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配信に誰も来ないんだが?  作者: 常夏野 雨内


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281話 番外短編のまとめ3(新作も入ってます)

  来苑と映画同時視聴配信


 来見野 来苑こと竜胆れもんは今日の配信で映画の同時視聴配信をする。


 300万人の登録者を持つ彼女の配信は視聴者がいっぱい来ており、コメントもバンバンと流れては消えて行く。


 ジャンルは年齢制限のないタイプの任侠映画、いわばヤクザ映画だ。Vtuberとしては珍しいジャンルの同時視聴だろう。


 これは竜胆れもんが見たくてやる訳ではなく、会社からの指示で新しいジャンルも開拓しよう的な考えの事だった。


【れもんが男の世界を】映画見ようず!【垣間見る!】

 竜胆れもん 視聴者登録300万人


「よっす!みんな今日は同時視聴の準備してきたー? 今まで見た事ないジャンルだから楽しみだったんだよねっ! わははっ!」


コメント:マジで珍しいジャンルだよね

コメント:許可取れたんだね

コメント:シャイゲからやれって言われたんだっけか

コメント:Vの新境地の開拓なるか!?

コメント:ヤクザは嫌いだけど、

     映画とかドラマだとカッコイイと思う


「おーし! じゃあ見るぞ~!任侠映画って初めて見るよ、普段はアニメとかドラマしか見ないしな~」


コメント:視聴開始!

コメント:俺も初めてだ

コメント:ヤクザ映画なんて見ても

     印象悪くならない人って限られそう

コメント:れもんは任侠映画程度でイメージダウンしない

コメント:レモンサイダー準備OK!


 こうしてサブスクのチャンネルから本日の映画を再生し、配信画面には映されないが、れもんのパソコンのモニターには映画が映る。タイトルは『任侠伝説・極道の世界2』だ。


 視聴者も大多数は同じように映画を同時に視聴して、竜胆れもんと同じように映画を楽しんだ。


『親っさんの兄弟分の田中組の組長の舎弟のマサさんが、鈴木組の若頭と5分の盃を交わした佐藤会の若頭補佐の伊藤に襲われたそうじゃねぇか!』


『なにィ!? じゃあ高橋組の組長の子分のマサシが黙っちゃいねぇだろ! このままだと中田組の田中がキレちまう! 戦争になるなぁ……』


『おう村田組の若ぇの、田中組長さんは居るかい? この騒ぎで黙ってられる人じゃねぇだろ、田中組の村田組長と中田組の田中の~~……』



「ちょっと待って!ちょっと待って! 何これ!?名前がややこし過ぎないか!? 田中さんが3人くらい居なかった!?」


コメント:人間関係もややこしいな

コメント:頭が追い付かない!

