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第195話 帰還する三人


 僕たちはそのまま帰還することになった。魔物の偵察も終わり、黄昏の濃度もある程度は確認することができた。


「それにしても、シェリーはすごく強くなったよね」

「そうかしら?」

「うん。ギルさんもそう思いますよね?」

「あぁ。それこそ、ベルのやつを思い出すほどにはな」

「……そうですか」


 そう。今のシェリーはどこかベルさんを彷彿とさせる。それは使っている魔剣が同じだからという理由だけではないのだろう。


 今まで培ってきた経験が、教えてもらったその技術が、シェリーの中には染み付いているに違いないのだから。


 その言葉を聞いてシェリーは表情を崩すことはなかった。もう悲しさは乗り越えているのかもしれない。いや……それは確かに、僕らの心に刻まれている。


 きっと、前に進む覚悟を保つことができた……と形容するのが正しいのかもしれない。


 シェリーは改めて腰に刺している魔剣をギュッと握ると、先頭を進んでいく。


 僕とギルさんもそれの後についていくようにして、歩みを進める。


 今は夜も近くなってきたということで、黄昏と夜の暗闇が半分混ざっているような世界だ。夜になれば、魔物は黄昏の光を浴びることはない。つまりは、その時間帯は容易に魔物を相手にできる……という話はレベル4までの話だ。


 はっきりって、黄昏危険区域レベル5になってしまえばその道理など通用はしない。


 油断せずに、魔物を戦う必要がある。


 だが僕らが戻る最中は、一体の魔物も見ることはなかった。


「……今、誰かに見られていませんでしたか?」


 その場から振り返る。視線。確かにそれを感じたような気がしたのだ。


 本当に一瞬。一瞬だけだけ、魔物ではない何者かの視線があったような……。


「いや。俺は感じてないが。シェリーはどうだ?」

「私も特に」

「僕の勘違いか……」

「いやそうとも限らねぇ。一応、報告書には上げておくべきだろう」

「分かりました」


 そう言って歩みを進める。


 この黄昏危険区域では、何が起こってもおかしくはない。それこそ、魔人が待ち受けていてもおかしくはないほどには。


 ふと空を見上げる。


 気がつけば、夜になっていた。黄昏の紫黒の光は完全に消え去り、暗闇がこの世界を支配する。


 僕らは途中で休憩を取ろうかという話も出たが、もう少しで基地にたどり着くということでそのまま進むことにした。


「……特に何もない、か」


 ボソリと呟く。


 先ほどの視線はあの一瞬だけ感じ取ることができた。そこから先は、至って平和に進むことができた。


 魔物と接敵することもなく、ただ平穏に。

 

 だが僕らはまだ気がついていなかった。新たな戦いが、もうすぐそばまで迫っていることに……。

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