0064話
……まずいな、オロスの顔を見られた。
辺りは静寂に包まれる。理由は戦闘が終ったことではなく、オロスの素顔がさらされたのが原因だろう。戦斧を肩に担ぎ、こちらへと向かっていたコンラートも、馬車でエリと共に居たアマーリエも驚きに目を見開き二の句が継げ無くなっている。
「いや、あの……違うんだ、黙っていたとかそう言うことじゃなくて……」
取り繕う様に慌ててオロスが言葉を紡ぐ、が突然の事に思考が纏まっていないらしく上手く言葉にならない。ただ、それに対しての反応も無いので沈黙が痛い。
……あー……どうするかね、コレ……。
思わず頭を抱える。と言うか何故フードが外れたのか、まぁ見えていたわけだが。最後のゴブリンに止めを刺す際に、距離を詰めようと駆けたオロス。その時に風で捲れてフードが取れたのは見ていたんだが……まぁ、固定している訳でもないし、強い風が当たればフードが取れてしまうのも必然か。
そうこうしている間にコンラートは無言のままこちら(オロス)へと歩み寄る。その目にはどこか悲壮な色が見え隠れしている。
「待ってくれ……違うんだ! お、俺は……」
「………………」
二人の距離が近づく度にオロスは慌てて弁解しようと言葉を続けようとするが、それより早くコンラートがオロスへと距離を詰め、斧を握っていない左手がオロスへと伸びる。
そして、ポンとオロスの肩を叩く。
「そうかお前は―――」
「いや、あのだな……オークに見えるかも知れないんだが俺は……」
「分かっている鬼子だな」
「へっ? 」
「これまで余程辛い目に会っていたと見えるが……大丈夫だ。俺も、妻のアマーリエもお主のような者はそれなりに見てきた、今更責め立てはせんし、追い立てもせん。」
……これは……予想外の展開だな。“鬼子”それはアンから人里に降りるに当たって、もし自分の身を明かす必要が出たらそう話せば良いとオロスが言われた言葉だ。まぁ、その言葉の意味は教えてくれなかったが……まさか向こうからその言葉が出てくるとは、一体どういう意味なんだろうか。
「あっ……えと……」
「うむ、大丈夫だ。そもそもお前達の様な存在が居るのも俺達冒険者と……そして国が力不足なせいだ。なのにどの面下げてお前達を迫害するって言うんだ」
「いや、あの……」
「あぁ、まぁ動揺するのも分かるけど取り敢えず落ち着け、話はそれからだ」
そう言ってオロスの肩を再度叩き馬車へと歩き去ってしまうコンラート。オロスは呆然とその場で立ち尽くすだけ。馬車で事の成り行きを見守っていたエリも馬車の御者席で崩れ落ちてしまう。
……勝手に納得してくれたが……本当にどういう意味なんだ鬼子って。
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