家族が突然出ていきました。実家の商売の秘密を知って帰ってきましたが、もう遅い。こちらは別に困っていませんので。~プロローグ~
お読みいただきありがとうございます。
連載を想定した小説のプロローグです。
家族が突然出ていきました。
何を言っているんだとなるでしょうが、実際に起こった出来事です。こんなことを突然言われてもなんのことやらわからないでしょう。
それでは順を追って説明させていただきます。
まず自己紹介からいたします。
私、タリュート王国冒険者ギルドカニエル支部副ギルド長、デューク騎士爵グレン=デュークと申します。長たらしい肩書ではございますが、これといって特筆することのない35歳の角が生えた男でございます。
25まで冒険者をしておりまして、結婚を機に引退し、冒険者ギルドで職員にスカウトされ、地道に働き、10年経った今ではなんとギルドのNo.2になりました。妻の連れ子も17と15になりましたがまだ成人前、これからも家族を養っていかねばなりません。
されど、タリュート王国の片田舎、魔の森に面した辺境都市カニエルのギルドでNo.2だからといって稼ぎが格段に良いというわけでもなく普通の職員と比べても1.5倍ほど。辺境での安定した生活には十分な稼ぎではありますが、家族4人ちょっとした贅沢もできやしないというのは人生において面白みに欠けるというもの。ちょっとした裏技で稼ぎを増やしてこれまでやってこれました。
結婚して一年もしたころには妻の8歳と6歳の連れ子は二人とも手がかからなくなり、余裕ができましたので副業を始めた次第です。これが思いのほかうまくいきまして、妻の両親と協力して成功させることができました。
家族には副ギルド長としてのボーナスだなんだとごまかしておりました。大黒柱が本業で稼げないから副業をしているなんて口が裂けても言えません。そこは義両親にも口止めをしております。
裏技なんて言っていますが、悪いことでも何でもなくて、冒険者ギルドでも認められた副業なんです。
まあ、それは置いておいて、今日も今日とてお仕事でございました。これで、副ギルド長である上に騎士爵なんてものを持っているので、そちらの仕事もございます。
ギルドでは受付嬢や平職員では対処が不可能なお客様の相手をすることが私の業務内容でございます。
この世界にはギフトと呼ばれる15で一つ授かるありがたいものがあります。これは例外なく皆がもらえる神様の贈り物で、言わば一つのターニングポイントなのです。
武術を授かれば、戦いを生業にして冒険者や傭兵、魔法を授かれば、それを伸ばして冒険者や兵士、宮廷魔法使いなんて選択肢もあり得ます。また、生産職系統だと、鍛冶や裁縫、料理や建築などいろいろな選択肢があります。
私も運よく魔法などを授かりましたので、それを活かして冒険者をやってきたわけですが、命をかける職業においてギルド職員の助けは本当にありがたいものでした。そこで今度は自分が冒険者を助ける側になろうと思い立ちギルドの職員となりました。命の危険の少ない生活に憧れたのも小さくない理由でした。
そんなわけで、冒険者ギルドにはギフトの力で調子に乗った若者たちがたくさん訪れます。中には礼儀正しい気持ちのいい若者もいるのですが、皆ギフトを得て強くなった気がしてしまうものです。早くギフトを発動させたいと思っているんでしょう。ほとんどがそれを向けるのは、魔の森の魔物やダンジョンの魔物ですが、中にはいるんですよ。誰でも何でもいい、なんて言う奴らが。
そういうのが冒険者のイメージを形作ってしまうのもよくありません。なので容赦なく対処させてもらいます。
今日もそんな若者がおりました。
受付嬢に向かって丁寧にしゃべってはいますが、どうにも身の丈にあった依頼ではないために受注拒否されていることにイライラしているようです。だんだんと口調も高圧的になってきているし、今にも武器に手をかけんばかりの勢いになってきました。
話を聞いていた限りでは、どうにも今日15歳を迎えて近くの村からダンジョンに出稼ぎに来たみたいです。
出稼ぎに来るのはいいですが、朝から騒ぐのはやめてもらいたいものです。
あ、武器を振り上げました。彼の武器は幅広の大剣のようなので、大方、授かったのは大剣術や剛力などのギフトでしょうか。冒険者にも多いですが、それくらいだったら、種族的な優位性などでできる者も少なくありませんので、決めつけるのはよくありません。
いよいよ振り上げた武器を下ろそうとしました。しやがりました。
しかし次の瞬間、勢いよく振り下ろそうとしていたはずの彼はなぜか剣ごと弾かれていました。
なぜでしょうか。
はい、私でした。
これでも私は副ギルド長なわけで、こういったことの対処が主な仕事です。受付嬢のボディーガードといったところですね。