コメント:確かに組長が組の名前と同じとは

     限らないけどさぁ……

コメント:しかも全員ヤクザっぽい格好だから

     見わけも難しいなコレ


「ま、まぁ見よう! 見てれば分かるよね!うん!」


 その後も極道組織の相関関係人物関係がややこしいまま進んで行き、組同士の激しい抗争に発展していった。


「ああっ! 中田が追い詰められる! あ、あれ?田中だっけ?」


コメント:そいつは川田だよ

コメント:みんな似た格好とパンチパーマで

     分かりづらい……

コメント:川田を追ってるのが中田で

     マサとケンカしてるのが…

コメント:なんだこの分かりづらい映画


 任侠映画は少し慣れないと誰が誰だか分からなくなるという現象だ。その状況にれもんも視聴者も見事に陥ってしまった。


 その後も組の関係とか人間関係が掴み切れないまま終わってしまう。


「面白かったけど誰が誰だか分からんかったっす! ナツハ先輩とかなら分かりそうだって思った!」


コメント:れもんには早かったな

コメント:上級者向けだった

コメント:ってか作中でも間違ってる奴居た

コメント:裏社会も大変だな

コメント:マジで誰が誰だか分からんかった


 有名俳優が目白押しだったら話は違うかもしれないが、この作品は違ったようだ。


 しかも俳優が全員とも演技が上手かったから、余計に分かりづらい。


「でも面白かったからヨシっすよ! 最後にスパチャ読み行くよっ!」


 こうしてSNSのトレンドに『竜胆れもん』『任侠映画の人間関係』がランク入りして配信は終わったのだった。



「でもこれから芸能界進出とかするみたいだから、人間関係も覚えなきゃっすよね~。そういうの苦手っす!」


 れもんもナツハと同じく芸能界進出の組に選ばれてるから、これからは覚えなきゃいけない人も増えるだろう。


「どうせなら炎のランナーズとか陸上の映画が良かったよぉ~! でも面白かったからヨシっすね! もう寝る!」


 こうして配信で色々と試しながら視聴者に楽しい時間を届け、竜胆れもんは配信の道のナンバー2を歩んでる。




  にゃー子と幽霊

  

