280話 番外短編のまとめ2(新作も入ってます)
空羽とファストフード
澄風空羽こと自由鷹ナツハは実生活においては高校生だ、もちろん学校生活もあれば放課後もある。
今日は学校の帰りにハンバーガーが食べたくなって、マックリンガーバーガーでビッグマックリンを買ったんだけど…。
「パティが挟まってない……」
「あはははっ!! 空羽のバーガー、上も下もお肉が入ってないじゃん! あっはっは!」
隣で笑ってるのは学校の友達の七菜香、公園のベンチで一緒に座りながらハンバーガーを食べようとしてた所だった。
「パンとレタスだけじゃん! ピクルスも入ってるけど! あはははっ!」
「笑い過ぎだよ七菜香、たまにはこういう事だってあるよ。今日は運がなかっただけ」
パンと野菜だけのハンバーガーなんて食べる気になれない、これは流石に店に戻って作り直してもらうべきだと思う。
でも結構歩いて来ちゃったし、また戻るのもな~…と考えてた時。
「空羽には笑わせてもらって悪いけど、私は普通に食べちゃうもんね~! ハンバーガー食べたい人の隣で食べるハンバーガーは美味しいだろ~な~!」
「ふふっ、味わって食べてね七菜香? ジーっと見ててあげるから」
「目がちょっと怖い! でも頂きまーす!」
七菜香が自分のDXエッグバーガーの包装紙を開けると。
「なんじゃこりゃ~! 私の方はエッグとパティしか入ってないじゃん! パンズは何処いったー!?」
「あははっ! 七菜香も人のこと言えないねっ、人の不幸を笑った天罰だよっ、あははっ!」
「ダブル不幸じゃ~! この恨みは忘れんぞマックリン!」
「あはははっ! あっ、ちょっと待って、コレをこうすれば~…」
空羽は自分の肉なしバーガーに七菜香のパティとエッグを挟むと。
「うお~! 空羽は天才だ~! ハンバーガー出来たよ!」
「ふふっ、こうすれば良かったんだね」
2人の未完成バーガーを合わせて完成バーガーになった!これを半分に分けて。
「はい、七菜香。戻るの面倒だし、これで我慢しよ?」
「そうしよう! 私も空羽がベタベタ触ったハンバーガー食べたいし!」
「なにその理由!?」
こんな風に澄風空羽こと自由鷹ナツハの放課後は過ぎて行くのだった。
由奈と近所のおばあちゃん
「オババ! 遊びに来たわよ!」
「おや、由奈ちゃんかい。今日も元気だねぇ」
飛車原の家の近所には、前から付き合いのある沢木さんというお婆さんが一人で住んでる家があり、由奈も小さい頃からお婆さんを知っててたまに遊びに来たりしてる。
親戚とかではないが何だか親戚みたいな近所付き合いのお婆さんで、由奈は沢木さんをオババと呼んで懐いており、沢木さんも由奈の事を昔から可愛がってくれてる。
「昨日は学校の行事で老人ホームにボランティアに行って来たわ! 色々なことが聞けてとっても勉強になった! 入所者のお爺さんとお婆さんとも仲良くなったわっ!」
「そうなのかい、良かったねぇ。私もその内に入るかねぇ」
「オババが入ったら私が会いに行くわっ! でもオババはまだまだ元気だから大丈夫よっ! 私が保証してあげるっ!」
「ありがとうねぇ」
沢木は元気で持病もないが、昔よりは衰えが強いのは感じてる。それにまだ老人ホームに入る訳にはいかない。
由奈の声が大きいのは、耳の遠い老人に普段から接していることも理由の一つで、由奈の声はお爺さんやお婆さんにも聞こえやすい大きさだ。もちろん聞き逃したり聞こえなかったりする事はあるが。
「Vtuberが1番だけどヘルパーさんもやってみたいわ! 光華心園の所長さんに、たまにお爺さんとお婆さんに会いに来て良いか聞いたら、良いって言ってくれたわ!」
「良かったねぇ、光華心園には私の友達も入ってるから、よろしくねぇ」
「オババのお友達って生け花が好きな森原のお婆さんかしらっ? 何だかオババと少し似た香りがしたわねっ、お花が元気が無い時は濡れた新聞紙で根元を包んであげると良いって教わったわ!」
「よく気付いたねぇ、森原さんは私の生け花の先生だったのよ」
由奈は近所では有名な子だ、元気で優しく活発で、見てるだけで元気をもらえるような性格は近所中の人達が知っている。
特徴的なツインテールヘアが見えたら、大体の近所の人は由奈に挨拶してくれるのだ。もちろん由奈も元気に挨拶を返す。
「そういえば誠治って人がお仕事で一緒なんだけどね、誠治って凄いのよ! この前もオバケを~~……」
「灰川家の長男だねぇ、私とは比べ物にならない強さだからねぇ」
沢木のお婆さんが何かを言ったが、由奈は気付かなかった。
「誠治と仲良くなるにはどうしたら良いってママに聞いたら、靴下とか体操着を使うと良いって聞いたわ! 今度やってみるつもりよ!」
「そうなんだねぇ、がんばりな~」
由奈が変な事を言ったが沢木も耳が少し悪くて聞き漏らす、だが由奈がマシンガンのように喋るから静かな時間など出来やしない。
「じゃあそろそろ行くわねっ! また来るわっ、バイバイ!」
