0 世界とは何か
夕焼けが鮮美に色づく午後4時、学校からの帰り道。
萌歌はふと考えついた事を、幼馴染の美奈子に話す。
「ねぇ美奈子。この世界って何だと思う? 何時も通りの帰り道。何時も通りの夕日。たまに雨は降っても、ちょっとすれば元通り。この世界は、"必然"みたいなのが多すぎるんじゃないかな。」
「……知らないわよ。何でそんな事を私に聞くの? 今読書中だって見て分からないかしら。萌歌、私この世界よりもあなたの頭の方が気になるわ。どうして人の気持もくめないのか、詳しく教えて頂戴。」
「ごめん。いや、悪かったけどさ……それも含めてだよ。全部、この世界はきっと何かがおかしい。働いている人も、真面目に勉強している人も。みんなこの世界が間違ってるって疑わない。これが”普通”だって、息を揃えて……。まるで、踊らされたマリオネット。」
「何馬鹿言ってるのよ……。周囲がマリオネットなら、私達も同類ってことになるわよ。じゃあ、その話をすることも全て踊らされた手の内って事で、この話は終わりでしょ? 何か違う?」
「うん、その通りだよ。やっぱり美奈子はすごいな。私なんかじゃまだまだ……全然。」
「いや、別に自分を卑下する必要なんて無いわよ? 今回は読書中に邪魔されたからちょっとムカついただけで、あなたの考えは決しておかしくなんてない。この世界を疑えるのは凄いことよ。」
美奈子は漆黒に輝くロングの髪を靡かせ、片足を上げてひらりと回る。
舞い散る桜の花弁と合わさってすごく幻想的。
”綺麗”という感情が、萌歌の体を埋め尽くした。
ぱっとしない表情を浮かべて唖然とする彼女に、美奈子が話し出す。
そうして2人の時間はまた、動き始める。
「さっきの事なのだけれど……。萌花、貴方は”運命論”って知ってる? この世界の進む道は全て決まっていて、私達の選択ですらもそれは全部決められたもの。ってやつ」
「うん、知ってるよ。でもそれって、ちょっと疑わしいんだよね。だってそれが運命って言うなら……私達は”運命を作った人”の為に生きている事になるじゃん? ……あ、だからマリオネットなのか。ならこれってーー」
「その辺でやめておきなさい。思考する事は自由だけれど、あまりにも身勝手に考えすぎよ。確かに、その可能性はあるのかも知れない。でも、それは他人の人生を否定することに等しい。もちろん、私を含めての……ね」
「そっか、この考えは、今日も頑張って生きた私達自信を否定することになるのか。教えてくれてありがとう、美奈子。」
「はいはい、わかったなら気をつけることね。じゃあ、私はこっちだからもう行くわ。また明日。」
そうして、美奈子と萌歌は別々の道へと歩んでいった。
家についてからお風呂の中で、美奈子は今日はなした事について思い耽る。
「この世界とは、ねぇ……。あの子も、そんな事を考えるまで成長したのね。考えてみれば面白い事象だけれど。ふふ、あ〜、だからこそこの世界は楽しいわ」
この時、彼女らは知るよしもなかった。
今日話した何気ない会話が、2人の……いや、この世界の運命を変えてしまうことを。
どうも、神無月です。
はじめましての方ははじめまして。
こんにちはの方はこんにちは。
今回のお話はいかがだったでしょうか。
といってもまだ始まったばかりでなにもわかりませんよね。
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では、また会いましょう
お疲れさまでした