211話 激ヤバの富裕層パーティー
元シャイニングゲート所属だった新藤は独立して個人Vに転生し、シャイニングゲート時代に稼いだ収入で事業を立ち上げ、それも成功してる。
Vtuberとしては今は登録者は70万人、月収で言えば起業した事業も合わせて一般人が稼ぐ平均の何十倍、シャイニングゲート時代に稼いだ稼いだ収入もあるから充分に富裕層と言える人物だ。
上手くやってるんだから困ってる筈もないと思うし、客観的に見ても順風満帆に行ってるようにしか見えない。だが問題は金銭とかVtuberの人気とかの話ではなかった。
「実は……人脈を広げたいと思って参加したパーティーが、危険な集まりだったんです…!」
「危険な集まりですか? まあ、金持ちのパーティーだからインサイダー取引とかあるんでしょうけど、関わらなければ大丈夫だと思いますよ」
金持ちにしかもたらされない確実に儲けられる話とか、絶対に安全な投資とかの話がある事は灰川も聞いてる。
四楓院家の陣伍や英明、シャイニングゲートの渡辺社長にもそんな話があったと聞いた事がある。そういうのに乗るかどうかは本人次第だが、そういう話に上手く乗って利益を得るよう立ち回るのも金持ちの手腕なのだろう。
危険だと思ったり確証が浅いと思ったり、裏が取れない場合は乗らないのが得策だ。一度でも浅い話を持ってきた奴は信用されなくなるし、恩を売りたくても売れなくなる。
本当の儲け話は金持ちにしかやって来ない。人に儲け話を漏らす時は、その人がその話に乗れない事情がある時や、恩を売りたいなどの事情がある時なのだろう。
「違うんです…! 危険な薬物とかがっ…」
新藤が語った富裕層の裏のパーティーとは、恐るべき内容のものだった。
金持ちの露悪
新藤は金持ちが集まって行うパーティーに知り合いの社長に誘われて参加した、会場は誰かが持ってる大きな船で、日本の領海を出た場所で開かれたらしい。
船の中では高級なシャンパンや豪華な料理などが振舞われ、どこかのIT企業の社長、芸能事務所の社長などの、いかにも金を持ってそうな人たちだった。
海外の金持ちっぽい人も多かったらしく、新藤は色んな人に話し掛けて名刺交換したり会話をして人脈作りに勤しんだ。
一通りの人に話し掛けた後に催し物があったらしく、それがヤバイものだったらしい。
まず長寿料理と言われて出て来た物が絶滅危惧種の動物の頭がテーブルに複数種類も並べられた、見た事もない料理だったらしい。
新藤は怖くて食べたくなかったそうなのだが、周囲から「食べないの?」と目が笑ってない顔で言われ、食べたという。
次に乗船客たちにナイフが配られ、派手な格好をした人が出て来たそうだ。その人に自由にナイフを投げつけて下さいと言われ、金持ち達は笑いながら投げつけたが派手な格好の人は全てを回避した。
新藤は投げたくなかったが、投げなければ自分が危険だと感じて当たらないよう外す形でナイフを投げたらしい。
ここまではまず良かったと言う、絶滅危惧種料理は怖いけど黙ってれば大丈夫、ナイフの人はプロの軽業師だったと考える。
しかし料理の時は貪るように食べる老人社長のような人が居たり、軽業師の時は愛人っぽい人に「アイツに当てたら200万、息の根を止めたら1000万やるよ」なんて言ってる奴が居た。
最後には檻に閉じ込められた複数名の者達が出て来て、変な匂いのするタバコを吸い込んだと思ったら……笑いながら互いに暴力を振るい合ったり、満面の恍惚の笑みで自傷行為をするなどを始めたらしい。
新藤は怖くて震えてたそうだが、周囲の連中は笑いながら酒を飲んで楽しんで鑑賞してたとの事だ。
その後は客室みたいな所に入って寝る感じだったらしいが、各部屋から誰かの悲鳴や異常な笑い声などが聞こえてきて、とても寝れなかったらしい。
「裏パーティーに参加しちゃったって事ですか、災難でしたね」
「……! そのっ、灰川さんも参加した事があるんですかっ…?」
「無いですよ、金持ちじゃないですし。でも噂っていうか都市伝説では昔から定番ですからね」
金持ち主催のヤバいパーティー、金持ちが鑑賞する一般人を集めたデスゲーム、金持ち向けの芸能人風俗、そんな噂が昔から囁かれてる。