「うらめしや~」


「にゃー! 昔の映画に出て来そうな幽霊が出てきたにゃー!」


 にゃー子が夏の灰川家の庭先で寝てた夜、白装束に三角巾を着けたステレオタイプな女の幽霊が出てきた。強い霊でもないから灰川家の者達は起きて来ない。


「何か未練があるにゃ? 良かったら話してみるにゃ」


「猫が喋ってるー! こんなの初めてよ!」


「たまに幽霊にも人間にも言われるにゃ! にゃー子は猫叉だにゃ、さっさと未練を話すにゃ!」


 にゃー子は幽霊などを強制的に祓う事は誠治と同じように好きではなく、出来るなら未練や心残りを果たして納得できる形で在るべき所に向かって欲しいと考えてる猫叉だ。


「私は生前に日本酒が好きで好きで堪らなかったの、未練は100点満点を越える日本酒を飲むことよ…」


「幽霊なのに浄霊の効果がある日本酒が好きなのかにゃ…日本酒も立つ瀬がないにゃ」


「このまま放って置かれたら、その内に目に付く日本酒を片っ端から飲み干す怪異になり果ててしまうわ…」


「迷惑な怪異にゃ!放って置けんにゃ! ちょっと待ってろにゃ、功の日本酒 (除霊に使わないやつ)を持ってくるにゃ!」


「お願いね、出来たら純米酒か吟醸酒が良いわ…それか醸造酒ね…」


「それ大体の日本酒が当てはまるにゃ!」


 にゃー子は灰川家と庭先を何往復かして功の酒を持って来た、猫叉だから普通の猫より器用なのだ。


「まずはコレにゃ、純米清酒・関東の酒蔵で日本酒作ったら良いの出来ちゃいました!だにゃ!」


「名前が変…」


「開けてコップに注いでやるにゃ」


「肉球でも開けられる便利な蓋なのね…コップも猫の絵が描いてある…」


 にゃー子が蓋を開けて酒を注ぐと、コップは動いてないのに中身の酒はぐいーっと無くなって行った。


「どうにゃ? 満足したにゃ?」


「のど越しは良いけど…味の深みが全然ね…、でも悪くないわ…毎日飲むなら値段的にもこういう日本酒が良いと思うわ…70点ね…」


「これじゃダメだったかにゃ、じゃあ次にゃ! にゃーーっ、蓋が硬いにゃ!」


 次の瓶を開けてコップに注ぐ、次の酒はさっきより精米歩合が高い良い酒だ。


「純米吟醸・ジャワ原人にゃ! 精米歩合55%の良い酒にゃ!」


「また名前が…いただきます…。凄く良いわ…のど越しも滑らかで舌触りが芸術的ですらある…でも味の良さに反して余韻が足りないわ…、89点…」


「じゃあ次は、純米大吟醸・忘失都市にゃ! これは自信アリにゃ!」


「幽霊の間で噂が広まってる怪異と同じ名前ね…関係無いと思うけど…、いただきます…」


 幽霊が大吟醸酒を飲むと、今までで一番満足した霊気を発したが。 


「美味しい…とても美味しいわ…、味ものど越しも余韻も言う事なしの100点ね…、でも100点を越えられないわ…」


「にゃ~…残念だにゃ、ここにはもうこれ以上の酒は無いにゃ…」


「ううん…私のワガママを聞いてくれてありがとう、猫叉さん…、もう少し現世に留まって最高の日本酒を探してみるわね…」


「分かったにゃ、最高の日本酒を見つけたらまた来て、にゃー子にも教えるにゃ!」


 そうして幽霊は何処となく去って行き、最高の日本酒を求めて旅立って行った。次は多分、米の本場の新潟県とかに行きそうな気がする。


「にゃー子も寝るにゃ、明日は配信の予定もあるし、視聴者どもにまた宣伝を催促してやるにゃ!」


 こうしてにゃー子も夜空の下で涼みながら眠り、次の日に備えるのだった。


 数日後に新潟県の酒蔵で幽霊を見たという情報があったそうだが、それはにゃー子も灰川家も知らない話である。




  灰川と引き出しの右奥


「ん? なんだっけコレ?」 


 灰川が事務所で仕事してた時に机の引き出しを開けると、右奥の方に見慣れない物があった。


 水色の袋に包まれており、その色を見た瞬間にVtuber北川ミナミの髪の色のライトブルーを思い出す。


「あっ、そういや史菜が引き出しの右奥は1週間見るなって言ってたなぁ」


 先日に史菜と一緒に居た時に言われた事で、灰川は色々あってそれを忘れてた。一応はお呪いの一種で中を見ない約束だから、見ない方が良いのかと思いもしたが。


「うん、やっぱ無理、ガマンできねぇわ」


 あっさりと見る事に決めてしまい、袋を手に取った。このお呪いは霊的な効果は見込めない事も説明してあるし、なぜ効果があるのかも説明してるから見たって問題ない。


 灰川は史菜が自分に好意を向けてくれてる事は知ってるし、これはある意味では『見て欲しい』と言われてるようなものだ!そう都合よく解釈して袋を開けると、中に入ってたのは……。


「バーコードの束? え?なにこれ…」


 出て来たのは北川ミナミとも白百合史菜ともイメージが合わない、バーコードシールの束だった。


 何だコレ?と思いつつも、灰川が史菜に教えたお呪いの内容は『私物を相手の机の中に隠して1週間バレない』だったから、即席で用意できたものがコレだったんだろうと思う事にした。


「こんにちは灰川さん、お邪魔させて頂きますね」


「おう史菜、テキトーにくつろいでくれ」


 そうこうしてる内に史菜がハッピーリレーでの用事を済ませてやって来て、一応は秘密にしておこうと思ったから灰川から机の中を見たとは言いださない。


「そういえば灰川さん、明後日で一緒にお出掛けしてから1週間ですねっ」


「そういやそうだなぁ、あの時はご馳走様だったな、ありがとう」


「いえ、どういたしましてっ、それで、その…あの時は、面白いお呪いなども教えて頂き、ありがとうございましたっ」


 史菜は結構な思わせぶりで、この前の事やお呪いの事を口に出す。ここはやっぱり灰川としても、好奇心で見ちゃったよと言うのが正解だと判断した。


 しかしただ見たと言うのも面白くないし、少しこちらも思わせぶりに言ってみようなんてイタズラ心が湧いてきた。


「そういや引き出しの中に見覚えのない袋が入っててな~、ちょっと中を見てみたんだよ」


「~~! ぁぅぅ…え、えっとっ…、よ、喜んでっ…いただけたでしょうかっ…?」


 こんな事を言うと史菜は顔が真っ赤になり、凄く恥ずかしそうな表情になった。


 普段は清楚で落ち着いた雰囲気の子だが、灰川に対しては大胆になったり、こんな表情を見せてくれるのは可愛いと思う。しかしバーコードで何故に照れる?


