34話 まさかの再会
誤字脱字報告ありがとうございます。
俺は飛竜部隊達が来る前に足止めの為に巨大な血剣をドラゴンゾンビに突き刺し離脱した。
そこからは飛竜部隊が来るのを待ち、こちらを認識出来ないであろうギリギリの所まで離れて、飛竜部隊がどうやってドラゴンゾンビを倒すのかを見守る事にした。
遥か遠くにだがユルブロー方面でどんどんと魔力が減っていたのを感じていた。
きっとあの飛竜達が魔物を蹴散らしているのだろう。
一体どんな戦闘能力を有しているのか見るのが楽しみだ。
俺は周りに動物どころか虫すらいないこの森で静かに見守る。
そこからは圧巻の光景だった。
最初こそ不意のドラゴンブレスに何騎かの飛竜がやられてしまったが、それからは見事な程の連携が見てとれた。
まぁ空への攻撃がブレス1つしか持ってないんだ。何もしようがないだろう。
しかしお互いが邪魔にならないように、それでいて最大火力を出せるように立ち回っていて、とても練度高い物を感じさせる。
だがドラゴンゾンビは驚異の再生能力がある。それをどのように仕留めるのか今後の参考にさせて貰おうと、その戦いをじっくりと見つめていた。
飛竜部隊はそれぞれ飛竜に火炎を出させたり、様々な魔法でドラゴンゾンビに傷を与えたり、剣技を飛ばして攻撃をしていたが、すぐに再生するドラゴンゾンビに決定打不足のように見えた。
最初こそ様々な攻撃をしていたが、驚異の再生力を前に、手の打ちようが無さそうと思っていたが、一人の人間が超巨大な炎を渦を作り出した。
それは小さな街や村なら飲み込んでしまうのではないかという程の大きさを誇り、そこにさらに飛竜達の炎や飛竜に跨る人間達の魔法や剣技が飛んでいき、ついにはドラゴンゾンビの皮膚が焼け爛れ、鱗も焼け落ち肉体が溶け始めていった。
それからも手を緩めることなく完全に骨になるまで焼き続けて、飛竜部隊達が見守る中、次第に炎が消えて行き、残ったのは骨だけとなった。
そこでフラフラと飛んでいた飛竜がありったけの魔力を込めた巨大な火炎の球を、ドラゴンゾンビの残った骨に目掛けて吐き出し、その骨を粉々にぶっ壊していた。
その飛竜には人間が跨っていないように見えたので、きっと最初のブレスでやられてしまったか落ちてしまったのだろうと思われる。
なのであれは飛竜の独断で放った物なのだろう。
それからは飛竜達が鳴き声を上げて悲しい歌を歌っているような感じになり、まだ残る骨に対して飛竜部隊の面々は地上に降りてきて、おそらく聖属性魔法でもって浄化しているような雰囲気が見てとれた。
(いや~、あの最後の炎の魔法は凄かったな)
俺は先ほどの超巨大な炎の渦を思い出して感嘆としていた。
俺のヴォルテックスやファイアストームの数十倍の規模はあった。
それにその威力でもドラゴンゾンビは再生しようとしていた所を見ると、どうやっても今の俺じゃ倒せなかったという事が理解できた。
(ちくしょ~……つよくなりてぇな~……)
あの飛竜部隊の強さを目の当たりにして、俺もあそこまで、いやあれ以上に強くなりたいと思いを新たにした。
確かに俺一人と向こうは30人くらいはいただろう。だがドラゴンゾンビを相手にしていた時間はものの10数分かそこらではないだろうか?
