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第202話 復讐を迎え撃つ者


 アルフレッドは黄昏の地で戦いをたった一人で繰り広げていた。そこにいるのは、まず多くの魔物。昆虫種だけではなく、獣種などもおり多種多様な魔物に囲まれている中、彼はたった一人で立ち向かっていた。


 照らしつける黄昏の光。


 それは魔人だけではなく、魔物もまた強化されてしまう。互いに弱肉強食の世界に生きている存在。この場所は、人間が定義するところの黄昏危険区域レベル9。


 おおよそ普通の人間などこの場所に立つことさえ叶わない。それはおそらく、特級対魔師でなければ戦うことは不可能だろう。


「──フッ」


 肺から一気に空気を吐き出す。そして彼が駆け抜けた先には、大量の死体が山積みになっていた。魔物たちの血に塗れても彼が止まることはない。相手の魔物もまた、百戦錬磨であり強さだけでいえばSランク相当である。


 その手練れの魔物を前にしても、アルフレッドは怖気付くことはない。ただ冷静に、その魔剣を振るう。上段から振り下ろすと、慣性を制御して一気に折り返していく。


 鮮血。


 飛び散る血液を拭う暇などない。縦横無尽に駆け抜けていた先には、大量の死体の山が積み上がっていた。


 ヒュッと剣を振るって返り血を地面に落とす。


 その後にキン、と音を鳴らして魔剣を鞘に収めるアルフレッド。


「こんなものか」


 と、声を漏らす。彼としてはもっと苦戦するものだと思っていたが、そうでもなかったようだ。


 彼がこうして研鑽を積んでいるのはある目的のため。それは自分自身をより高みへとたどり着かせるためという理由もあるが、彼はシェリーとはある因縁もあった。


 ベルを屠った今、彼が次に相手するのはシェリーであることは予感としてあった。ベルの師匠を殺し、ベルを殺し、その弟子であるシェリーを殺す。そうして人間の中でも剣技を極めている者を殺し続けることで、その剣技を奪いさらに高みへと進んでいく。


 生憎、魔人の中には彼以外に剣技を扱うものはいない。それゆえ、自らを高めるにはそうするしかない。


「……戻るか」


 目の前にある死体の山に火をつける。タンパク質が焦げる匂いが鼻腔を抜けていくが、特に彼はそれを気にすることはない。ただ淡々と燃え上がっていくその炎をじっと見つめる。


 魔人として人間と戦うことに、今更思うことなどないはずだった。しかし、ベルとの戦いを経て彼はなぜか時折、思い出すことがある。その記憶は遥か昔になくしていたはずだった。


 それだというのに、思い出してしまうのは自分の心が弱いせいだろうか……そう考えるからこそ彼は今日もたった一人で自己研鑽を重ねていくのだった。


 シェリーとアルフレッドが戦うまでの時間は、それほど残されていなかった。

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