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7話 失意と…

 困った事態になった。


 あの冒険者共を監視してして数日は経っただろうか。

 索敵になれてるのか、はたまたこういった洞窟に慣れてるのか、凄い早さで洞窟を攻略していって、狩れる魔物を根こそぎ狩っていきやがった。

 そうなると俺が進化する為の獲物が居なくなってしまった。


「ガタカタッカタッ!!」


 俺は激しく怒鳴った。

 だが声帯もない俺には声が出ず、歯が音を鳴らすだけだった。


 さて、無駄なストレスは吐き出し終わった。

 これからどうするかだ…

 もう狩れる魔物は少なくなった。

 そして冒険者に着いていき出口も分かった。

 ならばこれはもう外に出るしかないだろう。

 だがこの姿だ。人間などに見つかれば殺されるだろう。喋れない俺には相手を殺すか殺されるかしかない。

 ならば出会わずに行くしかないが、そうなると情報のない俺には難しい。


 だが獲物の少ないここにいても時間の無駄だ。

 そう思い、俺は冒険者が去って時間が経った出口を見つめている。

 ずっと洞窟に籠ってたせいか、はたまた道の世界へ踏み出す恐怖か、中々足が進まないが、意を決して外へ出ようとする。

 すると…


「ガタタタッ」


 物凄い激痛が体を襲う。

 それは腕を取られたような痛さとは違う種類の痛みだ。

 何かで強烈に焼かれているような痛み、それがずっと襲い続けてくる。

 あまりの痛さに地面を転げ回っていると、痛みが引いてきた。


 痛みからか四つん這いになって荒い息を付くようにして、痛みの余韻に耐える。


 なんだこれは?……なぜあんな痛みが…?


 ゆっくり回りを見渡すとどうやら洞窟に戻っていたらしい。

 そこで落ち着きを取り戻し痛みがなくなってから再度、今度はゆっくりと外へ出ようとすると、今度は足と手にあの痛みが襲ってきた。


 俺は一瞬で洞窟に戻る。

 なぜ手と足だけに…?

 疑問が尽きないが、もう一度、今度は更に遅く出口へ向かう。

 すると今度は足の先だけに痛みが襲ってきた。


 なんだこれは? 何か結界でもあるのか?

 そんなことを思いながら、痛みが襲ってくる場所を、身を犠牲にしながら調べていく。


 すると分かったことは、洞窟の出入り口の上から下方向へ斜めに奥へ結界らしき物が貼られているという事だ。


 なぜこんな形の結界が? と思うが答えは出ない。

 くまなく調べたせいか、骨がボロボロになってしまった。

 そこでこれ以上はマズイと判断して、その場で立ち尽くしてしまう。


 これは困った。まさか外に出られないとは…

 どうする? 出られないとなると、更に奥へ行き何かあるのを期待するしかなくなる。

 だが何もなかったら俺はこれ以上、進化出来ない可能性がある。


 くそったれ!

 まさかこんな所で終わるのか!?


 やり場のない怒りが沸いてくるがどうしようもない。

 しばらく呆然と立ち尽くしていると、またあの痛みが襲ってきた。


 不意の痛みに思わず後ろへ飛び退いて、じっと今までいた場所を見てみる。


 なんだ? 何が起きた?

 俺は動いてない筈だ。なのに痛みが来た。

 まさか結界が動いたのか?

 動く結界などあるのか? こんな洞窟に…


 俺は様々な憶測をしていき、ふと1つの結論に行き着いた。


 もしやこれは結界ではないのではないか?


 結界何て物じゃなく、ただの自然現象だとしたら…


 回りを見渡し、そこでふと気づいた。

 なぜ俺は洞窟の中も外も同じように見れているのだ?

 そうだ、洞窟の中は暗く外は明るいだろう。

 なのになぜどちらも同じに?


 そこで更に気づいた。

 出会った冒険者達は明かりを付けてなかった。その明かりを確認できなかった。

 もし洞窟に明かりがあれば、俺が意識を取り戻した最初の真っ暗な場所はなかったはずだ。

 そして今は洞窟の中も外も同じに見えている。

 と言うことは……?


