0081話 sideコンラート
二人が訓練所を後にしたのを確認してから、ギルド長達と共に移動する。向かうのは昔馴染みの悪人づ……人相の悪い男がギルド長を務める部屋。
部屋の中央にデンと置かれた大きなテーブル、それを囲むようにして配置されたソファーへと腰掛ける。副ギルド長に飲み物を持ってくるよう指示をして、対面へと座る友人を視界の端に入れながら、改めて部屋を見回す。
テーブルから少し離れた所には、執務用と思われる立派な机と、その上に積まれた書類の山。机の横には箱に詰められた書類も見受けられるので、仕事はそれなりにこなしている事も伺える。
そして、部屋を囲むように本棚がずらりと壁際に配置されており、幾つもの本がところ狭しと並んでいる。……本なんか金持ちの道楽だ、とか言ってた癖に……良くもまあ、こんだけ集めたもんだ。
コトリ
部屋を見回し、要らぬ思考に耽っている間に副ギルド長がお茶を淹れてくれたらしい。目の前に置かれた品の良いカップからは、綺麗な琥珀色のお茶が注がれており、一口啜れば豊かな香りが口の中に広がる。……獣王のとこで昔飲んだ茶より旨いな。
「旨い」
「ほんと、美味しいわ」
「……ありがとうございます」
茶なんぞほとんど飲んだことが無かったが、思わずそんな言葉が漏れてしまうくらいには旨かった。
「……さて、さっきはどっかの馬鹿が飛び出していってまともに話せてなかったが、続きと行くか」
「おい、馬鹿とはなんだ、馬鹿と……いや、何でもない。だからその拳を下げてくれメイア」
「……分かれば宜しいのです。今度同じ事をしたら……分かってますね?」
「……おう」
「ははっ! 尻に敷かれてやがるなダント! 」
「うるせぇぞ、コンラート! 大体、原因はおめーの連れてき……ダファッ!」
反論しようとした昔馴染み……ダントの口を縫い止めるかのように、副ギルド長……メイアの拳が唸りを上げて弛んだ腹へと突き刺さる。
「分 か っ て ま す ね ? 」
「……はい」
「ははははは! 面白すぎるだろ! 」
「うる……くそぅ……」
腹を抱えて笑うこちらへ、反論しようとするもメイアが拳を上げるなり、すぐさま黙り混む友人にまた笑いが込み上げてくる。
……昔は“戦鬼”だなんだと言われちゃいたが、この嬢ちゃんの前じゃ形無しだな……。
「あなた、そろそろ……」
「おう、分かってる」
アマーリエからの制止を受け、笑いを止め表情を引き締める。……これから話すことに笑いは不要だ……重要な話と言うのもあるが、何より多くの死人が出るだろうからな。
「ダント」
「……ちょっと待て……ふぅー……はぁー……。よし、良いぞ、で? 何を知らせに来た、あの鬼子達の事だけじゃねぇんだろ」
「それもあるがな、あの元近衛の坊主……ラーンにも注意されたし、先に報せておいた方が良いと思ったしな。だが、確かに本題はそれじゃねぇ」
「……」
ダントが息を整えるのを待ち、何から告げるべきかを考える。……変に回り道するのも良くねぇか、取り敢えず本題を話すとしよう。
静寂に包まれた室内で、ゆっくりと口を開く。
「戦争が始まる」
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