜と由奈と会話を楽しみ、桜は最近は執筆活動の方で出版社から『もう少しダイナミックに描写して欲しい』と注文されたなんて話を聞く。
由奈は最近は灰川に可愛い自撮り写真を多数送っており、灰川が良く撮れてると褒めたりなんかしたのだった。
「そういえば誠治は知ってるかしらっ? 最近の女の子達の間で流行ってるものがあるのっ」
「流行りってアレか? スクウェア降霊術とか無瑕疵事故物件の作り方とかか?」
「それが何なのか知らないけど違うわねっ!」
「オカルト関係の話が真っ先に出ちゃうんだね~、灰川さんらしいよ~」
もちろんオカルト儀式が流行っているはずもなく、このやり取りで灰川は先程にボルボルと話した事が頭に浮かんだのだった。
「今の流行りはノンギルティインナーっていう物なのよっ、ファッションの流行りねっ!」
「私も聞いた事あるんだ~、なんだか見られても大丈夫な下着とかなんだって~」
由奈は中学2年生で桜は高校1年生の年代だ、そういった流行を耳にする機会は多くあるだろう。
2人ともVtuberという配信者なのだからネットでも様々な情報は調べてるだろうし、その中に流行ファッションの情報があったとしても変ではない。
「あー、一応知ってるぞ。なんか流行ってるらしいな」
「友達の子も持ってる子が結構いるわ! 便利って聞いてるわね!」
「下着が見えないようにカバーする服なんだってね~、私も似たようなインナー持ってるよ~」
由奈も桜も流行りの服が気になっており、どんなのがあるとか、可愛い感じのが良いとか話してる。
「でもよ、その服って基本的に人に見せないインナーだろ? 何でそんなに流行ってるんだ?」
これらの物は基本的に人に見せない着方の服だ、なぜそこまで流行るのかが灰川は分からない。先程にSNSで少し情報は見たが、着用した写真をアップしている人はそこまで多くなく、流行の決定的な理由は分からなかった。
ショートパンツやエクスポーズドブラのファッションは日本でもやってる人は居るが、それで外出という人は少ない。
「ノンギルインナーで外出する人も居るには居るみたいよっ、でも女の子の間では別の使い方が流行ってるわね!」
「これだけでアウターにする人は少ないらしいね~」
普通はこれだけでファッションにする人は少ないが、別の使い道があるらしい。
江戸時代には贅沢禁止令が出た時に着物の裏側をハデにしてオシャレしたなんて話があったそうだが、そういう感じなのかと灰川は思うが違った。
「好きな人の前で大胆にしたり、お付き合いしてる人と少しだけ変な遊びする時なんかに使うそうね! わははっ!」
「見えても大丈夫な服だから~、安心して大胆なことが出来ちゃうんだって~」
「あー、なるほどね。そういう使い方か」
そういうこと自体は割と前からあり、見え防止インナーと一体型のミニスカート、見せるためのショートビスチェなどのファッションもあった。
それらは開放的な衣服であり、歴史的に抑圧されて来た女性が勝ち取った『自由な服を着る権利』とも言えるものだろう。
そういった服に否定的な人も居るし、それは女性の中にも居るだろう。着る側の女性だって大っぴらにファッションとして自身の衣服に採用する大胆な人は限られると思う。
だからこその隠れオシャレ、特別な人にしか見せない大胆な服、SNSとかでバズるための現代的ツールとして活用されてるのかも知れない。
そして衣服とは着用者の精神も左右するものであり、落ち着いた服を着れば落ち着いた精神に、大胆な服を着たら大胆な精神になったりするなんて事もあったり無かったり。
だからこそ流行ってるのかも知れない、隠れたオシャレで大胆精神をアップして魅力上昇、意中の人を撃破せよ!みたいな感じだろうか。
「という訳で誠治! 一緒に買いに行くわよ! 渋谷には売ってるお店が多いらしいわ!」
「は? いや、それはイカンだろって!」
「大丈夫よ! だって普通の服なんだから! わははっ!」