「お、おう、嬉しかったぞ」


「~~!! そ、そうですかっ、良かったですっ。そのっ…が、がんばった甲斐がありましたっ。えへへ…っ」


 バーコードの束で何をそんなに照れてるのか、頑張ったというのはバレずに机に入れたのを指してるのか、なんだかよく分からない。


「灰川さんはっ…、その…お、女の子からっ…私みたいな子からでも、ああいう物をもらったら…やっぱり嬉しいでしょうかっ…? ぅぅ…」


 さっきより史菜の顔が赤くなり、灰川としては意味が分からない。あのバーコードの束の中に何かあったのか?とか思うが、変な所はなかった。中身も全部とも普通のバーコードシールだった。


「え…あ、おう…、まあ…嬉しいかな…、うん」


「~! じゃあ今度はそのっ…も、もっとすごいのをっ…、ぁぅぅ…」


 もっと凄いの?デカいバーコードシールとか?正直いらないんだが!使い道ないし!とは言えず、どうしようか迷ってたら思わず口が滑ってしまった。


「あのバーコード束は何だったんだ……」


「えっ?」


「あ、いや……」


 口が滑って疑問を口にしてしまい、それが史菜に聞こえてしまった。もはや言い逃れ出来ず、机の中に水色の袋にはバーコードの束が入ってたと正直に言って現物も見せた。


「ば、ばーこーど、ですか? なんでこんな物が…でも袋は確かに私の持ってた袋ですし…、あっ…!」


 史菜は記憶を探ると、これに見覚えがあった。それはVフェスの時にハッピーリレーのスタッフから「ごめんミナミちゃん! ちょっとコレ預かってて!」と紙束を渡された後、そのまま忘れてしまってたのだ。


 後からそれに気付いて、今度に返そうと思って自分の好きな色のライトブルーの小袋に入れていた。それと同じ袋を灰川へのお呪いにも使用して、引き出しの中に入れる際に取り違えたのだと気付いた。


「ち、違いますっ! これじゃないんですっ! 私がお呪いに使おうとしたのはバーコードの束じゃありません!」


「ええっ? そうだったのか、何か変だと思ったんだよなぁ。本当だったら何を入れようと思ってたん?」


「そ、それは…っ、ぁぅぅ……お顔がすっごく熱いです…っ」


 まさかの間違いをしてしまったこと、まさかのバーコードの束だったこと、灰川に喜んでもらい好きになってもらうため本来入れようとしたもの、それらの思いが混ざり合って凄い恥ずかしくなってしまった。


 史菜は結構な大胆な事をする子であり、高校1年生でありながら最近は色々と調べて、男性が喜んでくれる物やとても強い好意を伝えるためのプレゼントを学んでる。


 灰川の引き出しに入れようとした物もその類の物なのだが、ネットで調べた知識であり少し変なサイトも見たため、史菜としては結構な大胆なモノを潜ませたつもりだったのだ。


「そ、そのっ! 今度また別の物でチャレンジします! バーコードの事は忘れて下さいっ!」


「え、いや、そんな無理すんなって、別に史菜からのプレゼントならバーコードの束でも嬉しいからよ」


「そんな訳ないですっ! バーコードをもらって喜ぶ人なんて居ません! でも嬉しいって言ってくれてありがとうございます! 好きです!」


「お、落ち着きなされ史菜!」


「あうう~! 頭の中が混乱でいっぱいですっ、今度にリベンジしますっ! また来ますのでっ!」


 そんな感じで史菜は混乱したまま事務所を飛び出て帰ってしまった。結局は何を入れようとしたのか分からず仕舞いだ。


「まあ良いや、仕事しよっと」


 灰川事務所のちょっと騒がしい時間が過ぎ、そのまま少し仕事して帰ったのであった。





  破幡木ツバサの配信


「今日はへべれけドラゴンRPGやってくわ! ストーリーの短いフリーゲームよ!」


コメント:それやんの!?