その内のいくつかは実際に検挙されて存在が明らかになったなんて事例が世界にはあり、現代だと裏社会系your-tuberが本当にある!なんて話を暴露してたりする。
「でも何でわざわざシャイニングゲートさんに相談しようと思ったんですか? ショックだったのは分かりますけど」
「それが…ここ最近、誰かの視線を感じたりするんです。それで不安になって…」
怖くて警察や知り合いに相談できる筈もなく、自分が以前に所属していたシャイニングゲートに相談しようと思ったようだ。
渡辺社長なら何かしら安全な対応を知ってるかもという考えのようだが。
「巻き込んでしまう可能性とかは考えなかったんですか?」
「……! そ…そうですね…、いま考えると…確かに…っ」
配信企業なんて人気商売であり、裏社会と繋がりがあるなんて噂が流れたら大変な事になる。会社が終わる可能性だってあるのだ。
だからこそ渡辺社長は灰川に投げたのだ、灰川ならコンサルタント名目だから誰かが何の相談に来ても変ではない。
新藤は精神的にかなり追い詰められてる、恩人を巻き込んでしまう可能性にすら目が行かなくなってる状態だ。責める事は灰川には憚られた。
灰川だってそんなパーティーには嫌悪感を感じるし、目の当りにしたら許せないと思ったかもしれないが、現状では他人事だし検挙するような権利は持ってない。
「まぁ、誰でも言えることですけど、危ない人とは付き合わない方が良いですよ。危ないかそうでないか見極める目を培うべきなんでしょう」
「はい…」
だが灰川には具体的にどういう風に見極めればいいのか分からない、そこは自分でどうにかしてもらう他に無い。
「あとは心療内科に行ってみるとかですかね、精神的にキツイでしょうけど、俺じゃどうしようもありません」
「……! は…はい、ありがとうございました…っ」
そう言ってお引き取り願い、この一件は終わったかに見えたが。
30分ほどしてから高籏は新藤を連れて戻ってきた、服装はさっきとは違いラフな新品、バッグはこの場に無くスマホや財布なども無い状態だ。
「こんにちは、株式会社SSPの三檜と言います、よろしくお願いします」
「新藤です…、あの…よろしくお願いします…」
実は灰川は先程に新藤と高籏に「服を一切着替えてバッグとかもコインロッカーに入れてもう一度来て」というメモを手渡していた。
その間に四楓院家の持つ要人護衛セキュリティサービス会社、SSP社に連絡を取って来てもらったのである。
実はSSP社は陣伍や英明の命令で灰川の事務所が入ってる雑居ビルの3階に支社を作り、何かがあった時は即座に飛んで来れるよう備えてくれてるのだ。ちなみに灰川事務所は2階である。
灰川のプライベートを侵害しない程度に守ってくれて、もし灰川がヤクザ者や不良に絡まれたらすぐさま対応できるよう守ってるとの事だった。
「コインロッカーのカギを貸して頂けますか?」
「は、はい、どうぞっ」
そう言ったのは坂林という女性のSSP社の職員だ、今から盗聴器や隠しカメラが仕込まれてないか確認する。女性の衣服や荷物のため、確認するのも女性スタッフである。
「新藤さん、こちらの三檜さんはプロ中のプロのボディーガードの方です。少し詳しく調べたり教えてくれると思いますので」
ソファーに座ってる身長190cm超えのガタイの良い男、三檜は四楓院家の専属護衛部門と言える警護セキュリティ会社に所属しており、その会社は四楓院に戦国時代から仕える家の者達で運営されてる。
三檜家や三梅家、他にも漢字の三が付く苗字の人や、その親類の人が多いらしい。SSP社に所属する人員は暴力などには完璧に対応できるし、人探しや恫喝してきた者への対処、他にも様々な業務が可能だそうだ。
公安警察などにも顔が利くし、四楓院の傍会社という事もあり、警察の上部組織である警察庁や総務省、国家公安委員会などにも顔が利く会社との事だ。
四楓院家を守るのは当然で、政治家や海外要人が警察警護を付けられない状況での警護なども請け負う。SSP社は規模はそんなに大きくない会社だが、人員は全て超腕利きである。
金名刺を持った要人も警護対象となり、最上位格の金名刺を持つ灰川は最重要警護対象との事だ。今までも灰川と四楓院の繋がりを嗅ぎつけた何者かが、盗聴器を仕掛けようとしたのを防いでくれてる。
