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0073話 side 隊長さん


カリカリカリカリ……


一つだけ灯った魔道灯の明かりが照らす暗い執務室の中、積み重なった書類の処理をしていく。……引き継ぎの報告書、衛兵隊及び壁上警備にあたる防衛隊に関する要望書。等々……上に奏上すべき書類も一旦こちらで処理しなければならない為、その書類は山のようにある。


一枚、一枚見落としが無いよう隅々まで確認をしていく。王都に居た際は「そんなんだから、おめぇは仕事が遅ぇんだよ。もっと適当で良いんだよ、適当で」なんて言われたが、今更改める気はない。


勿論、それで仕事が遅れては本末転倒なので、それなりにプライベートを犠牲にして進めているが……これも同僚に知られたら呆れられそうだな。書類の処理を進めているのに、思わず苦笑が漏れる。


コンコンコン


そんな事をしていると、唐突に聞こえてくるノックの音。


「入れ」


「失礼します、隊長。軽食をお持ちしました……って! また魔道灯ケチって仕事してましたね! 」


入ってくるなり、部屋の暗さに気付いた副官によって次々と魔道灯が点灯していき、部屋の中は真昼の如く明るくなる。……むぅ……別にケチっているわけでは無く、さっきので十分だったのだが……。


「全く……必要予算として下りてるんですから、その分はちゃんと使いきりましょうよ……。仮にその分の予算が減らされたとして、それで苦労するのは隊長じゃなくてその後任の方何ですからね! 」


「……分かった」


言われている事自体は間違っていないので、不承不承ながらも頷くしかない。


「それよりも軽食を持ってきてくれたんだろ? 」


「大体です―――え? ああ、はい。どうぞこちらです」


「……おぉ! ハチミツ亭の麦粥か! 」


「えぇ、サロメさんが差し入れに、と持ってきてくれたんですよ」


「そうか、今度礼を言わねばな」


「そうしてください」


書類を退けて目の前に置かれた麦粥を頂く。優しい塩の味と、香草の香りが口の中に広がる。後味として、少しの甘味が口の中に残るのが心地よい。


(……うまい)





―――――――――――――――





「旨かった……」


「そうですか、試作だったそうですが隊長の反応を見る限り良さそうですね(ボソッ」


「ん? 何か言ったか? 」


「いいえ、何も。それよりお皿下げさせて貰いますね」


「あぁ、助かる……さて……」


うーん、と体を伸ばす。バキボキと背骨が音をたてるが、それが気持ちいい。首も軽くほぐし書類整理を再開しようとした所で声がかかる。


「あっ、そう言えば聞いておきたいことがあったんですけど……」


「何だ」


「いえ、大した事では無いんですが……今日最後に来てた入国者の方ってお知り合い何ですか? 」


「コンラートさん達の事か。まぁ、お前は知らなくても不思議ではないな。なにせ、あのお二人がこの国に居たのは20年近く前の事だ」


「なるほど、私が入隊する前の事なのですね。一体どういったお知り合いなのかお聞きしても?」


「あのお二人は昔、王都で教導官をやっておられたのだ。私は丁度その時新兵でな……いや、強くなっていく実感はあったが、かなり辛い教導であった……」


「教導官って……あの方達どう見ても30代位にしか見えなかったんですが……20年前? 」


「それは若く見えているだけだ。実際、教導をしておられた頃から、殆ど見た目は変わっていない。不思議な事にな」


「えぇ……? 何ですかそれ……もしかして純粋な人種族の方ではない……とか? 」


「まぁ、確かにそう言った噂は教導を受けていた仲間内ではあったが……本人達からその類いの話は聞いたことが無いな」


「じゃあ単に若く見えているだけなんですか……もし、本当ならその秘訣を聞き出せたら一儲けできそうですね」


確かにな、と二人して声をあげて笑う。確かにあの若さを保つ秘訣等が分かれば、世のご婦人達が血眼になってその情報を求める事だろう。……まぁ、そんな物があるとはとても思えないがな。


「しかし、教導ですか……できれば衛兵隊でもやって貰えないですかね? それ」


「申し出れば嫌とは言わないと思うが……」


「思うが……何です? 」


「教導を受けている間は、衛兵隊が使い物にならなくなるだろうな」


「……そんなにキツいんです? 」


「キツイ。今王都で近衛や士官をやってる奴は、大抵あの教導を受けていたが、皆口を揃えて『強くなれるのは確かだが、あの教導だけは二度とごめんだ』と言うくらいだからな」


「……止めておきましょう。流石に練兵慣れしてる王都の騎士達でそれなら、家の衛兵隊では業務に支障が出かねません」


「それが賢明だ」


一頻り話終えた後、執務室を後にする副官を見送り書類整理に戻る。そこからは単純作業だ、チラチラと揺れる魔道灯の明かりを頼りに文字を目で追い、仕分けていく。


やっと、目処がたった頃。目頭を指で揉み書類から視線を上げ、ふぅと息を吐く。


中空を見上げ、一人思考を続ける。


(……コンラートさん達が戻ってきた……と言うことはアチラ(・・・)で何らかの動きがあったと言うこと……)


それは、久方ぶりに出会った自分達の師であり、同時に仕えている王の友人の一人でもある冒険者の事。


私達の国に何かあればすぐに戻ると言い残し、旅立っていった二人が戻ってきたと言うことは、ただの観光とは思えなかった。



(ならば、また始まるのか……戦争が―――)



いつもお読み頂き有難う御座います

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