0068話
カタコトと独特の音をたてながら馬車が走る。
目的地はバルスト獣王国・境都。ドネロ公国との国境上に作られた巨大な“国境壁”その内側で栄える人族が治める国との玄関口。そこは人族、獣人族入り乱れた活気溢れる都市だそうだ。
オロスとエリ、そしてオロスの影に便乗した俺を含めた三人は、昨日の話通り商人キャッシャーさんの馬車に同乗させて貰っていた。
馬車の幌の中は商品で埋め尽くされていた為やや手狭に思えたが、オロスが胡座をかきその上にエリが座ることでキャッシャーさんともども窮屈な思いはせずにすんでいる。
御者席に座るのはコンラート夫妻。1日中御者をするのは大変では? なんてオロスが問うた所―――
「良いのよ。だって……旅行みたいで楽しいもの」
と、アマーリエさんの談。……いやまぁ……夫婦仲が良いようで……えぇ、ご馳走さまです。
そんなこんなで現在馬車旅の途中。まぁ、幌馬車故に外の景色を見ることも出来ず、退屈な時間を過ごすことも覚悟していたのだが、そこでキャッシャーさんが色々な事を話してくれた為ほとんど退屈することなく馬車での旅を満喫している。
キャッシャーさんは話がとても上手く、そして商人故か耳目が広く、様々な話題で楽しませてくれた。最初に語った“境都”の事もキャッシャーさんから聞いた話だ。
そうして無聊をキャッシャーさんの話で慰めつつ、幌の中に夕陽が射して来はじめた頃。御者席に座るコンラートさんから声がかかる。
「見えてきたぞ、境都だ」
一も二もなく御者席側へと駆け出すオロスとエリ。流石にずっと座りっぱなし、と言うのは二人にとっては辛かったらしい。
「おぉ! 」
「凄い……! 」
御者席との間に掛かっていた幌をどけて、見えてきたのは巨大な壁。高さ10mを越えるような一枚の岩壁が見渡す限り続いている。
……凄いな……
陳腐だが、そんな言葉しか思い浮かばない。石を積み上げてできた壁ではなく、自然の巨石が年月と共に削られて出来たような一枚の岩でできた様な壁。
キャッシャーさん曰く、これを作り上げたのは一人の魔術師らしい。正直、話半分でしか聞いていなかったが実物を改めて目にすると驚愕の一言である。
……魔術を使ったと言っても一人の人間がこれを造りあげたのか……エリの使っている魔術を見てても、こんなものまで作れるとは到底思えないんだが……
巨大な壁を目の当たりにして驚いている間にも、どんどんと距離は迫っていく。そこでは境都に入る為の順番待ちなのか、幾つかの馬車の姿も見受けられる。
「さぁ、もう少しで着く。お前らも大人しく幌の中で休んどけよ? 」
「はい」
「はーい」
コンラートさんに促され大人しく幌の中へと戻る二人。だが、その目には先程目にした巨大な壁への感動が残っていた。
だが、感動ばかりはしてもいられない。何故なら、俺の予想ではこれからがきっと一番大変な筈なのだから―――
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