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第83話 追憶 10



 第一結界都市でのパーティーが終了した。ユリアはそこで正式に特級対魔師となり、そして次には会議が待っていた。建前上は、会議……それとユリアの紹介ということになっているがすでに状況は大きく動き始めている。



「先輩、僕……先輩と知り合えて良かったです。本当に頼りになります」

「な、何よ唐突に……」

「あー! エイラってば、照れてる〜。ユリアくんと仲良くなったのぉ〜? いいなぁ〜、いいなぁ〜」

「げ、クローディア……あんた早いわね……」

「ユリアくんが来るんだもーん! そりゃ、早く来るよ!」



 会議室の中でクローディアは待っていた。ユリアがやってくるのを。そしてエイラと二人でいるのを見るとすぐに話しかけにいく。



「改めて自己紹介ね。私はクローディア。序列は7位よ、よろしくね?」

「はい。よろしくお願いします」



 軽く握手を交わすことで、感じ取る。やはり、自分とユリアは同じ存在なのだと彼女は本能的に悟る。またエイラの覚醒も十分な頃合いだ。クローディアは心の中で笑うと、そのまま円卓の席につく。




「では新しい特級対魔師のユリアくんに挨拶をしてもらいましょう。どうせ君たちのことですから、さっきのパーティに出ていたのは数人でしょうからね。では、ユリアくんお願いします」

「はいっ!」



 その言葉を合図にクローディアは結界の生成を開始。



「ユリア・カーティスと言います。特級対魔師に選ばれて、光栄です。皆さんのように人類に貢献したいと思っているので、よろしくお願いします」




 すでに第一結界都市の結界は解除されている。その情報を知るのは現在ではサイラスと、クローディアのみ。そして彼女は始める。何十年という時間をかけてきた計画を実行する。



(……よし、この調子ならいけるわね)



 クローディアはフリージアの開発によって特に古代魔法に長けている存在だ。転移魔法も使えるが、彼女は強力な結界魔法も使用することができる。ユリアを黄昏に追放した際には、方向感覚を狂わせ彼を黄昏へ向かうように仕向けたがそれはクローディアによるものだった。



 今回は特級対魔師でも解除は不可能な超強力な結界を張る。構成要素の確認を行い、最後に特定の固有領域パーソナルフィールドを持つ者をこの領域から出ることができないようにする。さらにはこの場所だけではない。今は他の場所でも会議室で対魔師たち、それに女王も会議をしている。すでに今日のスケジュールは把握済み。クローディアは座標を指定すると、そのまま結界を発動。



 クローディアは一見すればただニコニコと笑っているように見るが、サイラス以外の誰にも知覚されることなく結界を生成することに成功。すでにこの場は容易には脱出不可能な空間となった。まさに籠の中の鳥。後の段取りは、魔物たちにこの都市を襲撃させ魔素でこの地を満たす。十分に魔素が満ちたら、世界縮小ピクノーシスで箱庭に移動して、シェリー、リアーヌ王女を回収。



 あとはセフィロトツリーを解放するだけ。



(サイラス、終わったわよ……)



 そう視線で伝えると、彼はそこで会議の終わりを告げる。




「では、これで解散。各々自分の担当の都市をしっかりと守るように」




 彼がそう言うと真っ先に出ていこうとしたのはユリアとエイラだった。もちろん、クローディアとサイラスは知っている。二人ともにここから出ることは叶わないのだと。



 しかし二人は難なく外に出ていく。それはまるで結界を意に介していないかのように。



(……出ていかれたッ!? 結界は作動しているはずなのに!?)



 その驚きを全く表に出すことなく、クローディアは再度結界の生成工程を確認。すると分かったのは、彼女が発動した結界は依然として維持されているといことだ。そして他のメンバーが外に出ようとすると、その行動は妨げられることになる。



「……おい、これって結界じゃねぇか」



 そう呟いたのはロイだった。彼はこの会議室を去ろうとしていた。だというのに、目の前に見えない壁のようなものが生成されており進むことができない。もちろん彼は短気な性格なので、すぐに破壊を試みるも……それは不可能だった。



「おいおいおいおい、どういうことだ? この結界……ヤベェぞ……」



 すぐに悟る。自分の技量では決して結界を破ることはできないと。そしてロイの様子に気がついた他のメンバーもまた、扉付近に近寄りその結界を確かめる。



「……これって、私も知らない構成要素だわ」



 クローディアは如何にも驚いたような顔をしてそう語る。そして次にやってきたのはイヴ。彼女は魔法に関してはあらゆる面でエキスパートだ。そんな彼女がその結界触れると……すぐにこう呟いた。



「無理……」



 その言葉に戦慄する特級対魔師たち。結界とは物理的に壊すこともできるが、やはり破壊するには魔法による干渉の方がいい。そんな中、魔法に長けている特級対魔師が無理といったのだ。驚くのも無理はない。



「……ユリア君とエイラは?」



 そう尋ねるのはサイラス。まずは状況を確認しようと、他のメンバーに尋ねる。



「出ていったよ……すぐに……」

「ベル、君でも無理か?」

「多分秘剣でも、厳しい……私の剣技は物理特化してるから……可能性があるなら、クローディアちゃんか、イヴちゃんだと思うけど……」

「ということは、まさか……閉じ込められたのか?」



 サイラスの言葉を聞いて、全員が理解する。自分たちはこの部屋に隔離されてしまったのだと。



 それと時を同じくして、結界都市内で爆発。



 地獄の戦場が、幕を開けた。


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