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0078話


「準備は良いか? 」


「押忍」


オロスとギルド長、3m程距離を置き、互いに向き合い構えを取る。オロスは素手(ただし、ガントレットとレガースは着けたまま)対して、ギルド長は自らの体と同じ程度の長さを持つ鉄の棒を両手持ちで構える。


……しかし、こうして見るとやっぱりオロスはデカいな……。あのおっさ……じゃなくてギルド長も決して小さい訳では無いが、2m近くあると思われるオロスの前では正直見劣りする。


身長だけではない。体格も、ガッチリとした体つきをしているギルド長ではあるが、オロスを前にすると二回り程小さく見える。


沈黙が続く。いっそこのまま永劫に時が過ぎ去ってしまいそうな程、互いに動きを見せない。


しかし、それも長くは続かない。先に動いたのはオロスだった。


素早く距離を詰め、体重の乗った拳をギルド長目掛けて振り降ろす。ガィン、と金属同士がぶつかる音。互いの眼前で火花が散る。


初撃は防がれた。だが、そんな事は分かりきっているとばかりにオロスの猛攻が始まる。


左をメインにした拳の連打。時折、不規則に軌道を変えるような拳を放ち、ここぞ、と言う瞬間に右の拳を放つ。相手が距離を詰めようとすれば前蹴りで無理矢理距離を放し、遠くなれば上段目掛けて蹴りを放つ。


それは、まるで嵐のような猛攻。一度飲まれれば、後に残るのはボロボロとなった残骸だけであろう。そう当たればの話だ。


オロスは幾度となく、手を変え品を変え、様々な角度、方法、リズムでそれらの攻撃を組合せ繋げていくが、その全ては届かない。ギルド長の持つ鉄の棒によって、受け、払い、流されていく。


徐々にオロスの顔に、焦りと疲労が見え隠れし始める。対してギルド長は涼しい表情。


「っ……はぁ! 」


業を煮やしたオロスが気合い一声、懐に飛び込む。勢いそのままに体を丸め、肩から突っ込む。


激突。


さしものギルド長もふっ飛ぶかに見えた……が、結果は真逆。地に倒れ伏したのはオロス。ギルド長はその場から一歩たりとも動いてはいない。


……今、何をした? ギルド長が手元で棒を動かしたのは分かる。だが、それと今の結果が全く結び付かん……。


しかし、理解は追い付かなくても結果は一緒。立っているのはギルド長、そして荒い息を吐き、地に伏しているのがオロスだ。


そのギルド長は何度か棒を握り直した後、オロスを見下ろし口を開く。


「センスは悪くねぇ、それなりに力も速さもあるし、最後のぶちかましもタイミングは悪くなかった」


滔々と語るその言葉は、先程の反省を促す物の様であり、また何かを求める独り言の様でもあった。


「だが、いかんせん型にはまり過ぎだ。テンポを変えてみたり、軌道を変えるのは確かに有効ではあるが、肝心の技の出が全部一緒だ。それじゃ通用せん」


「……押忍」


「まぁ、どこで習ったのかは知らんが、きっちり練られた良い技と連繋だ。生かすも殺すも自分次第、励めよ」


「押忍……! 」


息も絶え絶えながら返事をするオロスを見て満足そうに頷きを返すと、そのまま壁際へと向かっていくギルド長。


向かう先には、楽しそうに談笑するエリとコンラート夫妻達の姿。……あれ? いつの間に?


どうやら、オロスの戦闘に夢中になりすぎて視界に入っていなかったらしい。……ふむ、一点に集中してると見えづらくなるのか……また発見だな。


「おう、どうだよやってみた感想は? 」


「まぁまぁって所だな。でも、ここ最近じゃ一番先が楽しみではある」


「そうか、で? 」


そう言って、何やらオロスの評価を始めたと思えば、こちらを真剣な目で眺める二人。しかし、次の瞬間にはギルド長がニヤリと笑みを浮かべ再び口を開く。


「まぁ、俺もお前もいるし大丈夫だろ。それに今は“百鬼”の坊主もいる、何かありゃあいつに投げれば問題ねぇ」


「あん? あいつ今はこの国にいるのか」


「あぁ、今やこの国のトップ様だ、抜かれたな」


「抜かせ、まだまだあの小僧には負けん」


「言ってろ、言ってろ」


「なんだと―――」


「やるか―――」


次第に険悪になる二人。それを見て、アワアワと慌てるエリと、あらあらうふふと頬に手を当て和やかに微笑むアマーリエの二人。


そして、相変わらず荒い息を吐き立ち上がれないオロス。


……はぁ……何でも良いけど少しはオロスを気にしてやれよ……。

いつもお読み頂き有難う御座います。

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