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無能才女は悪女になりたい~義妹の身代わりで嫁いだ令嬢、公爵様の溺愛に気づかない~(WEB版)  作者: 一分咲
一章

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33/264

33.賭け事に勝ってしまいましたが

「単刀直入に聞くんだが、私は君たちの縁談の経緯を噂通りにしか知らなくてね。エイヴリル嬢、君の口から説明してもらってもいいだろうか?」


 コツン。


(そ……それは、仮面舞踏会でやらかしたことをお話しすればいいのでしょうか……)


 あいにくだが、エイヴリルは仮面舞踏会に行ったことはない。けれど、コリンナのように品のない遊び方をしているのは一部だということぐらいはわかる。


 それぐらいの知識で、目の前の王太子殿下を欺けるのか。いやそんなはずはなかった。


 コツン。コツン。コツン。


「私は、少し夜遊びがすぎたのです。その噂が悪女好きなディラン様のお耳にはいり、縁談のお話をいただきました」

「その話はアレクサンドラにも聞いたな。ディランが悪女好きなんて意外だった」


 よかった。お茶会で、アレクサンドラにディランが好きな女性のタイプは『悪女』だと伝えたことが功を奏したようである。


「ああ見えて、ディラン様は露出多めのドレスを着た女性がお好きなようです。夜遊びも一緒にお出かけなさりたいタイプなようで、仲良くさせていただいています」

「仲良く」


「はい、先ほどのお話ではお手紙も持ち歩いてくださっているようですし。悪女の私と悪女が好きなディラン様は仲のいい夫婦になれるかと」


 ローレンスの端正な顔に、瞬きが目立ちはじめた。


「……なるほど。君のような女性は、実は私も嫌いではないかもしれないな」

「!? なんてことを。お気を確かに」


 ここにいるのが本当の悪女・コリンナでなくてよかった。アリンガム伯爵家が跡形もなく消え去らずに済んだことに、エイヴリルは心の底からほっとする。


 コツン。コツン。


「しかし、私の婚約者はそうは思っていない様子でね。一応、この件に関しては()()()のはずなんだが、君のことをとても気に入っている」


 全然よくなかった。


 コツン。コツン…………


(確かに、私――()()()()()()()()、に元婚約者との関係を壊されたアレクサンドラ様が仲良くしたいとおっしゃるなんて、どう考えてもおかしいもの)


 コツン。コツン。コツン…………


 いつの間にか、クリスとメイドのグレイスは席を外していた。駒がチェス盤の上を進む音だけが室内に響く。


(アレクサンドラ様は私がコリンナではないと秘密にしてくださっているけれど……これ以上はもう)


 さすがに、嘘はつけないだろう。


「……詰みました」

「この場合、本当の意味で詰んだのは私の方だな」


(……え?)


 ローレンスが苦笑する声が聞こえて、エイヴリルは飛ばしきっていた意識を取り戻した。チェス盤には、あと一手でチェックメイトできるキングが残っている。


「えっどうしてこんなことに!?」

「アレクサンドラが言っていた通りだな。手加減はいらないタイプのようだ」


 ローレンスは「私の負けだ」と言いながら、封蝋印が入った箱をエイヴリルに渡してくる。


(ちょっと待って……! こんなことある!?)


「お待ちいただけますか。ええと、多分これは何か反則があって」

「反則をした悪女が口にする言葉じゃないな。却下だ」


 何が楽しいのか、ローレンスはくつくつと笑っているがエイヴリルはそれどころではない。


(だって、この印章はディラン様がローレンス殿下に預けていたとても大切なものなんでしょう……? それを受け取れないわ)


 エイヴリルは目を瞬きチェス盤と箱とローレンスを順番に目で追う。ローレンスはそんな様子すら楽しむように、聞いてきた。


「エイヴリル嬢にディランとの縁談の話が行ったとき、ランチェスター公爵は『好色家の老いぼれじじい』という噂だったと思うんだが。それを聞いてどう思った」

「ええと、私が聞いたものよりもすごい二つ名ですね、それは」


「はは。実際そうだったからな。あのクソじじいのせいでディランの人生はめちゃくちゃにされたようなものだよ」

「……」


 ディランから聞いたことのない話に、エイヴリルは目を伏せた。


(これは……何の覚悟もなしに聞いていいお話ではないような気がするわ……)


「だから、婚約をすると聞いて心の底から驚いたんだ。あの、家族になんの希望も持っていないディランが妻を迎えるというのだからね。この印章は随分前にディランから預かったものだ。君にもらった手紙を手帳に挟んでいるのを見て、返すべきだと思った」


「ではお返しするのなら、ディラン様に」

「いいや。これは君からディランに返すといい。あいつは詳しい事情を話していないようだ」

「あの、でも」


 これは、ただの契約結婚の相手にすぎない自分が踏み込んでいい話ではない。エイヴリルは固辞しようとしたが、ローレンスは聞いてくれなかった。


「さぁ、そこにある大量の焼き菓子を皆で食べようか? アレクサンドラとディランの話も終わった頃だろう」


 がらりと明るい声色になったローレンスはそういうと、テーブルの端に置いてあった鈴を鳴らしてメイド達を呼んだ。静かだった室内に人の気配が戻ってくる。


 遠くからディランたちの声が聞こえてくる中、エイヴリルは肩を落とす。


(詳しい事情も何も、私たちは契約結婚なのです……)



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