表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
186/210

第186話 新たな日々の前触れ


 しばらく結界都市での生活がメインになった。時折、黄昏へ魔物を狩りに行くこともあったが、基本的にはこの都市での生活がメイン。


 そして、取り戻した大地で基地をしっかりと構築すると……ついに、特級対魔師の面々が女王陛下のもとに召集されることになった。


 それが意味するところは、きっと新たな任務が僕らに与えられることになるのだろう。


 まだまだ人類は先に進まないといけない。


 黄昏の先にある青空に辿り着くためには……僕らはこの世界の大地を全て取り戻す必要があるだろう。と言っても、それはただの憶測に過ぎないが……進むことに間違いはないだろう。


「……よし」


 起床する。現在の時刻は、午前五時。今日の集合時間は七時に女王陛下のもとに集めることになっているので、早めに起きることにした。


 そして僕はシャワーを浴びる。


 ちょっと熱めのお湯が、頭に降り注ぐ。


 思えばこの長い髪を切ってから、しばらくが経ったが……過去との決別という意味合いでそうしたものだった。


 僕はしっかりと前に進むことができるのだろうか。


 その後、シャワーを浴びて軍服に着替えると、コーヒーを自分で淹れて読書をすることにした。


 最近読んでいるのは、恋愛小説だ。


 特に今は恋愛に焦がれているなどの理由はない。しかし、僕がそれを好む理由は……そこには、人の感情がよく現れているからだ。


 自分が魔族との混血を知ったことを機に、自分から人間らしい感情というものが欠落していくような……そんな感覚が残っている。


 人を人たらしめるものは何か。


 今の自分は何者なのか。


 そんなことをどうしても考えてしまう。


 ベルさんの死だって、時間が経過すると共に風化していくような気がしてしまうのだ。


 決して忘れたくはない。ベルさんだけではない。他の人の死も受け入れた上で、進むと誓っている。だというのに、それは感情的に思っているのではなく、ただの記憶として保持しているような。


 そんな形容し難い感覚。


 だから僕は物語から、人の感情の機微を読み取ることにしているのだ。


 そうしてしばらく時間が経過すると……六時半を回りそうになる。そろそろ移動した方がいいと思い、軍服に袖を通す。


 姿見の目で自分の姿をしっかりと確認する。


 今日もまた、いつも通りだ。

 

 だから僕は、いつものように任務をこなす。大きな変化には、劇的なものは必要ない。ただ小さな毎日の積み重ねこそが、自分を大きな変化へと誘ってくれる。


 僕はそう思っている。


 そして、自分の部屋を後にする。


 夜が明け、黄昏の支配する時間がやってきた。この紫黒の光を体に浴びながら、僕は進んでいく。


 人類に青空を取り戻すために。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