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配信に誰も来ないんだが?  作者: 常夏野 雨内


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182話 コバコと桔梗と社長、あと灰川

「という訳で2人のデビューは1か月後って事になったから、トークのネタとかキャラ作りとか今まで以上に頑張ってな」 

  

「おう! 任せといてくれよな、灰川さん! オレもこれでシャイゲのVを名乗れるな!」  


「ありがとうございます灰川さん、ご期待に沿えるよう頑張りますので」


 市乃と来苑をデパートに連れてった翌日、灰川は朝方に起こされてシャイニングゲートに来て欲しいと言われ、こんな事になってる。


 何やら雲竜(うんりゅう)コバコと飛鳥馬(あすま) 桔梗(ききょう)のデビュー準備が一気に進み、説明をしたいと言われて来させられたのだ。


 シャイニングゲートは業界ナンバーワンの会社だけあって忙しく、土日も会社には誰かしらが居て業務を行ってる。灰川もシャイニングゲートに取次業務などをするために休日に何度か来た事があった。


「Vtuberのデザインも会社とイラストレーターの先生とかと話し合って、良い感じのが出来たんでしょ?」


「おう、まだ2Dモデルは完成してないけどなっ」


 雲竜コバコは高校2年生でシャイニングゲートのアカデミーに入って、灰川に選出されてデビューした。アカデミー生になってから日も浅くスピードデビューである。


 コバコは目上の人に対する口の利き方とかがなっておらず、会社も注意はしてるのだが直らない。天真爛漫な感じの子だというのが分かるから、そこも味だと思って放って置こうという事になった。


 しかし先輩などには軽口を叩くのは控えるようになっており、そこは成長した部分だろう。


「灰川さんはどのようなデビュー配信が良いと思いますか?」


「う~ん、桔梗さんは落ち着いた雰囲気だから、突飛な事はしないで良いんじゃないか?」


 飛鳥馬 桔梗は20歳の大学生だが、Vtuberに興味を持って個人勢で活動しながらシャイニングゲートのアカデミー生になった。


 個人勢では『ココーナ』というVtuber名で活動して登録者を10万人近く集めたが、アカデミー生となった際に活動停止&アカウント削除、そういう決まりになってるそうだ。


 現在は3000名以上くらいの視聴者登録数だが、今は企業勢も個人勢もVtuberが増えすぎて登録者が思うように増えないという事情もあっての数字だ。


 特にシャイニングゲートのアカデミー生は正規デビュー者と比べると登録者が非常に少なく、アカデミー生はシャイニングゲートの名前を使う事が許されて無いから、実力で視聴者を呼び込まなければならない。


「ここの所のシャイニングゲートVtuberってさ、一部を除いて性質が似た人が人気になる傾向があるから、そこに一石を投じてほしいって会社から言われてると思う」


「明るくて面白いこと言えて、可愛くて愛嬌があるみたいな感じだよな? 協調性もあるとか、それって悪いことかよ?」


「悪くないし良い事だと思うけど、このままだとシャイニングゲートのVtuberの形みたいなのが出来上がっちゃうんだってさ」


 今までの正規デビュー者がそういう感じで、実際にナツハやれもんがそういった性質で人気を獲得してるから、会社としてもそういう子達をデビューさせてきた。


 一人一人は性格も違うし配信で喋ったりする内容も違う、しかしどこか同じ性質があるのだ。話選びの向きだったり、作り出す雰囲気だったりと詳しく言葉にするのは難しい。


 その『どこか似通った部分』に変化を与えたいというのも本当であり、シャイニングゲートは今も全体を見据えて動いてる。


(まぁ、2人がブレイクするのは決まってるようなもんだから、別に良いんだけどさ)


 灰川の本音としてはそんな部分があり、コバコと桔梗の背後には四楓院が密かに付いてるから心配はない。


「デビュー打ち合わせも終わったし、昼飯でも食って帰るよ。それじゃ」


「えっ? 他になんかないのかよっ?」


「結構話したし、もう申し送り事項もないって、それに俺はシャイニングゲートの人間じゃないから細かい事は分かんないし」


「コバコちゃん、CM案件の事もテレビ番組の事も聞いたし、広告の事も聞いたんだから大丈夫だと思うよ」


 既に打ち合わせは2時間くらいやっており、灰川が言える事は全部伝えた。そもそも灰川はシャイニングゲートの詳しい仕事はしてないから、デビューに関して伝えられる事が少ない。


