表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/59

EX2 冒険者たちの疑念

 なんでもあの生意気な小僧達が帰ってこないらしい。

 ゼジーというガキは15歳くらいか。

 なんでもここユルブローの隣の街から来たらしいが、良い武器を持っていて実力もガキにしてはある。


 だからこそ調子に乗ってるが、まああの程度なら誰もが通る道だ。可愛いもんだ。

 そんな奴がここ数週間帰っていないらしい。

 そこでギルドから依頼が回ってきた。


 中身はビルというガキの仲間が、ある場所に洞窟を見つけたらしい。それを調査しに行って帰ってこないから、俺たちに調査を依頼したいということだ。


「なあファイナ、どうする?」

「いいんじゃない? なんかのダンジョンかもしれないし」


 確かに新しいダンジョンの可能性もあるな。

 仕方ねぇ、依頼料は安いが行ってやるか。


 自慢じゃねえが俺たちはAランクだ。依頼料も安いのは受けねぇ。だが今回は放置したらマズイ案件だ。

 だからこそギルドも俺たちに依頼してきたんだろうからな。


「よし、なら今から行くか?」

「ザジルがいいならいいわよ。コリー達もいいでしょ?」

「ああ、いいよ」

「私たちも良いわよ? ねぇ、アネモネ?」

「(こくり)」


 こくりと頷くアネモネと賛成するミランダ。

ミランダは妖艶な女だが、物静かなアネモネの世話を焼く。

 面倒見の良い奴だ。

 コリーも優男で静かに笑ってるが、実力は大したものだ。


「よし、なら行こうぜ」


 早速その洞窟とやらに繰り出すことにする。


 ギルドから言われた場所に向かい、しばらく森を歩いていると、ようやくそれらしき穴が見えてきた。


「ここか? こんな場所、俺達が森で狩ってた頃なかったよな?」

「ええ、ここも通ったことあるけど無かったわね」

「だね。それに土が落ちた形跡がある。最近出来たんだろうね」


 コリーがそう分析した。

 こいつはシーフじゃないが、分析や解析が得意で罠なんかも詳しい。なので斥候役はコリーの右に出るものはいない。


「よし、ならさっさと行くか」


 皆が賛同しそれぞれ洞窟に入っていく。


「若い冒険者が帰ってこなかったらしいから、ここは慎重に行くよ。罠もあるかもしれないしね」

「ああ、コリー任せた」


 いつも通り上級ダンジョンを行くかのように、コリーを先頭にして入っていく。

 中級になりたてだが、若い実力パーティーが居なくなるのは何かあるからな。

 やばくなる前に潰しておきたいものだ。


「真っ暗だなここは。こりゃダンジョンの気配がないな」

「そうね、それに臭いもキツいわね。何ここ?」

「たぶん戦争かなんかで埋められた場所なのかもね。これ見て」


 そう言うコリーは地面を掘りはじめた。

 そこからは錆びたナイフが出てきた。


「なくなった兵士達が持ってたものだろうね。この臭いもその兵士達が甦った臭い、つまり、ゾンビだろうね」

「ヒッ…」

「アネモネだいじょぶかい?」


 そういってミランダがアネモネの髪を撫でる。


「しっかし死体埋めた場所か。それにしてもこんなところで帰ってこないもんかね?」

「ゾンビ以外にもいそうだから注意しようか」


 ゾンビ以外何がいるんだろうな。以外と大物だったりな。まあ楽しみにしとくか。

 ニヤリと笑いながら先を進む。


 ライト≪あかり≫の魔法を使いながら真っ暗な洞窟を進むと、何やらアネモネがチラチラと後ろに視線を送っている。


「アネモネ、気になるなら言ってくれよ」

「…うん」

「ザジルは怖いんだよ。アネモネ、何かあるのかい?」


 ミランダがおれの代わりにアネモネから話を聞いている。

 どうもアネモネは無口な上、俺が苦手らしい。

 特に何もしてないが、最初からこんな感じだ。女は分からんな。


「なんか後ろで魔力反応があって、付かず離れず着いてくるってさ」「なんだそれ、ヤバイ奴じゃないだろうな?」

「ザジル、確認してみよう」


 コリーもそう言ってるし、確認してみるか。

 着いてくるってことはある程度知能があるんだろう。

 こりゃアンデッドの上位種か?

