第187話 新たなる任務
女王に謁見するということで、特級対魔師たちが集合することになった。以前と同じように、集合場所は同じだが……今はその序列も大きく変化することになった。
僕は特級対魔師、序列零位となり……シェリーはベルさんの後を継ぐようにして、序列一位になった。
思えば、僕とシェリーはついこの前までは学生だった。
だというのに、今この場所にいるということがとても不思議なことに思えた。
「先輩。おはようございます」
「ユリア。早いわね」
「目覚めが早かったので」
「そう。私と一緒ね」
いつもと同じように、桃色の髪を高い位置でツンテールにまとめている先輩。それにいつもと雰囲気が違って今日はとても真剣な顔つきをしていた。
「張り詰めていますが……何かあったんですか?」
思い切って尋ねてみることにした。
もしかしたら先輩も、自分と同じ気持ちなのかもしれないから。
「特級対魔師の序列が新しくなって、最初の任務でしょ」
「そうですね」
「今までの経験だけど……この直後は、誰かがよく死ぬのよ」
「……そうですか」
「まぁただの偶然なのかもしれない。けれど、私はどうにも何かあると思ってしまうの。馬鹿よね。そんなこと、あるわけないのに」
肩を竦めながら、先輩はそう言った。
僕はまだ特級対魔師になってから日が浅い。今まで序列が一新されたことなど、経験したことはない。
しかし、考えてみると……特級対魔師はずっと引き継がれてきたものなのだ。
人類が青空を取り戻すための希望として、戦い続ける。
その象徴として、僕らは上に立ち続けないといけない。
そんな当たり前の意識を先輩との会話で僕は思い出していた。
「……先輩。僕は、いなくなりませんから」
そう言って、ギュッと先輩の手を握りしめる。それは、震えていたからだ、いつも強く見えるけれど、同じ人間なのだ。
誰だって、怖いものは怖い。
僕らはそれを受け入れた上で進んでいく必要があるのだから。
「ユリア……ありがとう」
と、二人で手を握り合っていると……隣から視線を感じた。
「朝から熱わいね」
それはシェリーだった。
すっかりと失念していたが、今は廊下でばったりと先輩に出会ったので話をしていた。そんな場所で立ち止まっていれば、人が来るのも当然というものだろう。
「べ、別にこれはなんでもないのよっ!」
先輩が乱暴に手を離すので、僕もスッと体を一歩だけ引く。
「そうだよ! 別に何もないよ!」
「ふーん……まぁ、いいけどね」
半眼で僕らをじっと睨みつけたのち、三人で女王の謁見する間へと向かう。
そうしていると、他の特級対魔師の面々とも合流する。
こうして僕らは、新しい任務を直接聞くことになるのだった。