 しかし各種案件の取次業務などは灰川がやってる部分もあるから、全く知らない訳ではないという微妙な立場だ。


 そもそも渡辺社長は灰川の後ろに控えてるパワーをアテにして外部顧問を委託してるから、実質業務にはあまり関わってない。


 灰川は一見するとあまり役立ってないように見えるが、実際には外部顧問を委託してるだけで株価の安定が保証されるという特典があり、渡辺社長としては絶対に手放す事が出来ない存在だ。


 シャイニングゲートが灰川を裏切らない限りは、四楓院が財界にシャイニングゲートと四楓院の関係を匂わせてくれる。


 それが強い効果を発揮して、何かがあった時は後ろを持つグループが助けに入るという『株価に対する暗黙の保険』を匂わせてるから、投資家が安心して投資できるという状況が作られてるのだ。


「灰川さん昼飯食うの? 奢ってくれよっ、オレ金ねぇんだよぉ~」 


「コバコちゃん、そんなの失礼だよ。私もお財布落としちゃってお金ないけど」


「うわっ…財布見たら俺も金ねぇや、口座にもねぇしな。3人でハッピーリレー行って、配信ルームのカップ麺でも食うか?」


「えっ!? ハピレさんってカップ麺がタダなのかよっ? 行こうぜ灰川さんっ!」


「問題になったりしませんか? 出来れば3つくらい持って帰りたいんですが」


「コッソリ行こうぜ、背に腹は代えられない! バレなきゃ問題にならねぇさ!」 


 まだデビューしてないコバコと桔梗はお金はなく、灰川も金銭的に余裕がある訳じゃない。しかも桔梗は不幸体質で財布を落としてしまったらしい。


 3人で同業他社の社屋に忍び込んで食料を調達しようとか大問題な事を言ってると、打ち合わせルームの外に声が漏れてたらしく、話を聞いた誰かが入って来た。


「君たちは恥というものを知らないのか…? お願いだから止めてくれ…」


「うわっ! 渡辺社長! いつから聞いてたんですか!?」


「うげっ!社長だ! 聞かれちまってたぁ!」


「おはようございます代表、聞かなかった事にしてくれませんか?」


 まさかの渡辺社長が通りかかり、3人のハッピーリレーのカップ麵強奪計画は頓挫してしまった。


「灰川さん、前から言おうと思ってたんだが、今の灰川コンサルティング事務所に支払ってる金額は少なすぎる。せめてもう少し多い金額を受け取ってもらえないかい?」 


「そうっすかね…まぁ、そうなんですかね」


「灰川さんって幾らくらいもらってんだ? 外部顧問とかコンサルタントってスゲェ金額もらってるイメージあんだよな」


 灰川は金欲に溺れる事を恐れていて多額の報酬は受け取らない、しかし灰川を逃がす訳にはいかない渡辺社長からすれば、今払ってる金額では不安が大きい。


 報酬が少ないとイザという時に未練もなく去られてしまう可能性がある、安い金額で飼い殺しにするという方法も無くはないが、それをやったら灰川の背後に構えてる存在から自社の株券を紙切れに変えられてしまうだろう。


