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無能才女は悪女になりたい~義妹の身代わりで嫁いだ令嬢、公爵様の溺愛に気づかない~(WEB版)  作者: 一分咲
三章

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1.風変わりなドレスが届きました

 エイヴリルはディランと共にランチェスター公爵領に滞在中だ。それは王太子ローレンスからの依頼を受けてのものである。


 麻薬売買の仲介をしているのではと怪しまれていた愛妾の一人、テレーザが追い詰められて二階の窓から飛び降り脱走した日からまもなく一週間になる。しかし彼女はまだ見つかっていない。


 一方、ランチェスター公爵邸には二人の高貴な来客がやってきていた。王太子のローレンスとその婚約者アレクサンドラである。


 麻薬騒動のあれこれに伴いわざわざ王都からやってきた二人だが、外での姿とは正反対にここではびっくりするほどくつろいでいた。


「ディラン、おまえのクソ親父の女の趣味はどうなってるんだ? 窓から飛び降りて干し草をクッションに着地し、そのまま俊足を披露し誰にも捕まらずに逃走するなんて、とんでもない度胸と運動神経と運に味方された人間しかやり遂げられることではないだろう。こんなことができる女は私が知っている限りあと一人しかいないな。女の趣味については親子で似ているんじゃないか……くくっ」


(どなたのことでしょうか)


 広いサロンには応接セットがいくつか置かれている。仕事の話をしそうなディランとローレンスを気遣い、エイヴリルはアレクサンドラとともに少し離れた場所でお茶を飲んでいたはずなのに、なぜかローレンスに見られている気がする。


 とりあえずにこりと微笑んでみれば、ローレンスにひらひらと手を振られてしまった。どうやら振る舞いとしては正解だったらしい。が、解せない。そしてディランとローレンスの会話は続く。


「……返す言葉もない」

「あはは。おまえが反論してこないなんて珍しいな。そうやって凹んでいる姿を見るのは久しぶりだ。いつも年下っぽくしてればかわいいものを」

「…………」

「本当に静かだな。ふははははははは」


 ローレンスが上機嫌で笑っているのを、エイヴリルの向かいに座るアレクサンドラがドン引きという目で見つめていた。


 その光景に、エイヴリルはなんとも言えない気持ちになる。


(ディラン様はやっぱり凹んでいらっしゃるのですね……)


 テレーザが脱走した直後こそディランはわかりやすく落ち込んでいたが、今では気持ちを切り替えて捜索にあたっているようには見えた。


 だが、古くからの友人であるローレンスから見ると、かわいいといって揶揄いたくなるほどに参っているらしい。エイヴリルにはあまり疲れを見せることがないディランだが、自分にも何か手伝えることはないだろうか。


 そんなことを考えていると、黙ったままのエイヴリルまで凹んでいると勘違いしたらしいアレクサンドラが優しく声をかけてくれる。


「エイヴリル様。あの男――ローレンス殿下は本当に性格が歪んでいますから。ディラン様もおわかりとは存じますが、どうかお気になさらないようお伝えくださいね。エイヴリル様も気にすることはありませんわ。どう考えても不幸な事故ですから」


「はい。ありがとうございます、アレクサンドラ様」

「エイヴリル様は元気づけて差し上げるとよろしいですわ」

「かしこまりました!」


 なるほど、やはりそういうことのようだ。


(この前はお茶会を開いてディラン様に休息を取ってもらいましたが、今度はどんな案がいいでしょうか……!)


 納得し頷くと、アレクサンドラはなぜか意味深に微笑み妖艶な仕草で手をあげた。すると、部屋の隅に控えていたアレクサンドラ付きの侍女がラッピングされた箱を抱えてやってくる。


「こちらをエイヴリル様に差し上げますわ」

「これは……?」


 エイヴリルは早速受け取った箱を開けた。中から出てきたのは、真っ白いレースが丁寧に編み込まれた布だった。ベースにはシルクチュールが使われていて、向こう側が透けて見える。


 箱の中から布を持ち上げて明かりに透かしたエイヴリルは首を傾げる。


(これは……もしかしてウエディングドレスに合わせるヴェールでしょうか? それにしてはずいぶん小さいような……)


「それはうちの商会で人気のドレスですわ。特別に肌触りがいい生地を使用した入手困難な品ですのよ。わたくしもたまに着ていますわ」

「こっ……これがドレス!? 寒そうです」


 そういえば前にもこんなことがあった。あの時は、アレクサンドラが背中に布がない悪女向けのドレスを持ち込んでくれたのだった。


 ちなみにそれは実家から連れてきたメイドのキャロルによってコリンナに送られ、コリンナは甚く気に入ったらしかった。


(悪女らしいものを確実にお選びになるアレクサンドラ様のセンスは素晴らしいですね)


 この謎のドレスは自分に送られたのだ、という事実からひとまず目を逸らして感心するエイヴリルに、アレクサンドラは艶かしく笑う。


「このドレスは、夜にベッドの中で着るものですわ。私もたまに着ていますの」

「!?」


「「ゴホッ」」


 離れたところで会話をしていたディランとローレンスは二人揃って紅茶が気管に入り、むせたようだった。


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