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第173話 謁見直前


「見てあれって」

「人間らしいよ?」

「えー! 人間って、まだ生きてたんだ!」

「でも一人、男がいない?」

「うんうん、超可愛い!」

「食べても良いのかな?」

「え〜、どうなんだろ?」

「でも女王のところに行くらしいよ」

「あ、そうなんだ。じゃあ我慢しないとね」


 そんな会話が僕の耳に入ってくる。


 そして僕に注がれる視線は、それはもう背筋が凍りつくような……そんな恐ろしい視線だった。油断していれば、とって食われてしまいそうな。


「ユリア、何ビクビクしてるのよ」

「先輩。その……視線が怖くて」

「あぁ。まぁ確かに露骨過ぎるわね」


 現在はキャサリンに案内を頼んで、僕、先輩、リアーヌ王女で歩みを進めている。リアーヌ王女はキャサリンの隣に並んで、改めてこのサキュバスの国について色々と聞いているようだった。それに対して、キャサリンも真面目な顔つきで会話をしている。


 そんな中、後ろに僕と先輩はそんなことを話していた。


「うぅ……先輩、怖いですよ」

「もう。しっかりしてよねっ!」

「でも仮に先輩が多くの男性からこんな視線を送られたら……どう思います?」

「う……それはまじで怖いわね」

「でしょう? まさにそんな気分なんです……」

「もうっ! しょうがないわね!」


 僕が怯えていると、隣にいる先輩はそっと手を握ってくれる。


「こ、これでマシになった?」

「おぉ! ありがとうございますっ! 先輩は天使ですね……!」

「ちょっとそれは言い過ぎでしょ」


 いや、決して言い過ぎなどでは無い。


 なんというべきか、男としての生存本能がやばいと訴えかけてきているのだ。サキュバスに捕まれば、死ぬまで搾り取られると。


 そんな中で先輩の小さな手は僕に大きな勇気を与えてくれる。


 というよりも、視線を送っているサキュバスたちは絶対に誘惑の類のスキルを使っている。僕はそれに呑まれることはないが、やはり精神的にダメージはある。


「それにしても、質素な場所ですね。エルフの村と同じ……に見えますね」

「そうね。でも今の世界で立派な建物を作るのは難しいでしょうね。それにサキュバスは女性しかいないようだし、力仕事は厳しいでしょう。人間が特殊なのよ」

「そうですよね……」


 サキュバスの国とはいうが、実際は村と形容した方が正しいかもしれない。森の中にある建物は、全てが木造なようだし大きなものもない。全てが小さなもので、そこで何人かが一緒に暮らしているのだろうか。


 そして僕らはそのまま突っ切るようにして進むと、視線の先に一際大きな建物があるのを視界にとらえる。


 きっとあそこが、サキュバスの女王のいる場所なのだろう。


「……あそこみたいですね」

「そうね」


 

 そして僕らはついに、サキュバスの女王に謁見するのだった。

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