「むふふ~、行くなら私も行くよ~、灰川さんはお仕事とか大丈夫~?」
今日は由奈も桜も配信はナシの日だそうで、いきなり流行りの服を買いに行こうと誘われてしまった。
しかし服と言っても見た目はキワドイ服であり、あまり男と一緒に買いに行くような服ではないだろう。
「いや、仕事とかは大丈夫だけどよ、もう夕方だし下手したら補導されるなんて事も~…」
「8時過ぎくらいまでなら補導はされないって、美緒ちゃんと早恵美ちゃんが言ってたわ! あと学校制服を着てたら補導されることが多いそうよっ、今日は私服だから安心ねっ!」
美緒と早恵美は由奈の友達で、両想いで付き合ってる同級生である。早恵美はサッカーで遅くなる事があるため、そういうことに詳しいらしい。
「いや、でもなぁ」
「善は急げねっ! グループの皆にもメッセージ送っておくわね!」
「ちょ! 由奈!?」
「行動力があるね~、由奈ちゃんだもんね~」
結局は由奈は市乃たちといった仲の良いグループ、言うなれば灰川に好意を持ってる皆に向けてメッセージを送ってしまったのだった。
「空羽先輩が近くに居るから参加するそうよっ、市乃先輩と史菜先輩は配信中だから返事が来てないわねっ」
「アリエルちゃんは小学生だから、ここからの時間はダメだね~。来苑先輩は配信があるから無理だって悔しそうな電話が来たよ~」
「そ、空羽まで来るのか……」
結局は流される感じで行く事になってしまい、灰川、桜、由奈、空羽のメンバーで買い物に繰り出す事になってしまった。
買う物は流行りの服であるノンギルティインナー、誰かに見られても恥ずかしくないという名目の服である。
「ちゃんと親御さんに連絡しないとな、許可が出なかったら中止だぞ」
「お母さん~、今日はちょっと友達と灰川さんと服を買いに行って来るね~、ノンギルティインナーっていうのだよ~」
桜は親に話を通し話をして普通に許可が出たのだった、桜の親の世代はキワドイ服などは普通の時代だったし、それをメインで着る訳でもないから普通に許容範囲だったらしい。
桜の両親は灰川の事を信頼してるし、友達も一緒だとの事で安心感もある。灰川は街の危険からのガードとしても頼られてるのだ。
「ママっ、今から誠治と桜ちゃんと空羽先輩と一緒に、ノンギルティインナーを買いに行くわっ! 分かったわ、誠治に代わるわね!」
由奈も貴子に電話をして許可が出て、そこから灰川に電話を代わってくれと言われて応じた。
『灰川さん、遂にこの時が来ちゃいましたね? ふふふっ』
「どうも貴子さん、ちょっと由奈たちの買い物に付き合わせてもらいます」
『もちろん良いですよっ、しっかり由奈ちゃんに着させるインナーを選んであげて下さいね、ふふっ』
「いや…インナーとは銘打ってるみたいですが、実際にはインナーじゃないと言いますか…」
『ふふふっ、インナーはインナーですから、これはもう言い逃れ出来ませんねっ』
「言い逃れってなんぞ!? とにかく由奈は安全に帰しますから、どうもっ!」
貴子との電話も終わり、事務所を出てタクシーで空羽と待ち合わせてる渋谷駅に向かったのだった。
空羽も親に電話したとの事で出掛ける準備は整い、夕方から始まるショッピングに行く事になる。
「灰川さんがノンギルティインナーを知ってるなんて意外だったね、そういうの興味あるのかなっ? ふふっ」
「ハッピーリレーの仲の良い配信者から聞いたんだよ、流行りの服だってさ。桜、3m先にカラスのフンがあるから右に避けるぞ」
「ありがと~、灰川さんの腕を握ってると落ち着くよ~」
渋谷駅で空羽と合流し、若者ファッションの街である渋谷に繰り出す。
夕方の渋谷は学生や会社員などで人が多いが、やはり女子が多い感じがする。そこはやはり渋谷という街の特性らしい。
空羽は今日は夜遅めに配信があるが、まだ時間に余裕があるため一緒に来た。隙間時間を活かして動くのも忙しい身には大事なのだろう。
