3話 母の声
誰にでも平等に与えられるものはなんでしょう。
なぞなぞのようで哲学的な質問に、やはり俺は哲学的に答えるだろう。
「生」と「死」と。
では、「生」と「死」とはなんですか。
「答えなんてない」なんてかっこつけた答えを言う気はない。
普通に答えはあるし定義は存在するのだから。ただその定義が曖昧すぎてわからない。
つまり正解は、「答えを知る方法がない」、つまり「わからない」であろう。
じゃあ最後の質問。ある日一人の少年が地球から突如いなくなりました。
その少年は何日たっても、何月がたっても、何年がたっても、決して見つかることはありません。
ではこの少年は「死んでいるのでしょうか」。
社会的にいなくなり誰の記憶からもなくなった少年は生きていると言えるのでしょうか。
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それもまた、答えは「わからない」である。
たった当人を除いては。
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「起きなさい。起きなさい。我が愛しい子よ。」
まるで脳そのものにかけられているような心地よい声が聞こえる。
甘く優しくそして諭すような慈愛のこもった声だ。
やけに重たい瞼をゆっくりとあける。
視界には光輝を放つ小さな太陽のような浮遊物とそしてどこまでも幻想的な勿忘草色の空が広がっておりさらに虹色のアーチがかかっている。
「まだ眠いですか?でももう起きなくてはいけませんよ。」
視界が急に暗くなったと思えばまたも心地よい声と一緒に優しくみつめる女性の顔がみえる。
「愛おしい我が子よ。破壊神と維持神の子よ。新たな神になる者よ。目を開け口を開き自らの存在を示しなさい。」
その声はやはり美しくそして優しかった。
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なにをいってるんだろう。破壊神と維持神の子供よ?我が子よ?
おれの両親は5年も前にもう他界してしまってるんだ。
破壊神とかどんな厨二病だよ。
というかここはどこだ!?
「うあぁ、あうばぁあばあぁうえぇあ」
ここはいったいどこだ、そういおうとしたが呂律が回らない。
首もなぜか固定されているかのように動かないから視線だけ動かして自分を見る。
————なぜか足がやけに大きく見える。………顔から足までがみじかい。遠近法っていう奴か。
視線をずらし左手と右手を交互に見る。
小さい。まるで、赤ちゃんのようだ。
やけに短い胴体と小さい手足、呂律がまわらない、首が動かない。
当然さっきまでは高校生だった。それがいきなり赤ちゃん化。
幼児退行なんて特殊な病気を持ってる気はない。
どうやら俺は、転生をしたようだ。