「実はかくかくしかじかで~~……」
「なるほど、富裕層の危険なパーティーに行ってしまった訳ですね」
さっきの話を三檜に話し、それらの情報を纏めていく。
こんな話は灰川では対応できないし、プロに任せるのが一番だ。もしヤクザなんかをけしかけられたら灰川では武器を持ってても負けると思う。
話を聞いてる間に坂林が来て結果を報告してくれた。
「結果は黒です、盗聴器が見つかりました」
「「!!」」
「恐らくは自宅にも盗聴器か隠しカメラが仕込まれてるでしょう、厄介な奴らに関わりましたね」
新藤をパーティーに誘った社長というのはIT企業を幾つか経営する人物だが、三檜が掴んだ情報によると裏では黒い事をやってる奴らしい。
ドラッグコンパの主催、バイオレンスショーに出入りしてる、賭博を開催したとか、裏との繋がりがある人物と裏が取れた。
暴力団、特殊詐欺グループ、外国人窃盗団、そいう連中と関係を持ちながら、IT企業の伝手を使って足のつかない携帯を手に入れて売ったり、海外銀行を経由したマネーロンダリング代行をしてる疑いが濃い会社を経営してるそうだ。
最近はIT企業を隠れ蓑にした反社が増えてるそうで、海外との取引も珍しくないIT企業を騙って、汚い金を綺麗な金に換える事などを行ってる所もある。
他にも匿名・流動型犯罪グループ(通称 トクリュウ)の元締めをしてるとか、オンラインカジノを海外サーバーを使って運営してるとか、そういう黒い噂が流れてる。真実かどうかは非常に疑わしい噂が大半だが。
金持ちになるためには大前提として金を持ってなければならない、金を稼ぐのは難しいが悪事を行えば手っ取り早く稼げる場合もある。そういう手段で金持ちになった奴に関わってしまったら危険に身を晒される。
「この状態だと警察は動かない可能性が高いですね、動いたとしても足は掴めないでしょう」
「じゃあ、どうすればっ…!」
「ボディーガードを雇うのが良いでしょう、我々の会社は一般の方からの依頼は請け負ってませんが、系列会社に一般依頼も受け付けてる会社があります。良ければ紹介いたしますが」
SSP社は本当の要人からの依頼しか受け付けてないらしく、しかも依頼も会社にではなく四楓院の方で精査して受け付ける形式になってるらしい。
だが同じく四楓院グループが経営する一般セキュリティ会社もあり、そちらはSSP社ほど依頼者の査定は厳しくなく、料金も無理のない範囲だそうだ。
SSP社は危険度が高い依頼をこなす性質の会社で、スパルタ教育を受けた腕利きや、マシンのスペシャリストが居る。利用者は要人のため依頼料も非常い高い。
もしSSP社にボディーガードを依頼した場合、車両や装備費、危険手当なども込みで人員一人当たり50万円くらい掛かるらしい。それでも仕事が多数舞い込むのだから、要人警護は需要が高いんだなと思わされる。
「系列会社のエグゼクティブ・セキュリティ社は優秀な人員が揃ってます、危険なく過ごせるよう1か月ほど依頼する事をお勧めします」
「わ、分かりましたっ…!」
「それとボディーガードは決して悪人と戦う事が第一の仕事ではありません、危険な連中を依頼者に近付けない事が仕事です。自ら危険な場所に行ったりしないよう、同じくお勧めします」
こうして新藤は危険から守ってもらえる算段が付いたのだが、ここで新たな問題が発生する。灰川への依頼料金をどうしようか考えてると。
「それとSSP社の新藤様への情報捜索料、50万円になります。盗聴器の探査料金はまけておきますので」
「「!?」」
これに驚いたのは新藤、高籏、灰川の3名だ。まさかそんな金額だとは思ってなかった。
「新藤様は灰川先生が契約しておられる会社の方ではありませんので、正規の料金を頂戴いたします」
新藤に与えた情報はパーティーに連れてった社長の裏の顔であり、本来なら簡単には掴めない話だ。
こういった情報は無料では手に入れられない、危険を冒したりそれなりの対価を確かな情報筋に支払わなければ掴めない話なのである。
もちろんSSP社もこの情報を無料で手に入れた訳ではなく、先程に繋がりのある情報屋みたいな人物に連絡を取って、新藤が関わった会社の社長の情報を買ったのだ。
