閑話010
カチャカチャ
と澄んだ音を響かせながら、馴れた手付きの給侍達の手によりテーブルの上で着々とお茶会の準備が整えられていく。
……結局ここまでズルズルと連れてこられてしもうたの……まぁ、抵抗なぞ出来るわけも無いんじゃが……。
―――あの後、“海の”に連れてこられたのは巨大な屋敷を思わせる二階建ての建物であった。“海の”曰く喫茶店(?)と言うことらしいのだが、何故わざわざこんな巨大な屋敷を店舗としているのか……。
しかし、話を聞いてみると元々貴族の屋敷だった物をその家が取り潰しとなった際、知り合いだった店主が買い取り喫茶店として改装したそうだ。それと、これは余談だが屋敷で働いていた給侍や料理人も合わせて雇い入れたとの事。
今居るのはその屋敷風な喫茶店の二階。テラスとなっている部分にテーブルを出して貰い外でお茶会の準備中だ。
座っているのは私と青い髪を靡かせ微笑みながら対面に座る“海の”。
そして、テーブルには空いている席がもう一つ。……まぁ、誰が来るのかは何となく察しているが。
「それにしても本当に久し振りね。何年振りかしら? 」
「お主が海沿いの町を軒並み壊滅させて、まとめてお説教を喰らったのが最後じゃから……500年くらい前じゃろ」
「んーそんな事もあったかしらね」
顎に手を当てて態とらしく惚けて見せる“海の”その時の事を思うと怒りが込み上げてくる。
「お主が力加減を間違えたせいで儂までとばっちりを受けたのじゃ、忘れわせんからの……! 」
「もー怖い顔しちゃって……折角の可愛い顔が台無しよ♪ 」
……はぁ。まぁ言っても無駄じゃし、あんまり機嫌を損ねるのも問題じゃな……。
せめてもの抵抗とばかりに大きくため息など吐いてみるも、こちらの事など眼中に無いようで。バスケットとケーキスタンドに置かれていく菓子類に興味津々な“海の”。
そうこうしている内に茶会の用意も整い、給侍達も一人を残して去っていく。それと入れ替わり、入って来たのはニコニコと微笑みを浮かべた好青年……。
年の頃は20代前半……と言った所だろうか。短く切り揃えられた金髪を海風に靡かせながら、迷いの無い足取りでこちらへと向かってくる。
はぁ……。
その姿を見た途端にまたため息が漏れ出る。
「やぁ、素敵なお嬢さん方。ご一緒して宜しいかな? 」
「えぇ、貴方の為に用意していたんですもの。どうぞお好きになさって下さいな」
「それは、ありがたい。ではお言葉に甘え……ん? そちらのお嬢さんは何かご不満かな? 」
「不満……まぁ、そうじゃな。色々と言いたい事もあるが……先ずは座れ、そこに立って居られたのでは落ち着かん」
「そうかい、じゃあそうさせて貰うよ」
給侍が椅子を引くのに合わせ、優雅な動作で席に着く青年。その見た目も合間って、さながら良い所のお坊ちゃん。と言った風情があるが……。
「……で、お主は何をしに来た? 連絡があれば念話で事足りるだあろう? 第一仕事はどうした、仕事は」
「うーん……一応、これも仕事ではあるよ? まぁ、わざわざ現界する必要は無かったけど丁度良かったしね。それに、この体は分体だ。本体は今、ひーこら言いながら彼女と一緒に仕事中だよ」
そう言って、中空を眺めながら楽しそうに笑う青年。
……はぁ、成る程。まぁ、こやつならその程度造作も無いか。
「で、他に質問はあるかな? 」
「いや―――」
「ねぇ……終わった? 早くしないと折角の紅茶が冷めちゃうんだけど? 」
こちらだけで会話しているのが気に入らなかったのか、儂の言葉に被せるようにして言い放つ“海の”
そして、その意見に賛同するかのように首肯する青年。
……はぁぁぁぁ。
「おぉ! それは大変だ! もう良いよね? 何、質問はお茶を頂きながらでも良いからさ」
「……はぁ、もう良い」
「じゃあ、頂きましょ」
それぞれが、目の前にあるカップを手に取りお茶を頂く。
超上の存在達によるお茶会が幕を開ける(?)。
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