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19話 いざ、外の世界へ

 俺は光耐性を会得してから洞窟に戻り、適当にそこらの魔物を狩って魔石を貪り、魔力をある程度回復させた。 だがそれだけでは足りなかったので、肉を大量に食べる事にした。そうして魔法袋を漁っていると懐かしい肉を見つけた。

 それは最初に殺した冒険者共の肉だ。確かこいつらを喰らって肉体を得ようとしていたんだったな。ならば……と思いその肉を貪り喰った。

 しかしそれだけでも足りなかったので、オーク肉などを大量に喰らった。

 すると肉体がようやく戻り始めて俺は安堵した。


「あーよかった……このまま肉体が戻らず真っ黒い骨のままかと思ったわ…」


 身体を見ると徐々に肉が再生されている。それは骨に肉が付き出して筋肉が徐々に作り出されいるのが見て取れた。そこから腱や神経などが出来てきて、血管も出来ている。

 その様子を黙って見ていると心臓も再生されてきた。

 だがそれは当然動いていない。


「やっぱりアンデッドだよな。心臓が動いたらと思ったんだけど…」


 少し期待したが無駄だったようだ。まぁ今の目先の目標は外に出る事という事で、光耐性を得られたからいいかと考えた。


 しかしこういう風に再生しているのを見ると、理科室にあった皮膚のない人口模型のように見えてきた。


 そこで筋肉がそこそこ出来た場所を動かしてみると、しっかりと筋肉が動いているのを見て取れた。

 それからしばらく眺めていると、ようやく皮膚が出来上がってきたが、なんだか色がおかしい。


「あれ? なんだか浅黒いような……俺の肌の色ってこんなんだったっけ…?」


 肌が再生されて元の状態に戻るが、色が前とは明らかに違う。前は青白く死人に相応しい色合いをしていたはずだ。だが今では骨ほどではないが、肌が浅黒くなっている。ちょっと日焼けが濃い人くらいだ。一般的なイメージのダークエルフくらいだろうか?


「まぁ見たことないからイメージだけど」


 そんな体を見ていると自身の一物イチモツが見えていた。


「あぁ……ワイトに鎧壊されて、おまけに日に焼かれて骨になったから、着ていた物が何もなくなっていたのか…」


 気に入っていた青い鎧は壊されてしまった。 だがワイトもガラハドも倒し終わった後に、胸にあった赤い宝石だけは回収していた。魔力を感じないから俺には必要ないかもしれないが、もしかしたら売れるかもしれないからな。


 そんな事を思いながら裸の俺は魔法袋から予備の服を取り出す。これは最初に殺した3人組のシーフっぽい男が来ていた服だ。それを着込んだが若干、丈が短い。

 俺はあの男達と身長はそんなに変わらないと思っていたが、少しはこの身体が成長したのだろうか?

 その証拠に戦士の男の鎧は俺の身体にフィットしていた。シーフっぽい男もその男とほぼ体型は変わらなかったと思う。


 そこで前世の記憶にあるサイズを頭で思い描き大体このくらいという予測を立てると、身長は175cmはあるのではないだろうか。


 とりあえずこれは無事に街にたどり着けたら、まずは着る物を買おう。

 その後はこの世界の情報を手に入れたい。図書館なんてあればいいな。だがまずはワイトが持っていた紙に書かれていた文字が読めなかったし、思念がないと言葉も通じないし分からないから、誰か教えてくれる人がいればいいんだが……


 そう思いながら、まずは近くの街を探そう。どこに何があるかなど一切分からないからな。

 そう決めたらさっさと外へ出よう。


 そうしてしばらく歩くと出口が見えてきた。その足でそのまま外に出ると、なんだか肌がピリピリとしだした。


「なんだ…? 肌がやたら痛くなってきたぞ?」


肌を見ると風呂上がりのような湯気が上がっていた。 痛覚が鈍いのに痛みが来るとは相当なダメージなのだろう。なぜ?思ったが、俺はふと思い出した。

 そうだ、肉体は中耐性とメッセージが出ていたのを思い出した。

 これはその影響だろう。焼ける程ではないが、このままいたら肌が火傷した様に(ただ)れてきそうだ。臭いも焼けた臭いがするしな。そこで魔法袋から今度は魔法使いが来ていたローブを羽織り、腕と頭を隠す事にした。


「おお……駄目元だったけどこれならそこそこ軽減出来るな」


 日の光さえ何かで遮れば大丈夫なんだと思い、服も今度は全身が覆えるような物を買おうと思っていた時に気付いた。

 もしやこれは夜だったなら普通に外に出れたんじゃ……?


「あれ? 俺ってば無意味な自傷をしてたのか……?」


 日に当たり地獄の業火に焼かれる苦行をしていただけなのかと考えてしまったが、夜しか出れなくて日光に当たれないとなれば、人のいる所で暮らすには苦労するだろうし、万が一にも日光に当たってしまったらと考えると、俺のした事は無駄ではなく必要な事なんだと分かった。

 ならいいかと無駄にならずに済んで良かったと安心した。


「耐性を得たのに無駄なんてないよな。さて、やるべき事をやるか」


 そう言って俺は思っていたことを実行すべく入り口付近を丹念に調べ出した。


 確か出て来たのはここら辺だけど…ないな。

 ここにないなら見え辛い所にあるのかと周辺を隈なく探す。

 そうして洞窟の入り口にほど近い壁際にようやく目的の物を見つけた。


「あったあった。やっぱりあるよな転移石」


 そう、入り口にあるだろうと予測した転移石が予想通りあったのだ。

 これを俺は探していた。なぜならこれをそのまま放置していると、洞窟の下にあるダンジョンが見つかってしまい人間が大量に押し寄せて来そうだからだ。

 だから俺はこれを見つからないように処置を施すのだった。

 まだ見つかっていないであろうダンジョンを制するのは俺でありたいと共に、独占もしたいと考えた結果だ。ならばこれが見つからないようにするしかないだろう。

 独占というと浅ましい考えかもしれないが、理由はきちんとある。それは俺が強くなる為の狩場が減るという事。それと共に俺がアンデッドだとバレない様に狩れる安全な場所を確保しときたいという思いだ。


 もし他の冒険者と同じような場所で狩っていると、何かの際にアンデッドとバレてしまうかもしれない。 そうなると今度は俺が狩られる側だ。そしてそれを気にしながら狩っていると十分な力が出せず傷を負うかもしれない。 そうなるとさらにアンデッドだとバレる可能性が高まる。

 色々な意味で人間と一緒に行動するというのはリスクが高い。だから俺はこのダンジョンを出来る限り隠す事にした。


「まぁ絶対ではないから、隠しきれなくなったらそれはそれでいいけどな」


 警戒はするが必死に隠そうとすると余計怪しくなるだろうから、そこまで必死にならないようにしよう。


 そうして俺は入り口の転移石を隠そうとするが、残念ながら土魔法は使えないから、素手でもって土を掘り、転移石とその台座に向かって土を被せ埋めていく。

 だが俺はこれを使いたいので、俺にしか分からない目印を付け、場所を忘れても分かるようにしておいた。


「ふぅ……これで洞窟の壁の一部だと思うだろう。若干魔力が漏れてるから見る奴が見たら分かるかもしれないが」


 それでも何もしないで見つかるよりは良いだろうと思う。

 さて、これで何の気兼ねもなく街を探せるな。


 そうして俺は何一つ心残りもなく外へと旅立つ事にした。


第一章完結です。

次からは外の世界が始まります。まだまだ進化する予定です。


明日からは第二章を更新しますのでお楽しみに。



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