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第170話 Departure


「では行きましょうか」

「はい」

「えぇ」

「やっと帰れるわね〜」


 僕ら四人はサキュバスの国へと向かうことになった。その道中は黄昏危険区域に入ることにもなるが、今は僕らの領地でもある場所が多いのでそれほど危険はないはずだ。


 僕と先輩はバックパックを背負い、リアーヌ王女もまた小さめのものを背負っている。一方のキャサリンは手ぶら。でも妙にニコニコとしながら、歩みを進めている。


 実際のところ、キャサリンも早く帰りたかったのだろう。仲間もおらず、ただ人間の世界にたった一人で来た彼女。とてもいい子で、人間にも敵対する様子などなく、ただ満喫していたようにも思えるけどやはり……自分の国に戻れるというのは違う感覚なのだろう。


「ユリアさん」

「なんでしょうか」


 前方で歩みを進めるのは僕とリアーヌ王女。後方には先輩とキャサリンが位置している。そんな中、リアーヌ王女は僕のそばに並ぶとそう話しかけて来た。


「今回はありがとうございます。わざわざ付いて来てくれて」

「これも任務ですから。それに、リアーヌ王女の力になれるのでしたら喜んで引き受けますよ」

「そうですか。ありがとうございます」


 にこりと微笑むその笑顔はいつものように美しいものだった。


「しかし……時折思うのです。もし、ベルがいたらと……」

「リアーヌ王女……」


 それは悲壮感が漂っているというよりも、ただ淡々と事実を告げているような感じだった。


「ベルはずっと私の側にいました。きっとこの遠征にも、生きていたら一緒に来てくれていたでしょう」

「それは……そうですね。ベルさんは、あなたのことをすごく大事にしていましたから」

「えぇ。でもね、だからこそ……私は自分の足で立ちがあるべきなのだと、思うのです。いつかあの日に、ユリアさんが言ってくれたように」

「それは……いえ、僕の言葉が力になったのなら……良かったです」

「これからは、ユリアさんが私の側にいてくださいね?」

「……え? ま、まぁ……できる限りは力になりますよ」

「ふふ……ま、そういうことにしてあげましょう」


 と、人の悪い笑みを浮かべるとそのままスッと後方へと彼女は下がっていく。


 一体なんだろうか? と思いながら僕らはさらに進んでく。


 そうして僕らはついに、完全に人間の領土から離れた黄昏危険区域にやって来た。ここから先は、魔物と遭遇しておかしくはない。僕と先輩はすでに臨戦態勢に入っている。ちなみにリアーヌ王女はもちろんだが、キャサリンも戦闘を行うだけの力はない。


「キャサリン……ここからの道、覚えてる?」

「もちろんよ! 確か……こっちねっ!」


 彼女の言葉に従うままに、道を進んでいく。幸いなことに、魔物に遭遇することはなかった。そして日も暮れ始めたので、僕らはとりあえず野宿をして休むことになるのだった。

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