第169話 準備開始
ということで、僕、先輩、リアーヌ王女、それにキャサリンの四人でサキュバスの国へと向かうことになった。
キャサリンの話によると、彼女たちの国は黄昏危険区域レベル3付近にあるらしい。また結界が張ってあり、普通は見つからないとか。彼女を盲目的に信じるわけではないが、キャサリンの情報だけが頼りなのだ。
とりあえず今はその情報を元に計画を立てている最中とのことだったが、すでにリアーヌ王女が計画自体は作っており、それを上に通して認可も降りたらしい。
そもそも、サキュバスの国は僕らが取り戻した大地から場所も近く、割とすぐに移動できるということで僕、先輩、リアーヌ王女が代表として視察に行くことになったらしい。
「ねぇ〜、ユリア〜」
「どうしたの、キャサリン」
「早く行かないの〜?」
「まぁ出発は一応明日だから」
「えー! 早く戻りたいのにー!」
現在は僕の部屋でキャリンがベッドでゴロゴロしている。明日の朝から出発するということで、今は明日に備えて準備をしてから睡眠を取ることになっている。
まぁといっても僕はそれほど眠らなくても大丈夫なので、別にいいのだが……諸々の準備は整えておきたかった。
「それ、何入れてるの?」
「ん? まぁ……必要になるものかな。缶詰とか、食料と水分も一応ね」
「食事は出してくれると思うけど?」
「それでも念のために……だね」
「ふーん。そっかー」
キャサリンはそう納得してるようだが、僕は念のために武器の類も忍ばせている。戦闘にならないという保証はない。それに先輩はまだしも、リアーヌ王女は戦うだけの力はない。
そんな時になればきっと僕が戦うことになる。彼女を守りながら。
だから、準備はしっかりとしておく。
サキュバスは人間に敵対していないとはいえ、百聞は一見に如かず。何が起こるかなど、まだ分からないのだから。
「そういえば、サキュバスの女王はどんな人なの?」
探る意味も込めて聞いてみた。といっても普通に興味があるのも当然なんだけれど。
「うーん……超美人! だけど、割と怖い……」
「怖いの?」
「そうなのよ! 怒ったらもうすごいんだから! 魔法の技量もすごいんだから!」
「へぇ……なるほど」
「えぇ。絶対に怒らせないほうがいいわよ」
「いや別に何かしようとは思ってないけどね」
「いやいや、あの人は理不尽なことで怒ったりもするから。気をつけさない」
「えぇ……理不尽なことで怒るの?」
「そうよ。こっそり食事をつまみ食いしたりとか、そんなことで怒るの」
「いやそれは……キャサリンが悪いでしょ」
「うぐ……ま、まぁそれはいいとして……」
ごまかしたな。と思いながら、僕らは会話を続けて行く。
「とりあえず、女王の前ではしっかりとしておくことね!」
「そうだね。心に留めておくよ」
こうして僕らは眠りにつく。
明日になればついにサキュバスの国に向かう。
僕らは再び進み始めた。幾多もの死を乗り越えて先に進んで行く。
そうしていつか、この黄昏の先にたどり着くのだと……そう思いながら、微睡みの中へと落ちて行くのだった。