私ともう二人の副ギルド長で持ち回りで24時間体制を取っています。私以外は経験豊富な勤続20年の大ベテランですので、夜に起き続けるのは厳しいお年です。ですので私の割り振りは主に夜の時間帯です。
本来夜が勤務時間の私ですが今日のように、昼間も受け持つことがあります。正直こんな時のトラブルが一番、面倒です。
さて話を戻しましょう。面倒なので、私が弾きました。八つ当たりも十分含まれていますが、逸脱していないので問題ありません。
弾かれた冒険者は気絶してしまっています。まあ、これも教訓だということで勘弁してください。一応受付嬢も心配なので声をかけましょう。
「大丈夫ですか?当たる前には防いだとは思いますが。」
「はい、ありがとうございます副ギルド長。ケガはしておりません。」
どうやら無事なようでよかったです。ホッとしていると周りからざわざわと声が聞こえてきます。
きっと、昼間からギルドに私がいるのが珍しいんでしょう。こそこそとしゃべっています。
「おい、あれって夜の副ギルド長だろ。この時間って朝の副ギルド長の時間じゃなかったか?」
「ばっか、今日は朝の副ギルド長が休みだから夜の副ギルド長が続きで常駐するって話だったろ。それにしても不運な新人だな。癇癪起こさないでお勧めの依頼受けておけばいいのに。」
私も本当にそう思います。さすがの私でも勤務時間が夜から朝まで具体的には21時から翌13時までの16時間となると疲れるので余計な体力を使わせないでほしい。
まあ、残業代が破格なので不満はありません。私も家族がいる身ですので。
そんな感じでギルドはいつもの空気を取り戻していきます。完全に終わった話になりかけたころ、先ほど弾き飛ばした少年が起き上がりました。
気絶といっても大したことはないことがわかっていましたが。軽傷ですらなかったようです。
すぐに立ち上がって剣を構えています。なにをしているのでしょうか?
まだ暴れるつもりなんでしょうか?それとも何らかの理由で武器を見せてくれているとか?
うーん、わかりません。いっそのこと直接聞いてみましょうか。
「そこな少年、なにをしているのでしょうか?ここはギルドの中です。武器を振り回すのはよくないですよ。」
「うるせぇ!今のはなんだ。見えない攻撃を受けたぞ!ゴースト系の魔物が町に侵入しているはずだ。なんで誰も対処しようとしてねえんだ!」
その少年の言葉にギルド内にいたほとんどの冒険者が笑いだします。
「だーっはっはっはっは、おもしれーぞ、少年、ないすだ。いやー、ただのいきがったガキじゃなかったみたいだなぁ。」
「おうよ、そいつはちげえねぇ。こいつはただのガキじゃねえなあ」
「ただのガキじゃねーな。今日はギルドにいてよかったぜ、話の種をゲットできたしよ。」
少年が何やら照れたような顔をしているのですがかわいそうです。
冒険者たちは口々に少年を「ただのガキじゃない」といいます。私も冒険者だったころは同じ反応をしたでしょう。
しかし今はギルドの職員です。行き過ぎた冒険者に注意をしておきましょう。
「みなさん意図的に誤解を与えるようなことを言ってはなりませんよ。彼はどうやら今日15になったばかりの様ですから、戦闘というものをしたことはないでしょうし、魔力察知などの技術は会得していないでしょう。そう馬鹿にしてはいけません。」
私の言葉に冒険者の皆さんは少年を嘲るようなことはやめてくれました。しかし、今度はなぜか少年が起こりだしてしまいました。
「俺を馬鹿にしてるだと?てめえ、ふざけんじゃねえぞ!意味わかんねえこと言いやがってこっちは今日ギフトをもらって最強になったんだ!ぶっ飛ばしてやる。」
少年はそう言って私に斬りかかってきます。普通に考えてそれはやってはいけないことだと思いますがね。実際潰すことに重きを置いている大剣であっても刃はあるんですから。
事ここに至って他の冒険者の皆さんは私たちのやりとりに興味深々の様で、注目しているようです。
少年の件は素手で受けるのは無謀だとわかるくらいには大きいです。先ほどの様に弾いてもいいですが、野次馬がいるため事故が起きる可能性があります。
ここは別の手ですね。別の手といっても魔法を使うのは同じことですが。
さて、と頭の中で魔法を構築します。これも一応、高等技術なのでできる人物が限られていますが、知る人は知っている技術です。知っているからできるというわけでもなく、これをできることが、私が冒険者として一流にまで上り詰めた一つの要素だったのかもしれません。
構築が完了すると、すぐに発動させます。この間わずか0.1秒。この魔法はあまりにもよく使うため発動速度も私の魔法の中でも最速になりました。
= 重 鎧 =
魔法の発動とともに少年は床に沈みます。
この魔法は自分を中心に重力場を発生させるという力魔法の一種で、私のギフトになります。他にも引力や斥力、圧力なんかもありますが、消費魔力量と効果のコストパフォーマンスが良いので重力を多用しています。