 そもそも渡辺社長は自社をブラック企業にするつもりなど無いし、灰川にせめて後ろ盾から睨まれない金額を払いたいと考えてる。


「灰川さんが受け取ってる金額はシャイニングゲートとハッピーリレーを合わせて月に25万円だよ、それ以上は灰川さんは受け取らない。その他の費用は別だけどね」


「25万円って安いのか? オレよく分かんねぇや」


「灰川さんがどんな仕事をされてるか分かりませんが、渋谷で自営業をしてる中では安いんでしょうか」


 25万円だと生活は出来るし、安アパートに住んでるから余裕は多少はあるだろう。しかし灰川は最近はスロットとかで負けて金がなかった。


「灰川さんがシャイニングゲートにもたらしてる恩恵を考えたら、現状だと安すぎるんだ…恩恵を受けさせてもらってるのに悪いと感じてる」


「う~ん、どうするべきなんかなぁ…」


 灰川がシャイニングゲートに与えてる恩恵は『大企業とのパイプ』『株価の総合的安定』『新機軸進出への所属者の地位確保』など、様々な利益がある。


 これを自分たちだけで築こうとした場合、金銭はもちろんだが長い年月が必要になる。敏腕営業を抱え、株価変動に対応した経営をして、各業種への信頼とコネ作りに奔走しなければならなくなる。しかも失敗する確率だって高い。


 大企業からの依頼案件が素晴らしい条件で来るのも、会社に有力スポンサーが付いたのも灰川の恩恵による所が大きい。現状ではオイシイ仕事が向こうからやって来る状態だ。


 ナツハが重大発表があります!とSNSなどでアナウンスして一時的に株価が上がり、衣装がちょっと変わりますと言ったら株価が下がるなんて事が今は無い。


 以前に盛大に失敗した芸能界進出も、今回は失敗の気配はない。


 シャイニングゲートは所属者に自由に伸び伸びと配信をさせる方向性の企業ではあるが、それを保つのは難しく、灰川が外部顧問になる前は社内や株主総会で『Vtuberどもに株価を意識した活動をさせろ!』という意見が強まってたのだ。


 投資家は、特に大口投資家は会社が好きで株を買う訳じゃなく、儲けたいから株を買う。それらの発言力は強く、会社としても無視できない。


 そういった事情は渡辺社長は所属者に話す事はないが、経営者としては苦労の連続で、そこを薄めてくれてる灰川の存在は非常にありがたいのである。


 才覚ある経営者であっても、下層とはいえ上場企業となれば全てを勝手には決められない。今の灰川の名前から得られる実質的と精神的余裕を計算したら、現状の金額は安い。


 ゲームで言えば灰川はシャイニングゲートに『弱体化と行動制限無効・全ての行動の成功率とクリティカル率を超大幅アップ』という強化ステータスをもたらしてるのである。


「灰川さん、お金がダメなら有価証券での流動保有資産として支払うとかも考えたんだが、どうだい?」


「投資信託とかって事ですか? 金融商品ですからどうなんでしょうかね…でも金は欲しいしなぁ…」


「少なくとも纏まった貯金を出来るくらいには稼いだ方が良いよ灰川さん、その方が心配も無くなるからね」


「う~ん、分かりました。もしかしたら誰かを雇うとかあるかも知れないっすもんね、そうします」


「桔梗さん、リュウドウホユーとか闘志神託ってなんだ?」


「私も分からないけど、運が上がる何かだと思う、きっと」


 やはり金銭的な余裕が欲しいし、実は最近は業務が忙しくなって来て1人じゃキツイかもと思い始めてた所だ。


 思ってたより事務仕事も多いし、入力ミスなんかもあって時間が取られる。特に取次業務の電話が多く、頭が回らなくなる時とかもあって、どうしようか考えてた。


「とりあえず食事にでも行こうか、僕が奢るからハッピーリレーさんに迷惑を掛けたりしないでくれ」


「良いんですか!? ご馳走になります!」


「いよっ、さすが社長! 太っ腹だね!」


「ありがとうございます代表、3日前に財布を落としてからモヤシしか食べてなかったので助かります」


 そんなこんなで4人で食事に行くことになり、シャイニングゲートのビルから出て、せっかくだから普段は行かない駅の裏側の方で良さげな店を探してみようという事になった。




 普段は行かない駅を挟んで裏側の地域に来ると、こちらがわはシャイニングゲートがある地域よりビジネス然としてる印象だ。


「こっちってあんまり来ねぇんだよな、灰川さんてこっち来たりすんの?」


「俺は仕事でたまに来るかな、案件の打ち合わせでこっち側の喫茶店を指定する会社とかあるしさ、でもあんまり来ないかもしれねぇ」


「僕もあまり来ないな、こっちには用もないしね」


「私は来るの初めてですね」


 渡辺社長と灰川はスーツ姿で、コバコと桔梗は私服姿だ。


 コバコは赤のTシャツとジーンズのボーイズファッションだが、ポニーテールヘアだから女の子というのは分かりやすい。


 以前に金髪にしようと思ったそうだが学校で禁止されており、髪の色は少し茶色っぽい明るい髪だ。


 桔梗は上下ともにカラーは黒でロングスカートだが、目立つ感じではない。髪の毛は深い黒色で、夜中に遭ったら幽霊に見えてしまいそうな感じがする。瘦せ型の体型なのもそれっぽい。


