表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
172/210

第172話 サキュバスの国


 翌朝。


 僕ら四人はさらに歩みを進める。

 

 そして急に霧が濃くなってきた時、キャサリンがこう言い始めた。


「きっともうすぐよっ!」

「そうなの?」


 僕がそう尋ねると、彼女は声を弾ませてさらに続ける。


「えぇ! この霧は結界の一種なのっ! きっともうすぐよ!」

「……」


 僕、先輩、リアーヌ王女は視線を交わすとそれぞれが警戒態勢に入る。特に僕と先輩はどこから奇襲されてもいいように準備をする。僕もすでに魔法を展開するだけの準備は整えている。


 一秒後に戦闘が始まってもいいように、意識をただただ高めていく。


 そして僕たちの視界に入ったのは、森だった。でもそこの奥には、しっかりとした建物が存在していた。外見で言えば、エルフの村に近いが……この雰囲気はどこか違うもののように感じた。


「あ! みんなだー!」


 キャサリンは仲間を見つけたのか、そのままパタパタパタと走り去って行く。


「ん? キャサリンじゃない!」

「え!? 生きてたの!?」

「あんたいつまでも帰ってこないと思っていたら!」

「もう! てっきり死んでいると思ったわよ!」


 サキュバスと思われる集団の中に向かうキャサリン。そして彼女は頭を掻きながら、こう答えるのだった。


「あ、あはは〜。実は人間のところに迷い込んでいて……」

「えぇ……人間のところって、あんたも不用心ねぇ」

「待って。あそこにいるのって、人間じゃない?」

「ほんとだ。でもあれって……」


 全員の目がこちらに向くと、リアーヌ王女が僕と先輩の前に出ていく。


「初にお目にかかります。私はリアーヌと思うします」

「エイラよ」

「ユリアです」


 フルネームを言うことなく、リアーヌ王女が淡々と言葉を続ける。


「私たちは人間を代表してきました。もし良ければ、サキュバスの女王に謁見したいのですが」


 毅然とした態度でそう告げると、そこにいるサキュバスが慌て始める。


「え!? 人間!?」

「ちょっとキャサリン! これはどう言うことよ!」

「裏切り!? キャサリンが裏切ったの!?」

「うわーんっ! もうお終いよぉ……!」


 それぞれが慌て始め、泣き始めるサキュバスもいた。そんな中でキャサリンは頑張って声を上げる。


「ちょっと! その、この人たちは……大丈夫よっ! 私にも優しくしてくれたし!」

「本当なの?」

「でも見てあれって」

「えぇ。男、男よ」

「なかなかいい顔じゃない。私、イケるかも!」

「ちょっと可愛い系だけど、確かに唆るわねぇ……」


 その絡みつくような視線に僕は嫌な予感を覚える。


 その瞬間、エイラ先輩の足が僕の足を思い切り踏みつけた。


「いったッ! ちょっ!? 何するんですか!?」

「別に? ただユリアが油断しないように、そうしただけよ」

「くぅ……理不尽だ……」


 そして僕らはこの喧騒の中、なんとか女王の元へ案内してもらうことになるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