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第33話 黄昏:危険区域レベル1



 黄昏には濃度が存在する。東に行けば行くほど濃くなり、その濃さが一定値を超え、魔物の強さがBランクを超えるとそこから先は危険区域に設定される。その場所は二級対魔師以上でなければ対応はできない。またそこで定期的に狩りをしなければ、安全区域に危険な魔物が入り込む可能性がある。そのため黄昏機動部隊は、ほぼ毎日その危険区域での戦闘をすることになっている。


 死者が出ることも珍しくはない。だがそれでも、誰かがやらなければならない。安全区域を移動する人間はそれなりにいる。その人たちを守るため、そしてこの黄昏を無くすためにも、行動するしかないのだ。


 さらに危険区域はレベルが10段階に分けられている。東に行けば行くほどレベルは上がり、最終的に東の果てはレベル10。僕がかつてオーガの里にたどり着いたが、あそこはレベル10の場所でもあったのだ。それに黄昏の濃度は南北にもあり、果てに行くほど濃くなる傾向になる。つまりは、第七結界都市と第一結界都市はかなり危険な場所でもあるのだ。



「危険区域レベル1ですか」

「今日はそこに行く予定だ。もしかすると、レベル2まで行くかもしれない」

「レベル3以降は行ったことがあるのですか?」

「我々が行ったことのあるのはレベル4までだ。そこで、レベル10まで行った君には期待しているよ」

「……分かりました」



 大佐にそう言われ、僕は頷く。だが僕は黄昏の全てを知っているわけではない。戦っていたこともあるが、僕は逃げることの方が多かった。特に東に行けば行くほど、黄昏の濃度と魔物の強さは比例するように高くなっていくのでレベル10付近では、逃げる生活ばかりしていた。


 それでも、僕の知識と実戦能力は間違い無く役に立つと評価されてここにいるのだ。しっかりと義務を果たす必要がある。



「では、前衛はユリア、スコット。中衛は私とカール。後衛はエイラ、ルナで行こう」

『……了解』



 全員がそう言うと、僕たちは黄昏へと繰り出していくのだった。



 ◇



 僕たちは第七結界都市を出て、安全区域で適当に魔物を削り……危険区域にやってきた。



「……」

「なんだ、懐かしいってか?」

「……そうですけど、よく分かりましたねベイツ中尉」

「ははは、まぁな。今のうち、尊敬しとけ少佐殿」

「少佐殿って……」



 嫌味を言われるが、それもまた仕方ない。彼は10歳以上も年上なのだ。でもそこまで嫌みったらしくいっているわけではなく、どこか優しさのようなものも感じていた。



 そして僕とベイツ中尉は前衛なので、そのまま進んでいく。すると目の前に見慣れた魔物が出現する。



「ホワイトウルフ……群れですね。数が多い」

「みたいだな……」



 そして僕たちは剣を構える。すると中尉は僕の方をチラッと見ると、驚いたような声を出す。


「噂には聞いていたが……マジにナイフなのかよ」

「えぇまぁ。でも、ただのナイフじゃありませんよ」



 そうしている間に、大佐から指示が飛んでくる。



「ユリア、スコット、敵を削れッ! 我々は後方からの支援、それも漏れたものを片付ける」

『了解ッ!!』



 その言葉を合図に、僕たちは大地をかけようとするが……。



「はい、これでいいでしょう?」



 その声はエイラ先輩だった。ホワイトウルフたちの足元は完全に凍りついており、身動きが取れなくなっている。瞬く間もなく、エイラ先輩の魔法は全てを凍りつかせていたのだ。


 そのあとはただ首を刎ねるだけの簡単な作業だった。僕は両手に構えたナイフを起点にして、不可視刀剣インヴィジブルブレードを発動しそのまま次々と首を刎ねて殲滅していく。それが終わると、まじまじと中尉が僕の方を見てくる。



「なぁ……少佐殿。それってどうなってるんだ?」

「えっとこれは幻影魔法の一種ですね。僕のオリジナルで、不可視刀剣インヴィジブルブレードと言います」

「へぇ〜、またすげぇ魔法だなぁ……」

「なるほど、不可視の刃ですか……それはかなり有効ですね。見えないという利点は想像しているよりも強い。それに起点があれば複数展開も可能、そうでしょう?」

「そうですけど、詳しいですね。ハント大尉は」

「一応、君たちのことは事前に調べてあります。特級対魔師は情報がそれなりに公開されていますからね」

「ふふん、すごいでしょ。うちのユリアは!!」



 そういって会話に入ってくるエイラ先輩。なぜ、先輩が誇らしげなのだろう……。



「先ほどの氷魔法も見事でした。なるほど、やはり特級対魔師というのは別格のようですね。これなら、今日はレベル2までいけるかもしれませんね。大佐、いかがいたします?」

「そうだな……確かにいけないことはないが……ちょっと待て、本部に連絡を取る」



 大佐がそう言うと魔法を発動し、くるくると回転する魔法陣が出現。それを耳あたりに持っていき、何やら会話をしている。



「え、なんですかアレ」

「最近技術開発部が生み出した通信ができる魔法陣ですよ、カーティス少佐。まだ色々と問題はあるようですが、一応通信はできるみたいです」

「えっと、グレイ中尉……そうなんですか?」

「えぇ。まだ色々と問題はあるようですが、かなりの距離でも会話できるとか。魔素を辿って音を伝えているようです」

「なるほど……」



 そう感心していると、通話が終了したようだ。



「許可が出た。ただし、レベル2までだ。レベル3には行くなとのことだ。いいな?」

『了解』



 再び僕たちは黄昏の中を進んでいく。


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