「それとこの話をした事によって灰川先生の身にも危険が及ぶ可能性はあったのですから、最低でも30万円は支払うべきでしょう」
「「!!」」
この30万円というのは弁護士の着手金の相場の高めの値段で、同じく身の危険を伴う職業である弁護士の依頼料を参考にした価格だ。
灰川は霊能力を使う場合は安値にするが、こういった自業自得での身の危険を相談された場合は、きちんとした金額を受け取れという三檜からのメッセージでもある。
「新藤様、会社所属を抜けて独立したという事は全ての責任はアナタにあります。危険な奴はもちろん悪いですが、そういう奴に裏も取らずに自分から近づいた事が原因なのですから」
「はい…」
「この金額は高いと思うかもしれません、ですが危険を解決するにはこれだけの金銭が必要なのです。情報も無料では手に入りません、危険人物に関わった場合は身の安全だって贅沢品になるのです」
危険なものから身を守るには、危険に近づくより大きな金が掛かる事がある。
今回は事前に料金の説明などはなく、ほとんど灰川が勝手に頼んだような形であるため、支払い義務は薄いだろう。
「人脈を作ろうとするのは大事ですが、金を持ってるからとか、人脈が広そうだからなんていう安易な考えで近づくのは避ける事です。何かがあってからでは遅いんですから」
「そうですね…」
「他人を危険に巻き込んだ責任、元に所属していた会社に裏社会の影を近づけさせた責任は重いです。今回は合計で80万円で全てを処理しましょう、お支払い頂けますか?」
今回の件は灰川にも危険が及びかねない状況であり、シャイニングゲートにも危ない連中が近づく遠因になりえた。それらは『知らなかった、分からなかった』では大人の世界では済まされない。
新藤は30歳くらいであり、事業主である。ビジネス的に考えたら支払いを渋れば、灰川に新藤を紹介したシャイニングゲートの顔を潰す事になる、そうなれば様々な弊害が出るだろう。
そうでなくとも反社会的勢力と関わったのは自分の責任だ、それらの事が分からない人間でもないだろう。こういう道理が理解できない者も多い世の中だが、彼女は元シャイニングゲート所属のVtuberなのだ。その辺の判断は付く。
その後は新藤は灰川コンサルティング事務所と株式会社SSPに料金を支払うという事で契約書を交わし、SSP社の職員が系列会社のエグゼクティブ・セキュリティ社に車で送って行ったのだった。
「灰川先生、随分とスリリングな人たちと関りがありますね」
「いやいや! 新藤さんとは初対面でしたよ!」
流石にそこは断りを入れて三檜に弁明する、灰川としては自分から元所属者に関わったりはしないし、顔すら知らないのだ。
「ありがとうございました灰川さん、三檜さん」
礼を言ったのはシャイニングゲート職員でマネージャーの高籏、彼女はまさかこんな話になるとは思ってなかったようだ。
「灰川さん、凄い方と関係があるんですね。御見それしましたよ」
「あはは…三檜さんは凄い方なんですが、俺が全然大した事ない奴なのが釣り合い取れてませんねぇ~…」
「そんな事はありません灰川先生、我々の上司は灰川先生に大きな感謝を抱いておりますから」
凄く思わせぶりな感じを出してしまってるが、いくら何でも感謝のし過ぎだと灰川は思ってしまう。
確かに四楓院家の子の八重香を助けはしたが、渡る世間の恩義は移ろいゆくもの、例え命を救われようともそこまで恩に感じる必要はないと思ってしまう。
もちろん陣伍や英明は子供を助けられた事は大変に恩を感じてるが、そんな恩義ある人を只人で居させるのは家の名折れとしてるからこその待遇でもある。四楓院は何としてでも灰川の名前を上げさせるつもりだ。
そして上げさせた名前から四楓院に金が流れるための導線を、配信界からも作ってるという感じである。芸能関連や政財界に非常に強い力を有する四楓院家は、かねてより様々な手法を使って存在感を示してきた。
それらの事はある程度は英明などから説明されて、その上で灰川には恩を感じてるから四楓院の名前をガンガン使って名前を上げてくれと言われてる。
絶対に裏切らないと確約してくれたし、灰川としても安心して頼ってる。
「ところでですが灰川先生、最近は配信界隈にも黒い影が近寄ってるという噂もあります、充分に気を付けて下さい」
