第197話 二人の時間
「あら? ユリアじゃない。帰ってきてたの?」
「エイラ先輩。どうも」
ペコリと頭を下げる。食堂にやってくると、ばったりとエイラ先輩と出会った。いつものようにきれいな桃色の髪をツインテールにしてまとめている。そして、先輩と同じ席に着くと会話を始まる。
「どうだったの? レベル5は」
「うーん。おそらくは、かなり濃いところなのである程度のレベルまでいかないと厳しいかもですね」
「特級対魔師は?」
「特級対魔師レベルでしたら大丈夫かと。しかし、魔物も僕がいた時よりも凶暴になっているようなので、それなりの耐久力がないと厳しい戦いになりますね」
情報を伝える。
それは、僕の所感だ。おそらくはここから先は戦うのもかなり厳しくなってくるだろう。ただし、戦うこと自体はできる。特級対魔師が全員揃えば、切り開くことは不可能ではない。
問題は、特級対魔師全員を外に出すことが難しいと言うことだ。
結界都市の防衛のために、何人かは絶対に特級対魔師を残しておく必要がある。それに加えて、前回の襲撃があったばかりだ。いくら復興が進んでいるとはいえ、まだその傷痕は人々の心に確かに刻まれている。
「そう……なかなか難しいわね。あの襲撃もあって、特級対魔師をあまり派遣するわけにもいかないし」
「はい。今後の戦いは、あまり物量に頼る戦闘はできませんね」
「少数精鋭ってわけね」
「そうなりますね」
互いに冷静に今の状況を分析する。そう話していると、先輩は急にシェリーのことを尋ねてきた。
「そういえば、シェリーはどうなの?」
「どう、とは?」
「いや……な、何かなかったのかな、と思って」
くるくるとツインテールを指先に巻きつけて、そう尋ねてくるがいまいち言っていることが理解できない。
「別に何もないですよ? あぁ……ただ、ここ最近のシェリーはすごく強くなっていますね。おそらく原動力は──」
「復讐ね。ベルの敵討ちでしょ? でも私はいいと思うわよ。それが生きる活力になるんなら、なんだっていいわ。それに復讐を誓っている対魔師は別に少なくないわ」
「はい。僕もそう思います」
復讐。
その根幹にあるのはベルさんの報復を果たすことだ。ここ最近、シェリーが急激に成長しているのはそのような背景があることは誰もが分かっていた。それを知った上で、止める人間はいない。
復讐にその魂を全て焼き焦がされてはいけない。何事もバランスの問題だ。それはきっと、僕たちが周りから支えてあげればいいことだ。
それに、僕だって復讐心は残っている。あの時、間に合うことができれば……そんなことは幾度となく思ってきたことだ。
「ねぇユリア。早く、世界を取り戻せるといいわね」
「はい。きっとできます。だから、進んでいきましょう」
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