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閑話009


暗い路地裏。そこに突如黒い穴が開く。


ぬっ、と現れたのは独特の白衣を羽織った少女。


少女は辺りを軽く見回し、人気が無いのを確認すると直ぐ様行動を開始する。


誰も居なくなった路地裏に、先程開いた穴は既に無い。







―――――――――――――――






トン


と軽い音をたて地面に足を着ければ、五感に届くのはしつこいくらいの磯の香りと活気溢れる人々の喧騒。


……どこかの港町かのぉ……。海の近くはあまり来たくなかったんじゃが……まぁ仕方あるまい。それに、そんな事を行ったらどこにも出歩けんしの。


ぶつぶつと独り言を呟きながら暗い路地裏から、大きな通りに出る。


通りに出れば、先程まで聞こえてきた喧騒がより耳に入ってくる。通りは人で溢れ、多種多様な人々がそれぞれの目的にそって動いている。


人、獣人、その他様々な人種の人々が行き交う通りをフラフラと当てどもなく歩き回る。


……ふむ……これだけの多様な種族がおるという事は、ここは帝国か聖王国のどちらかじゃろうな……。東側諸国では居ても獣人種がせいぜいじゃろうし。


適当に目についた物を買い求め、両手に抱えたそれらを頬張りながら、思考を巡らせる。


……しかし、これからどうするかのぉ……。あそこに戻って、またちょっかいを掛けられても堪らんから取り敢えず適当に転移したは良いが、いつまでもフラフラしとる訳にもいかんしのぉ……。


巡らせる……が、これと言って良案が浮かぶ訳でもなく。ただただ時間だけが過ぎていく。


人混みに紛れ、あちこちの出店で食糧を買い漁りつつ歩いていた。そんな時、あの喧しい声が聞こえてくる。


『おやおや、君が他の子達の近くに来るなんて珍しい事もあるもんだね』


(……何の用じゃ)


『用って程じゃ無いけどね、近くで“海の”と話してたら君が来たみたいだから珍しい事もあるもんだなぁ……と思ってね』


(用が無いなら話し掛け……今、何と言った? )


悪寒がする。サラリと告げられた内容。そのどこに引っ掛かりを覚えたのかは定かでは無いが、聞き返さずには居られなかった。


……だが、この時には既に選択を誤っていた。聞き返す事などせず、即座に転移するべきだったのだ。


『え? 珍しい事もあるもんだ……』


(その前じゃ! )


『えぇと……近くで“海の”と話してる? 』


(なん……じゃと……! して! “海の”は今どこに!? )


『んー……君が来たのを感じてから移動してるから、もう少しで君の近くに着くんじゃ無いかな? 』


(っな……!)


そんな暢気な返しをしてくる神を無視して転移の魔術を構築、慌ててその場を後にしようとした……その時。


ポン


と肩を捕まれる。


「“霧”ちゃん見ーつけた。そんなに慌てて何処に行くの? 」


ギギギギギ、とまるで壊れた玩具の様に振り返ってみれば、そこには何処か修道服を思わせる衣を身に纏った女性が一人。


空を思わせる水色の髪は肩ほどで揃えられ、海を思わせる瞳は青く澄んでいる。自分より一回りほど大きい身長、そしてそれとは裏腹に大変悩ましい体つきをしている修道女……否、前に会った時とは大分様変わりしているが、この雰囲気間違い様がない。


「ひ、久しぶりじゃな……“海の”」


「えぇ、お久しぶり」


「うむ。では、儂は少し用事があるのでな。これで失礼させてもらうぞ」


「ダメよ」


挨拶だけを交わし、さっさと退散しようとするもガシッと肩を掴まれ阻止された。


ニコニコと笑ってはいるが、その笑顔が今は怖い。


「さっ、折角会えたんだもの。一緒にお茶でも飲みましょう? 」


そのままズルズルと引き摺られる様にして連れていかれる。


……うぅ……何故さっさと転移しておかなかったのだ……

お読み頂きありがとうございます

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