少年は全く動けないようで、こちらに顔だけを向けて睨みつけてきます。本来の威力でしたら今頃見るも無残な姿になっていますが、以前、殺してしまわないように特訓した成果が出ています。
自分ではかなり手加減をしているつもりですが、周りにいた冒険者から見たらどうもそうは見えないようでまたも冒険者たちが職員を含めてざわつきだした。
「すげえな、あんな精密な魔力制御、初めて見たぜ。力魔法なんて超レアスキルを使いこなしているだけでもすごいのに手加減ってどれだけ特訓したらあの域になるんだ?」
「さすが〔重鎧〕だ。副ギルド長になった時は震えたけど、治安が良くなったのは、間違いない。」
「カニエルで悪さなんてしないほうがいいな。」
恥ずかしいことにこの魔法は私の現役の時の二つ名で、今でも知っている人は結句いるみたいです。
とにかくこれで、場は収まりました。少年を担いで医務室に向かいます。
医務室につくと少年をベッドに寝かせ、どうしてこうなったかを当直の治癒魔術師に説明していつものようにすこし注意を受けます。
何回も同じことがあったため、私も彼もまた同じことが起こるだろうとなかば諦めているでしょうが。
ここまでが、受付嬢が対応しきれないお客様の扱いの一連の流れになります。要は私の業務内容ですね。何が起こったかなどはある程度推察した治癒魔術師の彼が説明してくれるため、私は丸投げすればいいのです。
~~~
そんな感じでそれから普段は受けもっていない朝の時間帯の冒険者の相手を行い、いつもの時間通りに夕の副ギルド長が来るのを待って交代を行います。
夕の副ギルド長を待っているとギルドに朝の副ギルド長が入ってきました。
「おつかれさん。いやー今日はすまんかったのう。さすがにここと王都を往復するのでは、間に合いはせんかったわ。てことで、ここからはわしが夕のに代わってギルドに勤務する。夜のはまた21時に来てくれい、といいたいところじゃが、夜のの分は夕のがやるらしいのでな。明日の21時まで休みでいいぞい。ギルド長にも許可を取ってある。“家でゆっくり休みなさい”とな。」
副ギルド長はお互いを時間帯で呼びあうが、初めのころは理解に苦労しました。慣れるまでは、名前が出てきたりして注意されるほどではないですが、苦笑いくらいはされたものです。
休みをくれるというのならありがたい話です。副ギルド長の中では若い方ではありますが、私も現在35歳といい年のおっさんです。16時間ぶっ通しでの勤務は正直、疲労がたまりました。
それにギルド長も許可してくれているということで遠慮なく休みをもらうことにしました。
~~~
副ギルド長に昇進したことで私の勤務時間が夜へと変わり、家族との生活リズムは会わなくなっていた。息子や妻に会わないこともしばしばで、雇いの家政婦さんに朝会うくらいがせいぜいだ。
今日のように夜に家にいることができるのは久々なので、本当に久しぶりに家族で外食にでも行こうかと計画する。
あれやこれやと考えながら帰り道を歩いて行くと、家の近くにある大通りに差し掛かる。普段はここを通ってもどの店もやってない早朝だったので、店が開いているというのはなかなか新鮮な気分になる。
ふらふらと家のほうに歩いていると周囲の店からの視線を感じる。
冒険者の時もギルド員になった後もこういった店は立ち寄らないので知り合いはいないはずだが、どうにも警戒や批判、中には殺気を感じる視線がある。実害はないが、うっとおしいので足早に大通りを後にする。
もう少しで家につくところでご近所の奥様方がいたので挨拶をする。
「こんにちは、いいお天気ですね。」
特に話したいわけでもないので天気の話だ。向こうも俺が話しかけてくるとは思っていなかったのか、驚いているが三人で顔を見合わせると、そそくさと帰っていってしまった。
何だったんだ?と首をかしげて視線を外す。気にならないといえばうそになるが、気にしてもしょうがない、家に帰ったら妻に聞いて見よう。何か知ってるかもしれない。なんて考えながら、家の前に到着する。
そして、玄関の前でドアノブに手をかけ、ドアノブを回してドアを引く。一応、そこそこの稼ぎで借家だがきれいな家に住むことができている。他の平屋などでは未だに引き戸だからな。
いざドアを開けると、そこには、何もなかった。
いや、正確には、離婚を告げる一枚の紙が床に落ちているだけの部屋があった。
拙作を読んでいただきありがとうございます.
続きの想定はできているのでモチベーションによって書こうと思います。
「面白い」「続きが読みたい」
と思っていただけるようなら,評価をしていただけると続きを書く励みになりますのでどうかよろしくお願いします.
ここより下に表示されていますので,星を塗りつぶして評価してくれるとありがたいです。一つ星でもありがたいです。
☆☆☆☆☆ → ★★★★★
結果次第では連載を急ごうと思います。