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0069話


日が沈み始め、そろそろ夜になるかと言う時刻になってから漸く国境壁にポカリと開いた門の前へとたどり着いた。列を作り、並んでいた馬車や旅人達も最早おらず、残っていたのは俺達だけだ。


……ん? 幌の中に居るのに何でそんな事が分かるのかって? いや、視界を魔素と同調させるだけなら幌の内と外ってあんまり関係ない事に気が付いてな。キャッシャーさんの話に耳を傾けながら色々と試してたんだよ。で、割とあっさりできた。


まぁ、視界があっちもこっちも見えてるせいでかなり気持ち悪いけど……まぁ、それも使ってるうちに慣れないかなー……なんて淡い期待をしていたんだが、まぁ今後はなるべく使わない方針でいこう。


そんなこんなで四苦八苦していた所、門の内側から鎧に身を包んだ衛兵(?)と思われる人影が近付いてくる。だが、コンラートさん達のように普通の人ではない。


その人は猫背の様な前傾姿勢でこちらへと駆け寄ってくる。頭頂部付近に三角の特徴的な耳、獣がそのまま2足歩行をしている様な出で立ち。そして、モサモサだった……いや、モフモフだった。


……いや、特に文句が有るわけでは無いよ? うん、モフモフ良いと思う。抱き付いたら気持ち良さそうだよね? でもさ……何だろうね? 心の何処かで『これじゃない! 』って叫んでる自分が居るのも確かなんだよ。


「お待たせいたしました! そのまま馬車を門の内側まで進めて頂けますでしょうか! 」


「はーい」


そんな下らない事を考えているうちに馬車は動き出す。その動きに合わせて先程の獣人さんも後から続く。徐々に迫る巨大な門と聳え立つ壁。間近に迫るとその威容がよく分かる。


……改めて近くで見ると圧倒されるな。


そんな感動に浸っている時間も僅か。すぐに馬車は門の中へと入っていく。門の内部は岩をくり貫いてできた切通のようになっており、暗闇の中で幾つかの灯りがユラユラと揺れている。


前部では開け放たれた門の先に夜闇を照らす灯りが無数に光輝いている。そんな光景に圧倒されていたからだろうか、いつの間にか馬車が停車していた事に今更ながら気が付く。そして、こちらへと近づいてくる数人の影。


「お疲れ様でした、境都へようこそ」


「いや、そちらこそお勤めご苦労様」


「恐縮です、早速ですが入国審査に入らせて頂きますが宜しいでしょうか? 」


話しかけてきたのは犬の様な頭部を持つ獣人。その回りを数人の獣人が固めている。……他の獣人と違ってこの犬(?)の人は鎧が立派だな。責任者って所だろうか?


「ではまず、今回の訪問理由をお聞きしたい」


「俺達は中に居る知り合いの護衛だ、そいつがこっちで商売をやりたいって言い出したんでな」


「成る程、では中には商品が? 」


「あぁ」


「では一旦お連れ様と一緒に馬車を降りていただけますでしょうか? そちらで確認している間に念のため商品も改めさせて頂きますので」


「了解した。おい、坊主! 」


「聞こえていましたよ! ではオロスさん達もご一緒に……」


キャッシャーさんに促され、共に馬車を降りて少し離れた場所で待っていると、衛兵さんがこちらに向かってくる。


「お疲れさまです! 商売をされるという事でしたが商業ギルドの登録証はございますでしょうか? 」


「ええ、こちらに」


「恐れ入ります……えぇ、結構です、ご協力有難う御座いました」


「いえいえ」


「それで―――」


キャッシャーさんが懐から取り出した四角いカード状の物を検分し、すぐさま返却する衛兵さん。そして、次に視線が向けられたのはこちら。オロス達だ。……ここからが問題だな。


「そちらのお二人は? 」


「あぁ、こちらに来る途中で知り合ったのですが、同じように境都を目指しているとの事でしたのでご一緒していました」


「成る程。何か身を証明出来るものはお持ちでしょうか? 」


「いえ、それは―――」


「キャッシャーさん、そこからは俺達が」


「そうですか、では私は馬車の方に戻りますよ? 」


大丈夫?と心配をしてくれるキャッシャーさんに頭を下げ、オロスが前に出る。


「すまないが、生憎とそういった物は二人とも持ち合わせていなくてな。ただ、冒険者ギルドに登録させてもらおうと思っている」


「そうですか、では多少別途手続きが必要となりますのでご了承下さい」


「分かった」


「それと―――」


……きたか。


「一応念のためお顔を確認させていただきますが宜しいですね? 」


「……あぁ」


さて、どうするんだ―――

いつもお読み頂き有難う御座います。

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