コメント:マジか……

コメント:イイネ!

コメント:まあ、がんばれ


「まずはニューゲームね! 主人公の名前はツバサ最強にして~……あっ!唾最強になっちゃった! もう変更できないわ!」


コメント:唾ってツバサお前www

コメント:やり直して入力し直したら?

コメント:ツバサかわいいよ!ツバサ!

コメント:ヨダレ最強www


「まあ良いわ! タイトルへの戻り方も分かんないし、このまま行くわよ! ツバサも唾も最強よっ、わははっ!」


 結局はそのまま進める事になってしまい、物語は『唾最強』という変な名前の主人公のまま始まってしまう。


 中世ヨーロッパ風のファンタジー世界が舞台で、そこは魔王率いる魔王軍と人間の国が戦ってる~~的なストーリーだ。


 そういう世界で勇者の力に目覚めたのはイケメン美少年の村人と、いっつも酔っぱらってる3mくらいのドラゴンだった。


「お酒が好きなドラゴンなのね! でも飲み過ぎはいけないって大人が言ってたわ!」


コメント:飲み過ぎはダメ!

コメント:がぶ飲みドラゴンだな…

コメント:アイテム欄が酒ばっかり

コメント:ワイン、ウイスキー、日本酒まである!

コメント:世界観どうなってんだ!?


「ドラゴンにお酒を飲ませないと弱くなっちゃうのね! だったらどんどん飲ませちゃうわ! わははっ!」


コメント:飲み過ぎダメは何処行った!?

コメント:ドラゴンは肝臓強いからOK

コメント:このドラゴンが酒飲んだ時の笑顔可愛い

コメント:むしろ飲ませないと縛りプレイになるのか


 主人公はへべれけに酔ってるドラゴンを連れて旅に出る、しかし旅はトラブルの連続だった。


唾最強『このドラゴンお酒臭い! 俺まで酒臭くなっちゃうじゃんか!』


「飲酒運転ならぬ飲酒騎乗ね! あれ? 乗ってるドラゴンがお酒を飲んでるのは飲酒騎乗って言うのかしらっ?」


コメント:飲酒騎乗なんて言葉はないっての!

コメント:酒臭いドラゴンって何かヤダな……

コメント:火を噴く時とかアルコール使ってそう

コメント:さっそく旅の洗礼か


 ドラゴンに乗って移動するけど常に酒臭いし、ドラゴンが千鳥足で乗ってる方まで酔うし、空を飛ぶ時はしょっちゅう落ちてHPダメージを負うし、乗り心地はお世辞にも良いとは言えない。


 ちなみに現実世界では公道での乗馬の時に騎手が酒を飲んでると『飲酒運転』になり、酒を飲んだ馬に乗っていると『整備不良』となるため、一応は気を付けておいた方が良いかもしれない。


 物語は続き、ドラゴンが勝手に酒場に入って高い酒を飲んでしまうし、気付いたらバッグに酒が入ってるし、ドラゴンが酒から離れてくれない!


唾最強『なんでこんなに酒を飲むんだ! おかげで旅の資金が常にカツカツだぞ!』


ドラゴン『そんなこと言ったって仕方ないじゃないか、飲みたいし我慢できないんだからさ』


唾最強『お前、喋れたんかい! ビックリした!』


「ドラゴンは喋れたのね! 新しい展開よ! 私の想像した通りねっ、わははっ!」


コメント:さっき、言葉が通じなんだから仕方ないわね!