「また今度ねぇ、由奈ちゃん」
こんな風に由奈は人と仲良くなる、その明るさで今日も配信だ。
桜と変なハムスター
「ちゅ~、ちゅ~!」
「わぁ~~、変な小っちゃい何かにカリカリされてる~、たぶんハムスターだこれ~」
桜は目が見えないが、手を引っ掻かれてる感触からハムスターだと認識した。ハムスターには以前に触った事があるから分かった。
そのハムスターはちょっと前まで背中の模様が『悪ハム』だったが、今は霊能者にお祓いされて『良ハム』になっており、良い感じの運勢を運んで来る動物怪異になっていた。
「ちゅ~!」
「あ~、どこか行っちゃった~、変なハムスターさん、元気でね~」
変なハムスターは何処かに去って行き、桜はシャイニングゲートの本業事務所の休憩室に残される。
今日は仕事の用事があって会社に来てたが要件は済んでおり、後はタクシーを待って帰るだけだが渋滞で少し遅れてるようだった。
その間に桜はスマホでアロマオイルの情報や、配信に使えそうな情報を調べ、スマホの読み上げ機能で情報を聞きながら時間を潰してる。
そんな感じで過ごしてると通販サイトに迷い込んでしまい、個人手芸で作った物の通販コーナーのページに入ってしまった。
「あんまり興味無い所に入っちゃったな~、戻るをダブルタップして~~……」
『このマフラーは自宅によく来る猫ちゃんの尻尾をイメージして作りました。
その子は肩に乗って尻尾を巻いてくれる猫ちゃんで、
フカフカでフワフワの尻尾が最高です。
首に巻いたら猫ちゃんに尻尾を巻いてもらってる気分になれます』
「戻るを取り止めて~、続きを読んでねスマホさん~」
『今なら家に来て、しょっちゅう門に嘴が刺さって抜けなくなってる、
キツツキみたいな鳥の感触を再現した鬼突きさん人形も付けちゃいます。
よく家に来る巨大猫のクッションも製作中です』
「注文しなきゃ~、○○通販サイトのお客様センターの電話番号を調べて~、あとは~~……」
桜は目が見えないため通販などは通常の方法が使えない、しかし現在は通販サイト側も大手はそういう方面への配慮もしてるし、通販処理も可能な窓口を用意してる事も多い。
「あぅ~、電話番号の検索に失敗しちゃったよ~…どうしよ~…」
『なお、この品は一点物なので再販の予定は今の所ありません。
購入を希望の方は、お早めに~~……』
「う~…マフ子みたいな子のマフラー欲しいよ~…、早くしなきゃ売れちゃうよ~…」
焦る桜だが無情にも上手く行かない、その時だった。
「ちゅ~、ちゅ~! モドッテキタちゅ~!」
カリカリカリ!
「わぅ~~、また変なハムスターさんが来てカリカリしてる~、あっ、どこかに電話が繋がっちゃった~」
『お電話ありがとうございます、こちら○○通販お客様センターです』
「繋がった~、ハムスターさんありがと~、すいません商品の注文をお願いしたいのですが~~……」
桜は体の事情を伝えてから無事に手芸商品を注文し、何日かしたら届くと言われて楽しみに待つ事にする。
変なハムスターは何処かへ去ってしまったようだ、桜は偶然とはいえ幸運をくれたハムスターに感謝した。
どこかの田舎の家
「あら、マフ子、アナタの尻尾マフラー売れたわよ。モチモチ鬼突き人形もセットのやつ」
「にゃ~……にゃ…」
「どんな人に届くのかしらねぇ、そろそろ夕食の準備しなくちゃ、砂遊~、手伝いなさ~い!」
どこかの田舎の霊能者一家は今日ものんびり過ごしてる、そこに来る動物たちも同様だ。
「にゃ~……」
そんな家でのんびり寝転ぶ尻尾がご自慢の猫も、眠そうにしながら
『前に会った優しい温かな女の子が買ってくれてたら良いな』
的な事を考えながら過ごしてるのだった。
灰川とボルボルのスロット談義
「はぁ~、配信疲れたなー。史菜も今日は来てないし帰ろっかな」
市乃はハッピーリレーの配信階でVtuber配信をした後、軽くドリンクを飲みながら休憩していた。
会社提案の企画配信だったのだが、今回の企画は三ツ橋エリスのキャラには合うが神坂市乃の性格にはあまり合わず、ちょっと疲れる内容だったのだ。
明日は日曜だから、明日の昼までしっかり休んでから配信だなと考える。
そんな時にエレベータのドアが開いて誰かが出て来て、市乃には気付かず反対側のベンチに座って何やら話し始めて様子だった。
「マジすか灰川さん! やりますねぇ!」
「いやいや、ボルボル君の方こそやるじゃんかよ!」
(灰川さんとボルボルさん? なんか話してるっぽいなー)
市乃は暇だから少し盗み聞きでもしてみようかと思う、灰川さんだし別に良いよねーとか考えている。ボルボルには接点があまり無いので興味は薄い。
「マジで隣に座ってた爺さんが、一撃で天国に行っちゃったんすから!」
「一撃かぁ、やっちまったなボルボル君!」
「!!??」
一撃で天国!?、それって一発殴ったらお爺ちゃんが天国に旅立ったちゃったってこと!?
