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第206話 夜のひととき


 基地を出発し、僕とシェリーは二人で任務へと赴くことになった。一度ある程度は進んでいるので、進行は思ったよりも早かった。それに加えて魔物の対処も以前よりも楽にできるようになっている。


 それは隣で戦っているシェリーの実力がかなり伸びていることもある。彼女はベルさんが亡くなってから、鍛錬に鍛錬を重ねている。急激に強くなるということはないが、それでもシェリーは毎日を鍛錬に費やしている。


 その成果もあるのか、彼女の剣技は僕の目から見ればもはや圧倒的だった。それこそ、仮に僕がシェリーと対峙すれば完勝することは難しいだろうと思うほどには。


「よし。こんなものね」


 キン、と音を立てて納刀するシェリー。その隣で僕もまた戦闘が終わったので、魔法を消失させる。


「終わったね」

「えぇ。ユリアは相変わらず強いわね」

「いや、こっちのセリフだよ。本当にシェリーは強くなったと思う」

「……でも、先生にはまだまだ届かないから」

「……そっか」

「えぇ」


 シェリーがたどり着きたいのは、ベルさんの領域ではない。きっと彼女はベルさんを超えようとしているのだろう。ベルさんの最期の戦いは魔素でしか感じ取っていないが、彼女はある到達点にたどり着いていた。


 それはきっと人類の到達点の一つなのだろう。


 しかし僕とシェリーは厳密な意味では人類とはいえない。その領域にたどり着けるかどうかは、分からない。けれど彼女は、その先を見据えて戦っているような……そんな気がした。


「今日はここで夜を明かそう」

「そうね。分かったわ」


 もう今となっては黄昏の世界で寝ることも抵抗はなくなっていた。交代制で睡眠を取ることにして、先にシェリーが休むことになった。


「ねぇユリア」

「どうかした? 寝れないの?」

「うん。ちょっと目が冴えちゃって」


 シェリーの顔を見ることはできない。彼女は横になっているが、ちょうど僕とは逆方向を向いているからだ。僕は焚き火の火力を調整しながら、彼女の言葉に応じる。


「最近、少し寒くなってきたわね」

「そうだね」

「こんな世界でも季節があるんだから、何だか不思議よね」

「うん」

「知ってる? 昔はもっと季節ごとに綺麗な景色が見られたって」

「らしいね。僕も文献でしか読んだことはないけど」


 と、二人で他愛のない話を繰り広げる。シェリーの声は徐々に小さなものになっていく。どうやらもう眠りにつきそうなものだった。


「……いつか見たいわね、そんな景色」

「うん」

「きっと……いつか。みんなで……」

「うん。そうだね」

「すぅ……すぅ……」


 気がつけばシェリーは寝息を立てていた。わずかに溢れる金色のかみがとても綺麗だと思った。いつかそんな景色を見れるのだろうか。


 ふと、空を見上げる。


 今日の夜は晴れているということもあって、綺麗な星空が見えていた。しかし、依然として世界は黄昏に支配されている。でも、そうだな……いつかみんなで色彩豊かな景色が見たいと、改めて思った。

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