しっかりと身バレ防止の伊達眼鏡などの服装はしてあり、余程の事が無い限りは自由鷹ナツハだとはバレないと思う。それでも灰川には不安だが、何かあっても他に連れてる子も居るから変な勘繰りはされないだろう。
「107とかに置いてるみたいねっ、あとクロススクウェアとかデパートとかにもあるらしいわ!」
「やっぱそういう所に売ってるよな、どこに行くよ?」
「渋谷の地下商店街とかにもあるかもね~」
「ロフターとかにもありそうだし、最先端ならパルコール渋谷とかも良いと思うよ。センター街にもファッションのお店は多いかな」
渋谷などの大量に店がある場所では、選択肢が多過ぎて逆に何処に行けば良いのか迷ってしまう事も珍しくない。
だから渋谷などの街をショッピングで利用する事が多い人は、店を回る際の大体のパターンを作って、自分の嗜好に合った店を回る順路を形成してる事が多い。
空羽たちは順路を形成するほどショッピングをしてる訳ではなく、何処に行くべきか迷ってしまう。
「やっぱ107か? あそこは昔から若い女子のファッションの聖地みたいな場所らしいしな」
「灰川さんが行きたいみたいだし107にする? あそこは女の子が多いし行って見たいんだよね? ふふっ」
「そんなんじゃないっての、そこしか知らんだけだって」
「消極的な理由だね~、でも107って行ったことないから行って見たいよ~、むふふ~」
「私は行ったことあるわっ! エプロンを買ったわねっ!」
渋谷107は100軒以上の女子向けのオシャレ店が入る超有名ファッションビルであり、昔から全国的に有名な店である。
以前に皆で行こうとしたのだが混みあって入れなかった事があり、今回はその雪辱を晴らそうという感じになったのだった。
渋谷駅からも近いため桜を連れてても問題なく歩いて行ける場所だ、むしろタクシーとかを使った方が渋滞状況によっては時間が掛かる。
一行はそのまま道玄坂まで徒歩で向かう事にして、御目当ての品を物色しに行こうとなったのだった。
しかし灰川は知らない事がある、それは流行の全容だ。
見られても問題ないファッションインナーが流行ってるのは確かだが、実際には他にも様々な商品が話題に上っていたりする。
そもそもファッションなんて奥が深いものであり、常に複数の服やアクセサリーが流行してるものだ。
女子ファッションなど灰川は興味が薄い、特に調べた事もない、だからそういった事情に詳しくない。
灰川は付き添いの荷物持ち程度の気持ちでいるが、桜と由奈と空羽はその認識ではない。
このお出掛けも灰川の心を皆で撃墜して、後戻り出来ないくらいに好感を持たせようという作戦の一つとしても活用されるのだ。
3人とも普段は楽しく配信したり、精力的に活動をしているVtuberだ。ファンも多くナツハは400万人を超える登録者、小路は270万人、ツバサは27万人という登録者になっている。
だが彼女たちも女子であり人間だ、心の中は配信や活動に完全一辺倒という訳でもない。
人並に恋をするし、そこに策謀を巡らせたりもする。彼女たちは灰川のような凡人から見れば特別な人間に見えるが、普通に感情もあるし時には自身の感情に振り回される事もある。
空羽は灰川に今以上に好意を抱かせるために何をすれば良いかとか、普段から並列思考していたりもする。その中には灰川以外の男性には絶対にしないと言い切れるアイデアもあったりする。
桜は恋愛とかには以前は少し疎かったが今は興味津々だ、灰川にとても強い好意を持っているし、それに際して色々な学びを深めている。しかしその学びの中には少し変な知識とかもあったり。
由奈は騒がしくて元気な子という印象を周囲から持たれているが、灰川にしか見せない一面もあったりする。
そんな皆とのファッションショッピング、どんな策や手段があるのか、何があるのか灰川はまだ知らない。
今年最後の投稿になります、読んで下さってる皆さん、今年もありがとうございました!




