0075話
あたーらしい、あーさがきた。きぼーのあーさだ……いや、すまんやってみたかっただけだ。
時刻は朝。夜明けの日が昇ると共に、部屋に備え付けられた採光用の窓から光が射し込んでくる。
……まぁ、まだ早朝と言っても差し支えない時刻なのでオロスは寝ているけどな。あっ、夜の間は適当に影を移動しながら街の中を見て回ってたよ。
街の雰囲気、と言うかはまぁ……良かったのかな? 流石に、夜明け近くまで酒場らしき所で騒ぐ声が聞こえてきたのは驚いたが……活気がある、って事にしておこう。
……その際、何人かすれ違ったりもしたんだが、コンラートみたいにこちらに気付いた人は0。そのお陰で自分の事に気がついたコンラートがおかしいのだと分かった。……まぁ、分かる人にはバレるけど、殆どの人は気が付かないって事が分かっただけでもプラスかな。
そうこうして、フラフラとしたあげく。そろそろ夜明けが近い頃にここへ戻ってきてオロスの影に戻ってきたんだが……まぁよく寝てること……。これならもう少し散策してても良かったかもしれん。
「……ふごっ! 」
と、そんな事を考えていたら、奇怪な声を発して飛び起きるオロス。そして、ガントレットを填めたままの手で腹をボリボリと掻き出す。……いや、親父くせぇ奴だな……。
―――――――――――――――
その後、眠い目を擦りながら部屋を出るオロスと共に下の階へと向かえば、オロスを除く全員が揃っていた。ただ、エリだけは目を擦りながらアマーリエさんに髪を梳けられていたので、起こして貰って今まで世話を焼いて貰っていたのだろう。
「おう、起きたかオロス」
「はい、お早う御座います」
「おはようさん。ちと待ってろ、サロメが飯の準備してくれてっからよ」
「? ……はい」
そう言って、オロスを座るよう促すコンラート。オロスもいまいち状況が分かっているのかいないのか、促されるまま返事をして空いている席へと腰かける。
……寝床の提供だけじゃなくてご飯まで……神様みたいな人だな……いや、熊だけど。
そうして、暫く談笑を続けていると昨日と同じように奥から巨熊……サロメさんが出てくる。
「ほれ、飯だよ! 」
「おう! 待ってたぜサロメ、お前と旦那の飯は最高だからな」
「ふん、褒めたって何も出やしないよ! 」
そう言って会話を打ち切ると、次々に厨房とこちらを往復して料理の入った皿を並べていくサロメ。籠に入った焼きたてと思われるパンに、生野菜を使ったサラダ。卵を溶き入れたスープに、良い色に焼き上がった肉と朝から大変豪華な料理の数々がそれぞれのテーブルに所狭しと並べられていく。
「あ……あの……」
「ん? どうしたんだいお嬢ちゃん」
「おじょ……いえ、私達お金払ってないけどこんなに一杯貰ってしまって良いの? 」
「なんだい、そんな事気にしなくても良いんだよ。第一、支払いなら昨日の内にそこのコンラートから貰ってるからね。それに―――」
「それに? 」
「あんた達の事はそこの馬鹿から聞いてるよ。悪いと思ってるなら夜も家で食ってきな、代わりに部屋は無料で提供してやるよ」
「いや、それは貰いすぎ―――」
「ただし! 」
サロメの申し出に反論しようとしたエリの言葉を止め、再び口を開いて話し出す。
「家は旦那と二人きりで商売してるからね、人が足りないのさ。だから、それでも悪いと思うなら、朝の仕込みだけでも良いよ。少し手伝っておくれ」
「っ―――!」
目許を優しく細め、正面から微笑みかけるサロメ。その提案に、思わず口を噤んだエリの目に浮かぶのは涙。
「それなら良いかい? 」
コクン、コクンと声を出さず、ただ人形のように首を上下させるエリ。そうして、そんなエリを見守る大人達とオロス。
「よし、ならさっさと食べな! 冷めたら折角の料理も台無しだよ! 」
その言葉を合図に、待ってましたとばかりに並べられた料理を楽しむ面々。
……暫くはここが拠点になりそうかな―――
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