 まさか俺は光が見えてないのか!?


 まさかとは思ったが、それしか思い当たらない。

 確かに俺はこの洞窟で生まれて周りが真っ暗なところしか経験してない。

 それに最初は真っ暗すぎて何も見えてなかった。

 だが今は暗い所など無いかのように歩けている。

 それはきっと魔力を見ているからだ。

 空気中にある魔素が漂っているため、洞窟の道も分かるのだ。


 ならばと魔力を見ることを止めた。

 すると…


「ガタガタタッ」


 おお! 光が!


 洞窟の出入り口から光が入ってきているのが見えた。

 それは上から下に斜めに光が入ってきている。

 もしかするとこの世界に来て初めて光を見たかもしれない。


 少し感動しながらも、その光に手をかざすと…


 うぐっ… またあの痛みを味わった。

 なるほど、やはり結界などではなく光が原因だ。

 ということは…


 俺は光に当たれないと言うことか?

 光に当たったままだとものの数分で死ぬのか?


 そんなばかな!?

 では俺は一生この洞窟から出られないのか!?


 ……俺は失意を抱えながら洞窟の奥へ戻っていった。



 それから暫くの記憶がない。

 気付いた頃には足元にアリの死体がゴロゴロと転がっていた。


 なんだ……失意のうちにただ暴れていたのか?


 なんとも己の弱さに苦笑してしまう。

 だが今はこれしかないのだろう。

 出られないかと試していた足の先と左手はもう無くなっていた。

 あれだけボロボロだったからな。仕方がない。

 まずは体を治すためにレベルを上げなくてはいけない。

 ならばと今は出られないことを忘れ、ただただ暴れようじゃないか!


 そこからは更に激しく、今度は意識して暴れまくった。

 元々冒険者共が狩っていったせいで、獲物が少なくなっていたが、道がある程度分かったので、くまなく探し回り、魔物を見付け次第、屠っていった。


 そうして数週間が経ったであろう頃、ようやくレベルが上がり体が治った。


 さて……これからどうするかだ。

 まず第一の目標は肉の体を手に入れること。

 そしてそれとほぼ同じなのは、外に出ること。

 だが今は出られない。ならばと、肉の体を得ることとする。


 そうと決まれば、あの場所へ向かうか…


 そこは冒険者共も気に掛けていた場所。

 深い深い穴がある場所だ。


 そこは光もなく魔力も感じ取れない場所。

 どのくらい深いのか分からず、どうしても飛び降りる気になれなかった場所だ。


 だが、魔物が少なくなったこの場所では、もういる意味がない。

 きっとここにいても何も進展はしないだろう。


 そう思い、俺は覚悟を決めた。

 これがアリ共の巣だとしても、それ以外だとしても、すべてを蹴散らし生き残る!

 そう覚悟を決めたら、もう迷いはない。

 あとは飛び降りるだけだ。

 俺は穴に向かい、そっと身を投げ出した。


 では行こうか、死地の旅へ。



 しばらくの浮遊感の後、唐突に地面に激突した。


 グァッ…! クゥッ…


 何も見えなかったぞ!


 俺は地面に叩きつけられ、暫く動けなかった。


 痛みが薄れようやく動けるようになった頃、辺りを見渡す。


 そこは、明かりが付いていて、壁はレンガのようなもので作られていた。


 んん? これは……前世で見た、と言うよりもやったことのあるRPGゲームのような壁をしているぞ。


 もしやこれはダンジョンとかか…?


 そう思っていると、壁の奥から声が聞こえてきた。


 ギャギャッ ギャッ


 何とも耳障りな音だ。

 俺は警戒しながら、何かが現れるのを待っていた。


 少しの間を置いて現れたのは…


 ギャギャッと鳴いている一匹の緑の人の形をした醜い魔物だった。


 どこからどう見てもゴブリンです。


 それを見た俺はテンプレに心が踊っていた。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] >>だがこの洞窟は明かりすら無いと言っていた。 こちらの表現ですが、「第三話 初遭遇」での >>先ほども思ったが、やはり俺はこの世界の言葉は分からないようだ。 と、矛盾しているかと存…
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