     とか言ってたじゃん!www

コメント:喋れたんかい!www

コメント:このドラゴン、なんか憎めないな

コメント:最初から喋れwww


 その後も旅は続くが、ドラゴンは酔っぱらうと喋れなくなるので、今までと変わりない感じで先へ進んでいく。


 どれだけ酔おうが人に危害は加えないし、困ってる人や魔物に襲われている人が居たら助ける。唾最強はそんな相棒のドラゴンの事が段々と嫌いじゃなくなっていった。しかしトラブル自体は発生し続ける。


 魔王四天王の一人に遭遇した時に、ドラゴンブレスの指示を唾最強が出したら、酔い過ぎたドラゴンが飲んだ酒をリバースしてしまったり。


唾最強『ドラゴンブレス出せよ! ドラゴンアルコール・リバースじゃなくて!』


ドラゴン『かっこ良く言っても、所詮ゲロはゲロっていうのが締まらないなぁ…』


唾最強『うわっ! 吐いたらアルコールが抜けて喋った!』


四天王1『ぐわぁぁ! アルコールが炎の魔剣に引火したぁー! ドラゴンの魔力も相まって消せんぞー!ぐわぁー!』


 唾・ドラ『……』


 そんな事もあって四天王に勝ち、旅は続く。


「ドラゴンがげろげろしちゃったおかげで勝てたわ! 何が役に立つのか分からないものねっ!」


コメント:げろげろってソフトな表現で良いなw

コメント:ドラゴンアルコール・リバースwww

コメント:技っぽく言うなw

コメント:きwたwねwえw

コメント:げろげろで負けた四天王……


「リスナーの皆も通学路とかで四天王に襲われたらこうすると良いわ! そしたら勝てるわね!」


コメント:勝てる訳ねぇw

コメント:道端で出会う四天王ってなんだよ!?

コメント:現実に四天王が居たらヤバイってwww


 酒が無限に湧く天空の島『酒の楽園』に魔王の結界を破るアイテムを取りに行った時は、ドラゴンがこの場所に残ると言い張るんじゃないかと唾最強は不安になったが。


ドラゴン『無限にあると逆に興味が薄れるっていうか…なんなんだろう、この気分…? 希少性の法則?』


唾最強『お前って難しい言葉を知ってたりするよな…へべれけドラゴンなのに…』


ドラゴン『そもそもこの島のお酒、あんまり美味しくないんだよね。深みが足りないって言うのかな…』


唾最強『何百年も前の人達が作った島だからなぁ…酒造技術も低かったんじゃないか…?』


「お酒の島のお酒に文句つけてるわ!こだわりが強いグルメなドラゴンねっ! でも旅が終わらなくて良かったわ!」


コメント:気持ちは少し分かるかもw

コメント:無限にあると興味が薄れるんだよな

コメント:いっぱいあっても口に合わないんじゃ仕方ない

コメント:島を作った人が聞いたら怒りそうだw

コメント:美味しかったら島から出れずにエンドもあったかも


「次は魔王の領地に入る事になりそうね! どんな感じなのか気になるわっ」


 物語は佳境に入り、遂に魔王が治める国に入る……という所で問題が発生した。


ドラゴン『ちょっとγ(ガンマ)-GTPの数値が気になるなぁ、人間体になってリセットしようかな』


唾最強『人間の体になれるの!? 知らなかったぞ!? 村に居た時も人間になってたのか!?』


ドラゴン『当たり前じゃないか、人間の体にならなきゃお酒を買う金を稼げないし、酒を買いに行く事も出来ないじゃないか』


唾最強『確かにそうかもだけどっ、じゃあ今まで村とかでは金を稼いでいたのか!?』


ドラゴン『空を飛んで行かないと時間が掛かる鉱山で、鉱山職員やってたよ。稼ぎが良いから酒に困った事は無かったね』


唾最強『鉱山職員!?』


「人間の体になれるのね! 今まで飲んでいたお酒は給料で買って飲んでいたようね! 物語の謎が解けたわ!」


コメント:そんな謎が解けても…

コメント:鉱山職員やってる竜は嫌だwww

コメント:職員って言い方がwww

コメント:ガンマGTPを気にするドラゴンwww

コメント:変身したらγ-GTPリセット羨ましい!