 まあ行けば分かるな。


「どこら辺だ? 離れてるか?」

「……消えた」

「はあ? 消えた?」

「こらザジル、そういう風に言うから怖がられるんでしょ」

「いや、怒ってる訳じゃねぇよ」


 たく、女はめんどくせぇな。

 それに消えたってなんだよ。


「なんか魔力がゆっくり無くなったみたいだよ」

「うーん…まぁ分からんな。危険はあるか?」

「今のところないね、多分」


 コリーが言い含むなんて珍しいな。警戒を一段上げるか。


「なんかあると思って行くぞ」


 そう言うと皆が頷いて歩を進める。


 数時間経った頃、腐敗した死体が出てきた。

 そこらに死体が転がってるから気にならなかったが、コリーが反応する。


「これが帰らなかった若い奴かもね」

「ん? これがゼジーのガキだってか?」

「うん、間違いないよ。この3人の死体だけ新しい」


 んー、俺にはよく分からんが、コリーがそう言うならそうなんだろうな。


「んで? どんな奴にやられたんだ?」

「んー、ちょっと腐敗が進んでるけど、多分キラーアントかもね。そこにほら…」


 そう言うと朽ちた蟻の殻があった。

 確かに2、3匹の蟻の殻があるな。

 しかしこいつらがこんな程度に負けるかね?


「多分キラーアントの上位種になりかけかな。少し殻が大きいね」

「ははー…キラーアントの上位なりかけが3匹以上か。なら確かにやられてもおかしくははねぇか。けどよ、なんで装備が丸々無いんだ?」

「多分、知恵のあるアンデッドが持ってったのかもね」

「ヒッ…」


 知恵のあるアンデッドねぇ。こりゃ厄介かもな。

 アネモネが悲鳴上げるが分からなくもねえ。

 まぁほんとならだけどな。こんな場所にいるか分からんからな。


「どの程度だ? そのアンデッドは?」

「ん~、一体で全ての荷物を持っていったなら、下の上くらいかな。1つ2つなら下の中、選別したなら中の上とかになるけど、全部だからね」

「確かに鎧から何から何までだな。女のローブもとなると見境なくか」

「そうだね。それにゾンビやスライムとかに肉の一部を食われてるけど、賊にやられたとしたら、死体に無駄な傷が多いのが一人だけだしね。キラーアントに油断したか何かあって鋭い牙でやられたって感じかな。それでやられてしまって、持ち物はアンデッドとかに取られたってのが線だね」

「ならこいつの剣も持ってるんだな。厄介だ…」

「うぇ~…やっぱりゾンビって肉食べるのね…」

「きゅ~……」

「あら、アネモネが死んだわ」

「勝手に殺すな」


 そりゃゾンビは肉を食うだろう。生への執着ゆえにと言われてるな。

 しかしこのガキ自体は対して強くないが、あの剣はミスリルが混じってるから上物だ。魔力が通りやすいからな。

 それを持っていかれたのは面倒になりそうだぜ。

 まあ対して知恵のないアンデッドが持ってても使いこなせないだろうがな。


「よし、分かったところで再開するか」

「ねぇ、何泊くらいするの?」

「そうだな…せめてこいつの剣を持ってる奴が見つかればいいが、そこまで脅威じゃないなら、3日でどうだ?」

「3日ね。はぁ、臭いが染み付きそうね」


 これだから女は…まあ3日くらいなら大丈夫だろうと提案したからなほんとは5日は欲しいが、ここを放置しても良いくらいだからな。

 もう少し調べりゃ大丈夫だろう。


「よし、んじゃ3日経って何も見つからなけりゃ帰るか」

「そうだね。それで良いと思う。あとはたまに中級冒険者を派遣してれば、そのうち落ち着くんじゃないかな」


 コリーもそう言ってるし、色々と駆除してさっさと帰るか。



 それから見つけた魔物を狩っていく。

 たまにアンデッド以外でスライムが出てくるが、ここは魔力が少し濃いから、自然発生するようだ。

 だがほぼアンデッドしかいないし、キラーアントもそこまで多くない。だからここに巣作りする前にキラーアントをメインに倒していく。


 たまに地面を掘り、アイテムを見つけるくらいで、結論としては、死体が埋められていた場所をキラーアントが掘り出した程度の物と判断した。


「多分キラーアントが外から来たから、滞ってた魔力が動き出して眠ってた死体がアンデッドにって感じかな?」

「そうか、なら、この穴もキラーアントが掘ったのか?」

「多分ね。他の穴と同じだしね。もう問題もないと思う」


 まだゼジーのガキの剣が見つかってないが、まあここらで良いだろう。

 これ以上は進展がないとここらで終わりにすることにした。

 この洞窟は広いだけで何もないとそうギルドに報告した。



 たまにすごく深そうな穴があり、そこに興味を引かれたが、キラーアントが掘ったのだろうと結論付けて、魔法を数発放ちそこを離れた。

 若干嫌な予感が残ってるが、期限の3日になったので洞窟を後にした。



 この判断が未来にどこまで影響を与えるかは、今は誰にも分からない。


 ここからもし魔王が現れても、この冒険者達のせいではないだろう。

 魔王は全てが自然災害と同じような物なのだから…


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