「おっ、本場江戸前麻婆パスタだって、今時だなぁ」


「面白れぇな! 行列も出来てるじゃねぇか!」


「どの辺が江戸前で今時なんだろう…」


「私はどんなお店でも良いですよ、出来たらお持ち帰りメニューもあった方が嬉しいです」


 結局は空いてる喫茶店に入り、4人で適当に注文して食事の到着を待つ。


「ところでコバコと桔梗はどんな配信を~~……」


 渡辺社長がそんな会話を切り出そうとした所、近くの席の客から会話が聞こえて来た。


「最近ってネットもテレビもマンネリ気味だよな、新しい物がないって言うのかさ」


「そうだよな、お笑いとかドラマとか、配信者とかVtuberとか新しさは無いもんな」


 近くに座ってた若い男の2人組の話が聞こえて来て、その中にVtuberの話も含まれてたから4人の耳がそっちに向かう。


「お前ってVtuberとか今は見てないの? 前は結構見てたじゃん」


「シャイニングゲートとか見てたけどさ、Vtuberって配信が長いし2時間も3時間も見てられる時って限られるからよ、仕事だってあるし」


「個人Vとか見てなかった? 一時期は見てたよな?」


「個人なぁ、あれはあれで当たり外れがデカイんだよな。スパチャしねぇ視聴者の扱いが悪かったり、スパチャしたらもっとやれみたいな雰囲気出す奴とか居るし」


 時間に関しては仕方ないし、シャイニングゲートみたいな大手は途中から見ても面白いと彼は言う。しかし面白さに新しさがなく、睡眠時間を削ってまで見る程には熱量が無くなったと語った。


 個人勢は当たり外れが大きいのは普通の事で、それ自体は別に良いと語る。しかし中には配信の雰囲気が悪かったり、自分に合わない配信も多くて今はVtuberは見てないという。


「やっぱ何か新しいもんが欲しいんだよな。ナツハちゃんとか竜胆れもんとか今でも面白いと思うよ、でも新しいもんが見てぇんだよな」


「そういうもんか、でも今さら新しい物ってのも難しいよな」


 そんな会話をしてから彼らは店を出て行き、4人が残されて食事をしながら会話する。


「あれも視聴者の飾らない意見の一つっすよね、俺もハッピーリレーから頼まれて市場リサーチとかしますけど、似たような意見の人は多いみたいですよ」


「新しい物か…簡単に言ってくれるけど、簡単じゃないんだよな…」


「オレらも新しいことしようって思ってるけどよ、大体の事って他のVとか配信者がやっちまってるしな~」


「私も何か新しい事をって思ってますが、そんなの簡単に浮かんだら苦労しないですよね。あっ、コーヒーに塩いれちゃった…」


 視聴者は新しい物を求めるが、そう簡単に新しくて面白い物など見つかりはしない。


 面白ければ新しくなくても構わないという人も居るが、同じ事を継続して面白くし続けられる人なんて稀だ。それをやるためには専門的な知識とかも必要だろう。


「停滞の雰囲気が出てる現状から脱却しようと思って芸能界進出をするけど、やっぱりVtuberの本質の配信活動に新しい物を吹き込まないとは考えてるんだ」 


「配信で新しい何かですか、難しいっすね。思いつく限りのことなんてやっちまってるでしょうし」


「オレは配信で物理シミュレーターやろうって思ってたんだけどよ、相当に形を考えろって社長に言われたぜ」


 Vtuberの配信だとゲームや雑談の配信、アニメや映画の同時視聴配信がすぐに思い付く。後は朗読配信とか絵を描く配信とかだろうか。


 変わり種だと料理配信とか模型を作る等の制作配信、市乃や史菜がやってる勉強配信、その他にも色々とあるだろう。


「2Dじゃなく3Dモデルでの配信なんかも考えた事はあるけど、どうしても手間が掛かるし人員も必要だからね。それに3Dモデルで出来る事って、意外と限られるからなぁ…」