今の俺とは次元が違う強さで、俺が相手をしたら数秒で死ぬかもしれない。
今は転移を手に入れたが、もし転移を封じられたら10秒と持たないだろうなと感じるのは間違いではないだろう。
俺はあの飛竜部隊の強さを目に焼き付けて、この場を去る事にした。
そして転移で向かった先はワイトのいた小屋だ。
リリを二日ばかり放置してしまっていたので、迎えに行くべく転移した。
「さて、リリはどこかな?」
俺は小屋の外へ転移し、辺りを見渡すが居なかったので、小屋の中へ入っていく。
リリの笑顔で癒されようと中を覗いたが、そこで俺は固まってしまった。
「……あ! おとうさん! おかえりなさい!!」
俺が入ってくるのを見つけたリリが俺におかえりと言いながら抱き着いてくる。
だが俺はリリの事が目に入っていなかった。
なぜなら……
「む? おお! スタークではないか!!」
そう言いながら重そうな漆黒の鎧を鳴らしながら俺に近付いてくる者がいた。
「が……ガラハド……?」
そう……何を隠そう俺が倒したはずのガラハドがそこに居たのだ。
なぜガラハドがいるのか理解できない。しかもその姿は俺が見た姿と少し異なっていた。
「わはははは! その顔はなぜ儂が生きておるのかって顔じゃな?」
「あ、ああ……なんでお前は生きてるんだ? それにその頭は……」
「わはははは! 儂も不死身だったようじゃのう!」
そう言うガラハドがまたもや大きな声で笑う。
いやいや、確かに俺はガラハドを葬ったはずだ。その証拠に剣と鎧の欠片を形見として貰い、その他の残骸は確かにダンジョンの地面に埋めた。
それがなぜ葬る前の姿と変わらず、それどころか兜まで着けてるんだ?
「やっぱりおとうさんの知り合いだったんだ!」
「リリ……どういう事だ?」
「なんかね! お墓に魔力があったからね!」
「………」
なんでもリリは小屋に居ても暇だからと少し怖いが結界から出ない様に、墓地を見て歩いていたそうだ。そこで結界の修業をする為に魔力を練ったり魔力を感知したり、外にいるゾンビ目掛けて結界を張って丸めて消滅させたりしていたらしい。
そうして転移の練習もしようと俺の魔力を辿ろうとしていたら、1つのお墓の下に魔力があるのを発見して、気になって掘り返したら真っ黒な兜が出て来たとか。
怖かったが特に悪い気配はしなかったので小屋に置いておいたら、小屋にデュラハン姿のガラハド入ってきて、兜を首の無い鎧に被せてリリを見つけお礼を言って来たとか。
それからリリは悪い人じゃないと思ったようで、話が出来るという事で色々話しているうちに、俺の話になりガラハドも俺を知っていたから、ここで一緒に待っていたらしい。
「それにしてもガラハドさんって姿はデュラハンだけど、元王国騎士団長なんだね!それって前の剣聖様だよね?」
「ああ、そうらしいな。しかしよくこんな見た目なのに信じたな? 俺は詳しくは知らないがガラハドは剣聖と言われてたと本人から言われたな」
「うむ。儂は元々は王国騎士団長だったが、戦場で活躍していたらいつの間にか剣聖と言われていたのう」
「やっぱり! すごい! 剣聖様とあっちゃった!!」
リリが凄い興奮しているが、それほど剣聖は凄いのだろうか?
「剣聖様の武勇伝はユルブローでもたくさん伝わってきてて、冒険者達の中では伝説の人になってるんだよ!」
リリが丁寧に説明してくれるが、俺にはよく分からない。だが確かにあの剣技は凄かったからな。よくもまぁ俺の11本の剣と渡り合えるよな……
「わはははは! その剣聖と言われた儂でも罠に嵌められ主君と慕った殿下と一緒に殺されてしまったがな。それにデュラハンとして生き返ったと思ったらそこのグール…むぐぐっ」
「そうかそうか! お前は罠で殺されたんだな!(おい、グールってのはまだ話してないんだ!)」
「むぐぐっ。(なんじゃ、そうだったのか。いずれバレるぞ?)」
「(わかってる……)」
ガラハドが余計な事を言いそうになったので思い切り兜を塞いだ。
多分ガラハドは思念で意志を伝えてるから止まるとは思ってなかったが、無事止まってくれたので助かった。
しかしそうか、ガラハドがこんだけ強いのに殺されたのは罠に嵌められたからか。やはり人間が一番怖いなと再認識した。
「おとうさん?」
「いや、ガラハドの話はあとで聞こうと思ってな。今は無事に帰って来れてリリに会えたから、それを喜ぼうとな」