あり得ない!、配信者がそんな事をするはずがない!、そう思う。
しかもそんな事を笑いながら聞くなんて最低なこと、灰川さんがするはずない!、とも思う。
「でも俺はその後で、近くのお姉さんと一緒にCに行ってラッキーでしたよ! めっちゃ出ましたし!」
「Cに行ったんならラッキーだわなぁ」
「俺はゾーンに入ってたから無理やり上げた感じっすけどね~」
Cってアレの事だよね……セッ…、しかもムリヤリ!?
そんな話は聞きたくなかった、同じ企業に属する配信者が暴行犯で無理矢理に女の人とCまで行ったなんて……!
見下げ果てた男だ、そんな奴だと思ってなかった。あんまりボルボルの事を知らないが、少なくともそんな人だなんて思っていなかった。
「その後はAとBを行ったり来たりで最悪でしたよぉ、AもBも俺からすりゃ意味ないっすもん!」
「そうなのか、俺はあんまり判別が付かないなぁ」
AとBは意味ない!?、何ソレ!?意味わかんないんだけど!!
「チャ目からCZも入れたし、強チェからストックもぶん取ったけど、ちょっと微妙な結果だったすよ」
「マジか、そりゃ残念だったなボルボル君」
もう2人が何言ってるか分からないが、市乃はどうせロクでもない話なんだろうと思ってしまう。
灰川は特に何かやったという話はしてないが、あんな話を普通に受け答えするのはどうなんだと思う。
でも確かに、自分が灰川の立場だったら落ち着いて話を聞くほかに無いかもしれないとも感じる。変に引いたら何されるか分からないのだから。
とにかくボルボルさんが最低な奴だというのは分かった、これからは絶対に近付かないようにしようと市乃は考える。社長に話して警察に相談~…とか考えてると。
「ボルボル君、スロットで隣のお爺さんがすぐ天国モードに入って大量出玉だったけど、自分もモードCに近くの席のお姉さんと同じくらいに入って割と持ちメダルが増えたんだよな、良いなぁ」
「モードAもモードBも当たりまで遠いっすから、意味ないっすよね! スロットって難しいっすよね~」
「ギャンブルの話だったんかーい! ムカついて損した! もう帰って寝る!」
「「うおお! 誰か居た!」」
思わず市乃はそんな叫びをしてしまい、灰川とボルボルは驚いてビックリしてしまった。
疲れていたから変に早とちりしてしまった事に気づき、自分にムカつくやら、よく分からん話すな!とムカついたり感情が忙しい。
とりあえず『お疲れさま』という感じで挨拶し、灰川とボルボルは意味も分からないまま三ツ橋エリスを見送ったのだった。
「エリスちゃん居たんすね、なんか嫌われたような気がするんすけど、大丈夫っすかね…?」
「スロットとかに良い印象が無いんだろうな、まあ大丈夫だとは思うけど」
スロットをやってない人からすると、スロットユーザーの会話は何を言ってるのか分からない事が多い。
もしかしたらこんな勘違いをされる日が来るかも知れない、気を付けよう!
枝豆ボンバー!の配信
「こんにちは、今日も枝豆ってくよ~!」
コメント:エダマメ~!
コメント:こん枝豆!