 渡辺社長が言うにはイベントなどでやる3Dモデル配信は演者の身体的負担も高く、しかも空間が限られてる上にVtuberと合成背景しか映せないから、出来る事が限られるらしい。


 ダンスや歌は出来るし、漫才なども出来るだろう。しかし物を使った何かをするのが難しく、実質的に演者しか動かせないし空間が限られるので制限が大きい。


 Vtuberというのは良くも悪くもデフォルメされた人間であり、動けるという環境を与えられた場合には、普段の配信とは持ち味が変わってしまう。


 これがもし限られた空間ではなく、それでいてVtuberという世界観を壊さない形を取れるのであれば話は変わってくるかもしれない。


 そんな都合の良い何かがある筈もないし、シャイニングゲートは技術部が色々と試行錯誤して、業務と並行しつつ新しい何かを開発しようと努力してる。


「あっ、そういえば俺、前に良い感じのカメラもらったんですよ、何かVtuberに良い感じのカメラとかって聞いてますけど。ちょうど今持ってるし、少し見てみます?」


「普通の動画カメラに見えますけど、少し大きいですね。何がVtuberに丁度良いんですか?」


「それがよく分かんないんだよなぁ、桔梗さん撮らせてよ? せっかくだから美人さん撮りたいしな~」


「ならオレも撮って良いんだぜ? 俺も割とイケてるだろ?」


「灰川さん、少しなら構わないけど、流出させたりしないでよ?」


「大丈夫ですって、そんな事しないっすから。 ん? なんだこのVtuberモードって? まぁ良いや、押してみようかな」


 灰川が何の気なしにハンディカメラに付いてた『Vtuberモード』というボタンを押したら。


 「「!!?」」


「どうしたんだ灰川さん、社長? オレと桔梗さんが美人過ぎてビックリしたってかっ? にししっ」 


「何かありました? カモメにカツラを持ってかれた私の父みたいな顔をしてますけど」


 カメラが撮影した映像は折り畳み可能のサイド画面に映されており、そこには何と。


「コバコと桔梗が…旧2Dモデルで撮影されてる…!」


「マジか…背景とか食器もバーチャライズされて映ってるっすね…。あ、コバコの口元にナポリタンのケチャップが付いてる…」


 このハンディカメラはOBTテレビの富川プロデューサーこと、国家超常対処局のサイトウが作ったカメラだ。彼はVtuberが好きな工学ギフテッド、以前にもパソコンをもらった事がある。


 このカメラはデータを読み込んだ対象を自動的にVtuberとして撮影してくれる機能を持ったカメラで、背景などもVtuberに合わせてリアルタイムで仮想映像化処理をしてくれる機能が付いてる。


 その機能の精度は凄まじく、雲竜コバコと飛鳥馬 桔梗がしっかりとVtuberとして動いており、コバコの口元の汚れなんかも再現されてる。桔梗のモデルの長い髪の毛の動きなんかもしっかりしてる。


 背景も不自然になる事なく、風で動いた喫茶店内の観葉植物の葉や、桔梗が飲んだ水の揺れなんかも素晴らしい精度で仮想映像化されてた。


 このカメラはVtuberを写せば周囲も含めて完璧に仮想映像化処理してくれる品であり、正に『Vtuberに良い感じのカメラ』だった。もちろん現実にVtuberが出る訳ではなく、映像としてだ。


 どんな技術を使ってるのかは知らないし、どんな機能でVtuberを識別してるかは知らないがボイス識別っぽい感じがある。どうせ前のパソコンみたく解析不可能なんだろう。


 しかし少なくともシャイニングゲートとハッピーリレーのVtuberのデータはアカデミー生なども含めて入ってるようで、その例が目の前に映されていた。



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