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0067話


人違いであって欲しい。そんな一心で周囲の様子を確認するも、人どころか獣の影すら見当たらない。しかも、二人が見ているのは明らかに俺が潜んでいる影の辺り、となると最早人違いではないだろう。残念ながら。


流石にバレているのに、そのまま知らんぷり……とは行くまい。ならばと、なるべく刺激しないようゆっくりと影から這い出て二人の元へと向かう。……勿論、両手(?)を上げて敵意が無いことを見せながらだ。いや、話しかけてきた以上いきなり戦闘、とはならないだろうが……まぁ念のためだ。


そして、ある程度お互いの距離が縮まった所でコンラートが話しかけてくる。


「シャドウか、これまた珍しいな。何の用があってこっちを見てた? 」


問われるが、こちらは話すことが出来ないので、どう答えて良いのか……。いや“念話”を使えば良いのは分かってるんだよ? でもさ、見てた事に気が付く様な相手に突然そんな事したら、何があるか分からないでしょ?


取り敢えず、ここはゴブリン達と同じように身振り手振りで行ってみるか……。


喉の辺りを指し、口の辺りで手(?)をグーパー。最後に両手で×印を作ってみる。序でに首を傾げて、通じる? と訊ねるような動作も入れておこう。


「……んー……どう言うことだ? 」


「多分言葉が話せない、って事なんじゃないかしら? 」


「あー……確かに喋るシャドウなんて見たこと無かったな。で、それで合ってるのか? 」


……おお! 通じたよ! 不安感を与えない為にもすぐに頷きを一つ。そして、ここからが問題だ……どうやって念話の事を伝えるか……。


よし、これなら……自分と二人を交互に指差し、両手を繋ぎ合わせる。そして、両手を向かい合わせ、会話しているようにパクパクとさせる。最後にサムズアップを決めて二人の反応を伺う。


「あ? どういう事だ? 」


「うーん……お互いを繋いで、会話? あ、分かったわ! 貴方“念話”が使えるのね! 」


これまた大正解。きちんと(?)コミュニケーションが出来ていることに嬉しくなり、大きく頷く。……と言うかアマーリエさん凄くね? 俺、自分がこんなの見せられても分かる気がしないぞ……。


「“念話”か、これまた珍しいな。まぁ良い、流石にこのままじゃ時間が掛かりすぎるしな。俺に繋げろ、それなら会話できるんだよな? 」


コンラートの問い掛けにまた一つ頷きを返す。


「良し、じゃあやれ」


言われるがまま、周囲の魔素と同調を開始。細い糸をイメージしてそれをコンラートへと伸ばしていく。頭……は止めておくか、多少伝わりづらいかも知れないけど腕とかでも平気かな?


歯車がカチリと嵌まるような感覚。これで会話が出来るはずだが……果たして―――


『ええっと……聞こえていますか? 』


「おう、聞こえてるぜ。しかし、何だ随分流暢に喋れるじゃねーか」


『あの……はい、でもそれは念話だからだと思います。こちらは伝えたい事をイメージするだけなので……』


「成る程な、良く分からんが……まぁ分かった。でだ、何でこっちを見てたか聞く前に、一つ聞きたい事がある」


『えっと……はい、何でしょう? 』


「日中オロスの近くに行った時、何度か視線を感じたがあれもお前か? 」


日中に視線を感じた? うーん……オロスの影から常に外を見てたから、そのせいなのかな? あの魔物達以外に見える範囲に生き物は居なかった筈だし。と言うか、繋がってる感覚なのか分からないけど、威圧感? みたいな物を感じるせいか、自然と口調が丁寧になってしまうな……。


『えっと……多分そうだと思います。私はずっとオロスの影に居て外を眺めていたので……』


「ふむ、成る程な。なら次は、何故オロスの影に居る? 」


『ええっと、それは―――』


それから次々と質問をしてくるコンラートに順次答えていく。自分が何故、オロス達と共に居たのか、更にそれを説明する上でアンについても暈しつつ、あれこれと頭を捻って話していく。


ただ、暈しはするが嘘だけはつかないようにした。正直つけなかった、と言うのが正しい気もするが、仮に嘘だとバレた時の事も考えてだ。


「―――成る程、良く分かった。まぁ、見られてたのは俺も鈍ってて気付けなかったのが悪いから諦めるとしてだ。興味本意で聞くんだが……お前はこの後どうするつもりなんだ? いつまでもオロスに黙ってこっそり着いていく訳にもいかないだろう? 」


……当然の質問だな、それにこれはアンにも言われてた事だし。


『……まだ特にこれと言って考えては居ない……かな』


「まぁ今はそれでも良いだろう。ただし、ちゃんと考えておけよ」


念押しをしてくるコンラートに頷きで返す。


今後の事か―――



いつもお読み頂き有難う御座います。

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