コメント:来たか枝豆
「今日は枝豆を使った商品のレビュー実況だ、どんどんレビューしちゃうからな!」
枝豆ボンバー!はハッピーリレー所属の配信者で、枝豆に特化した配信や動画投稿をしてる奴だ。
あまりにニッチな内容だが配信は面白いし、ニッチな層から人気はある。投稿動画も面白い物が多いが、再生回数は軒並み低い。
今日の同時視聴者は108人、枝豆特化の大学生配信者としては凄い人数だと会社からも変に認められている。
「まずは枝豆マスク、これを着けてと……おお!これは良いぞ! 枝豆の香りがして落ち着く! 星5評価の100点だ!」
コメント:枝ボン君って枝豆商品は100点以外付けないだろ
コメント:安定の100点
コメント:知ってた
「次は大豆繊維で作ったブックカバーだなっ、うん最高! 枝豆を読んでるという実感が素晴らしい! 100点!」
コメント:枝豆を読むってなんだよ
コメント:ジャックと豆の木でも読め
コメント:コイツ枝豆ばっかだな
「枝豆ばっかって言ってくれてありがとう、僕にとっては最高の褒め言葉だよね」
煽りコメントがあろうが気にしない、むしろ枝豆ばっかと言われて嬉しいとすら思えるのが彼なのだ。
だが配信では普通にゲームとかをプレイしたりする事もあるし、格闘ゲームやFPSでは高ランクに居たりするので、割とゲーム界隈でも侮れない奴として通っている。
そのためゲーム配信の時は同時視聴者が1000人くらい来ることもあり、視聴者登録数は7万人と枝豆特化の配信者にしては多い数字だ。
しかし枝豆関連の配信や動画が多いため視聴者数は稼げず、ゲーム特化にすればもっと数字は上になるだろうと、視聴者と会社からは残念がられてたりする。
「そして今日の目玉! ずんだシェイク!……のイラストが描かれたウエストポーチだ!」
コメント:食べ物を紹介しろや!
コメント:変な物ばっかりじゃねぇか!
コメント:何も食べてないのに胸やけして来たぞ!
「このずんだシェイクのイラスト良い感じだ! 星5の100点!」
コメント:枝ボンは枝豆が関連してたら何でも良いしな
コメント:将来は枝豆農家、枝豆研究者、枝豆商人の兼任だもんな
コメント:ウエストポーチかよ
もはや枝豆が好きすぎて人生を走っており、枝豆さえあればどんな環境でも幸せという精神なため不幸などへのマインド耐性が高い。
彼がこれほど枝豆を好きな理由は、保育園の頃に母親がお酒のつまみに枝豆を食べていたのを何個かもらって食べたら、脳天に雷が落ちたかのように美味さに衝撃を受けたからだ。
それは正に天啓であり、僕の人生は枝豆と共にあり!と幼稚園児の時点で悟ったのだ。その反面で食べ物の好き嫌いは多くなってしまった。
枝豆ボンバー!は母子家庭だったのだが、母親は枝豆を与えてけば大人しくしている息子なので育児に手が掛からず、枝豆に関する本を与えておけば勝手に勉強もするから子育てには全く苦労しなかった。
遂には返済義務のない奨学金を受けて農業高校と農業大学に進む事になり、今は大学で大豆研究しながら配信企業に所属して大豆の広報活動をしまくっている。
各種の能力は高く一見すると落ち着きのある青少年だが、能力の全てが枝豆に向けられている尖った精神の持ち主だ。
「大豆は栄養満点で育てやすくて、美味しいし安い! みんなも枝豆でボンバー!しよう!」
コメント:枝豆最高!
コメント:ビールにゃこれっしょ!
コメント:貧乏から金持ちまで皆大好き大豆!
コメント:栄養バランスも良いし!
「枝豆最高! 明日は豆焼酎の企業案件やるよ! 大豆ビールの研究報告も待っててちょうだいね!」
もはや枝豆ボンバー!が大豆関連の企業案件や宣伝をいくらやっても嫌味を言う人は居らず、むしろ枝豆関係の企業案件が来たら祝福される。
そんな彼の夢は、塩枝豆に最も適した大豆の品種開発と、砂漠でも簡単に育てられる大豆の開発だ。それで財を成して育ててくれた母親に枝豆みたいな家をプレゼントする事だ。
しかし母親は息子と一緒に枝豆を食べ過ぎて、自身は枝豆をあまり好きではなくなってしまった上に。
『私に育ててもらったって言ってるけど、枝豆食べながら枝豆の本を読んでただけじゃん…。高校と大学だって農業高校に奨学金もらって行ったし…あんまり私が育てた記憶がない…』
とか思われている事は本人は知らない。
心優しく親孝行な息子だが、何か変に尖ってる奴、それが枝豆ボンバー!である。
とにもかくにも、今日も明日も枝豆だ!
毎日投稿チャレンジのノルマのための短編集です。
期間中は何回かこういうの出すかもしれませんが、ご理解下さると嬉しいです!