「あっ、ドラゴンが人間の体になるわ! これで肝臓も健康になるわね! 健康が一番よっ!」


コメント:健康が一番!

コメント:肝臓は大事!

コメント:ツバサも健康に気を付けて!

コメント:俺も変身してリセットしたい!


 ドラゴンの体に光が集まり輝いたかと思うと、一瞬にして人間の体に変身してしまった。


ドラゴン『ふぅ、これでγ-GTPリセットだね、でもコレステロールは下がってないからなぁ』


唾最強『おまっ…! 人間の体は美少女なのかっ…! かわいい…!』


ドラゴン『私の人間体の本当の姿が見えるとは、流石は勇者の力に選ばれただけの事はあるね』


唾最強『他の人には美少女の姿には見えてないのか? だったら他の人からはどんな風に見えているんだ?』


ドラゴン『筋肉質だけど太ったオジサンかな、鉱山では怪しまれた事は無いよ』


唾最強『マジか…夢があるんだか無いんだか分からん感じ…』


ドラゴン『仮に私と唾最強がイチャイチャしたら、周囲からは少年とオジサンがイチャイチャしてるように見えるという寸法だね、はははっ』


唾最強『色々な意味で何かヤダ……』


「へべれけドラゴンは美少女だったのね! だったら逆説的に美少女の私はドラゴンかもしれないって事になるわ! わははっ!」


コメント:ツバサ可愛いよ!

コメント:ドラゴンウイングちゃん!

コメント:ツバサがドラゴンだったらどうしよう!?

コメント:ドラゴンになってもツバサはうるさそう


「あっ、物語はここで終わって、続きは2でってなっちゃったわ! 続きが気になるわ!」


コメント:まあ仕方ない

コメント:フリゲだからしゃーない

コメント:意外と面白かったw

コメント:ドラゴンが良い味出してたなw


 ドラゴンが人間に変身してγ-GTPがリセットされた所でゲームは終わってしまう、続きは『へべれけドラゴンRPGⅡで』と書かれ、中途半端な所で終了となってしまった。


「面白かったわ! 2が出たら是非ともプレイしたいわね! 早く続きを出して欲しいわっ!」


コメント:2が出たら配信でやってくれ!

コメント:俺もやってみたくなったw

コメント:裏ボスとかも居るっぽいな

コメント:意外とやり込み要素があるっぽいぞ


「リスナーの皆も配信を見てくれてありがとう! バリ硬バターさん、ヨシキタゾウさん!最初から最後までコメントしてくれて嬉しかったわ!ありがとうっ、わははっ!」


コメント:そういう所をしっかり見てるの凄い

コメント:ツバサっておバカキャラなのに記憶力良いよな

コメント:配信面白かった!

コメント:ツバサの配信は中毒性がある


「明日も配信するわ!明日はアニメの感想配信よ! いっぱいアニメを見たから長時間ペラペラ喋りまくるわっ!わははっ!」


コメント:おつかれ~

コメント:また明日楽しみにしてる!

コメント:早く寝なよ~

コメント:アニメ感想期待してるぜ!


 こうして今日の破幡木ツバサの配信は終わり、リスナーからの反応も上々で終わったのだった。


「へべれけドラゴン楽しかったわっ! 2はまだ未定なのが残念ねっ、明日は感想配信だから喋る事をまとめておかなくちゃ」


 ツバサは配信を楽しみつつも努力しており、中学2年生ながらに面白い配信ができるよう精進している。


 今はまだ先輩たちには及んでないけれど、いずれ並び立てる素質は充分にある。しかし学校の成績はちょっと怪しいかもしれない。


「後はお風呂に入って寝るだけね! 今日の配信も満足したし、よく寝れそうだわ!」


 由奈の毎日は充実している、この調子でこれからも配信しながら楽しく過ごして行こう!

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