配信企業が増えて事務所所属に憧れる者が増えてる現在、悪質な配信事務所や裏社会の直接的または間接的関与が疑われる事務所があるのだという。
ライクスペースがまさにソレだった、悪質な買収により犯罪グループに乗っ取られ、使い捨ての金稼ぎの道具にされたのだ。後から分かった事だが、マネーロンダリングや会社の看板を使った詐欺行為なども働いてたらしい。
他にも大手の配信企業の所属者や元所属者に近付いて、黒い誘惑をして弱みを握ろうとする輩も居るらしい。ライバル企業を蹴落とすために卑劣な手段を使おうとする同業者も出て来る可能性がある。
「2社には灰川先生が関わる限りは安全をお約束します、何かあれば小さな事でも我々の後ろに控える方々が黙っておりませんので」
「あ、ありがとうございますっ…! え、えっとっ、じゃあ私は会社に報告に戻りますのでっ…!」
高籏はゾっとした、最近の自社の躍進は少なからず灰川が関わってると強く感じたのだ。
テレビ番組制作、誰もが知る企業からの規格外CM案件、次々と舞い込むオイシイ話、株価が高い位置で安定してる状況。
だが以前とは最も違うと感じてるのは『情報の速さ』だった。シャイニングゲートには業界内外の利害に関係ある情報が、一早く流れて掴めてる状況がある。
あの会社は水面下でブラックだから案件を受けるなとか、ある配信企業はシャイゲ所属者の引き抜きを狙ってるとか、ある投資家がシャイゲ株の高騰狙いで買おうと動いてるとか。
そういう情報が、経営方針にも関わる情報から、ライバル企業の動き、有力個人配信者の裏とか、小さな配信事務所の内部情報に至るまで、様々に流れて来るのだ。
恐らくは幹部には更に詳細で色々な情報がもたらされてる事は想像に難くない、商売には何事も情報が大事なのだ。それらの情報が今のシャイニングゲートの多大な儲けを支えてる。
その情報を掴める原因は灰川だと感じた、つい今ほどに誰だか知らない人物の情報を、灰川の関係者が詳細に掴んだのを目の当たりにした。恐らくは本当の情報なのだろうと感じたのだ。
それを探る力を持った人と灰川は通じてる、その人達が『灰川と通じてる限りは2社に恩恵を』と言ったのだ。
そこから灰川というコンサルタントが何故、渡辺社長たちに重宝されてるのかが分かったのだった。
「お疲れさまでした灰川さんっ、三檜さんもご協力ありがとうございました!」
「いえ、お気を付けて戻って下さいね。あとでシャイゲの事務所にハンコもらいに行きますんで」
「お疲れさまでした高籏さん、それと社長さん方に…あまり灰川さんに変なのと関りのある奴を近づけないよう、お願いして頂けると幸いです」
最後の三檜の言葉にゾっとしつつ、高籏は『はい、伝えておきます!』と言って灰川事務所を後にした。高籏も忙しい身であり、ここにいつまでも居れる暇は無いのだ。
その後はこれから料金とかどうするかなとか考えながらハッピーリレーの所属者マネジメント業務や、パソコン打ち込み業務を手伝たったりしてその日が過ぎる。
やっぱりコンサルタント業務は特に無く、雑用かマネージャー見習いみたいな感じで人手が足りないハッピーリレーに良い感じに使われてる。
集中して仕事をしてると夕方になり、終業の時間になった。そのまま帰宅の準備をして帰ろうかと思ってたら、スマホに着信が来た。
『誠治、明日に少しだけ時間もらえないか? 事務所に行って話がしたいんだが』
「タナカさん、どうしたんですか?」
『いや、実はな…ここでは言えない、明日に会ってからじゃないと言えねぇんだ』
「危ない事じゃないっすよね…? さっき危ない話が来たから、お腹いっぱいっすよ」
『いや、まあ危ない話ではないと思うんだが、とりあえず話だけでも聞いてくれないか? 何か不測の事があったら俺が対処する』
「分かりました、タナカさんの事は信じてるし、無茶な注文じゃなきゃ聞きますよ」
『すまんな助かる。ところで誠治、船の見学したいとか思った事ってないか? あるって言ってくれたら嬉しいんだが』
「え?」
最後に不穏な質問をされて、明日にタナカと会う事になったのだった。
何だか免罪符の時に会った連中の呪いがどうのこうの電話口で聞こえたような気がしたが、その事は灰川はすぐに忘れてしまった。