「うん! おとうさんおかえりなさい!」
「ああ、ただいま」
そう言って俺はリリの頭を優しく撫でる。
それを気持ち良さそうに目を細めながら撫でられている。
「それにしてもお主に子供がおったとはな」
「いや、俺の子供じゃないぞ。ユルブローに行く途中で出会ってな」
「ほう、そうじゃったか。それにしては随分と懐いておるな」
「まぁ色々あってな。それよりもなぜガラハドは生き返ったんだ?」
「うむ。なぜか意識が戻ったら鎧が治っていてな。そして何かを感じたから小屋まで来てみたら、儂の物と思われる兜があってのう。そしてそれを付けてみたら意識がハッキリしてきたのじゃ。そしたらリリがおるのが見えて、それで色々と話していたのだ」
ガラハドが言うにはきっとリリがガラハドの物と思われる兜を見つけて、地面から掘り起こしたら眠っていたガラハドの意識が蘇り、ダンジョンに埋められていた鎧が目覚めたのではないかという事だ。
そして少しぼんやりとしながら兜を身に着けたら意識がハッキリとしたとか。
「だがなんだか足りないものがあるような気がしてなぁ」
「そうなのか……ん? もしかして……」
俺はそう言いながら魔法袋からガラハドの形見として持って来ていた剣と鎧の欠片を取り出した。
「む? ……おお! それだそれだ!」
そう言うなり俺から欠片を取り上げて鎧の横の辺りにあった、ヒビが入った小さな穴の開いたような場所に欠片を持っていくと、吸収するようにすんなり入り込み、穴がぴったりと閉じていた。
それを剣にも同じようにやり、剣のヒビが治ったその瞬間、小屋に魔力の突風が吹き荒れた。
「きゃあ!」
突然の事にリリが悲鳴を上げるが、それはガラハドを中心に吹き荒れており、そして次第に収まっていった。
そのガラハドを見てみると、漆黒の鎧が若干光っており、魔力が満ち満ちているのが見てとれた。
「わはははは! なんだか前よりも力が漲りおるわ!」
そう言うとガラハドは大剣を目にも見えない程の速度で振り下ろす。
その突風で小屋がミシミシと音を立て、ドアが開いてしまっていた。
「おいおい……まだ強くなんのかよあんた……」
「わはははは! 今ならお主にも負ける気がせんな!」
「いや、やらねぇから……」
「わはははは!」
ほんとに戦闘狂だなこいつは……それを見ているリリが若干引いているような顔をしている。
「リリ、暑苦しい奴だが悪い奴じゃなさそうだから」
「う、うん……だいじょうぶ」
健気にも大丈夫と言うリリだが、顔は大丈夫じゃなさそうなんだけどな。
それにしてもガラハドというかデュラハンは兜を見つけたら本来の力が解放されるのか?
それほど今のガラハドは前までの比じゃない程に力に漲っている。
(この状態のガラハドだったなら死んでたなこりゃ……)
俺は冷や汗を流しながらそんな事を思っていた。
「ところでお主、この後はどうするつもりだ?」
「ん? 一度ユルブローに帰ってから考えようかと」
「おとうさん、ユルブローは大丈夫なの?」
「分からん。ドラゴンゾンビを倒したのを見届けた後にすぐにここに来たからな」
「そうなんだ……」
「もしやお主がドラゴンゾンビを倒したのか?」
「いや、飛竜部隊が倒したな」
「おお! 飛竜部隊!懐かしいのう……そうか、飛竜部隊が出る程であったか」
何やらガラハドは懐かしむというか飛竜部隊が出る程の災害を憂いているようだ。
「儂がこの身体じゃなければ一騎打ちをしたものを……」
どうやら違ったようだ。
「とりあえず街の様子を見に行くか。てことでガラハドはこの後どうするんだ?」
「うむ。儂ももうお主と戦う理由もないしの。出来れば着いて行きたいがこの姿じゃのう…」
「ん~……その姿で来たら飛竜部隊に殺されそうだな」
「そうだのう……どうするか」
「……ならここに居てくれるか?」
「ん? 別に構わぬが何かするのか?」
「ああ、このダンジョンを攻略するつもりだからな。出来れば力を貸してほしい」
「おお! それもいいな! 特にやる事もないしの。お主とここを攻略するのも面白いかもしれんのう」
そう言って快諾してくれたガラハド。なので一度ユルブローに戻って街の状態を確認して来る事にした。
「リリはいいか? 勝手にダンジョンを攻略する事にしてしまったけど」
「うん! リリもダンジョン楽しみ!」
素直に喜んでくれるリリに救われたなと思いながら、リリの生まれ故郷のユルブローの確認をしに戻るのだった。