0074話
現在我々を乗せた馬車は大通りを走り抜け、一軒のお店の駐車スペースに停車していた。無言のまま歩き出すコンラート夫妻を、慌てて追いかけるオロス達。
ガチャ
「サロメー! 世話になりに来たぞー! 」
入店早々、大声でそう呼び掛けるコンラートさん。中には誰も居ない……いや、幾つものテーブルが並べられ、飲み食いをしていたと思われる跡があるので居なくなった後なのだろうか?
「なんだい、五月蝿いね! 」
そう言って、やや甲高い声を響かせながら出てきたのは……熊。……熊? いや、熊のような獣人。身長は大体オロスと同じくらい……いや、若干背筋が曲がってるから、伸ばしたらオロスよりでかそうだな。
そんな、突然現れた巨漢……いや、巨女に道中でも何度か見た、人懐っこい笑みを浮かべ話しかけるコンラート。
「おう、サロメ。久しぶりだな」
「ん? あんた、コンラートとアマーリエかい? はー全然変わってないねぇ」
「そうか? 最後に世話になってから20年近く経ってるんだが……」
「いや、あんたその顔で50過ぎてるとか詐欺だよ、詐欺」
「詐欺とはなんだ、詐欺とは人聞きの悪い。大体だな―――」
そう言って、オロス達二人……いや、キャッシャーさんも唖然としているので……三人を置き去りのまま会話がヒートアップしていく二人。
……知り合い……なんだろうな。しかし、50過ぎてるって、えぇ……あり得ないでしょ……普通に30代くらいだと思ってたよ……。
そして、静かな店内で二人の言い争う声だけが響き続けるのであった。
―――――――――――――――
それから、どれくらい時間がたっただろうか。既にオロス達も何とか事情を把握し、適当な椅子に腰かけて過熱していく二人の様子を静観していた。
……止めないのか、って? いや、だって真っ先に止めるべきアマーリエさんが、最初に椅子に座ってのんびりしだしちゃったもんだから……ね?
ある程度、言いたい事を言い終えたのか漸く落ち着いた二人は本題を話始めていた。
「で? 来たのは良いけど、こんな時間だから宿を見つけるのも面倒で家に来たってことかい? 」
「そう言うことだ。元々宿屋だったのを飯屋にしてんだ、部屋は余ってんだろ? 」
「そりゃ余っちゃいるけどね……大して手入れもしてないけど良いのかい? 」
「構わねぇさ、折角街に着いたのに野宿じゃ最悪だしな」
「あんたはそれで良いだろうけど……あんた達もそれで良いのかい? 」
そう言ってオロス達へ確認してくる巨熊。コンラートの野宿、と言う言葉に反応したのか、全員が頷きで返す。……まぁ、どんな部屋でも屋根の在る所で休むのと、野宿じゃ雲泥の差だよな……。
「そうかい、なら部屋は二階だよ。好きな部屋使いな」
「おう、助かるぜ」
「ふん。早く行きな! 」
照れ臭そうにそっぽを向いて頬を掻く熊。そんな熊に各々礼を言いつつ、コンラートに連れられ二階へと上がっていく一行。ギシギシと木が軋む音をたてながら上がっていくと、見えてきたのは一つの通路に幾つもの扉。
同じような作りの扉の列は、確かにここが宿であった時の名残なのであろう。……ただ、手入れをしていない、と言う割りにはどの扉も綺麗に研かれていたが……。
「じゃあ、今日はここまでだ。オロス達は明日ギルドに行くんだよな? 」
「あ、あぁ」
「なら、取り敢えず明日も着いてこい。序でに色々と案内してやる」
「あの、色々とお世話になります」
ぺこり、と頭を下げるオロス達へ適当に払うような仕草で返すコンラート。そうして幾つか明日の確認をして、各々部屋に入っていった。
オロスは部屋に入るなり、確認もせず設置されたベッドに飛び込む。その数分後には寝息をたてていたので、まぁ随分疲れが溜まっていたと思われる。
……おやすみ―――
いつもお読み頂き有難う御座います。
遅れてしまい申し訳ありません……




