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0062話


二人ののじゃれあいも終わり、エリの頬の腫れも引いた頃それは見えてきた。


ガラゴロと音をたてこちらへと近づいてくる二頭牽きの幌馬車。御者席に座ってるのは一組の男女。男の方は全身を紅い鎧に包み、背には巨大な戦斧。女の方は全身をすっぽりとローブで覆っている。



「ん?おい、あれ……」


「何よ……って馬車? 丁度良いわね、この道で合ってるのか聞いてみましょう」


「そうだな、じゃあ頼んだ」


「ちょっ! なんで私!? 」


「いや、俺人見知りするし……」


「知らないわよ! はぁ……まぁ良いわ」


「そうか助かる」



そのやり取りの間に馬車はかなり近くまで来ていた。その御者席に座る男女に向かって手を振るエリとオロス。あちらもこちらを認識しているのか徐々に速度が落ちていく。


やがて目の前までくると停車。御者席に座っていた男が降りてくる。……オロス程では無いけど……この人もでかいな。それに背中の斧も……。


「おう、どうしたお嬢ちゃん、何かトラブルかい? 」


降りてきた男はオロスへと視線を注ぎながらエリに話しかける。ただ、アンと最初に会ったときの様な妙な感覚を覚える。……緊張? いや、恐怖かな……穏やかに笑っている気がするけど何か怖いぞこの人。


「え、えと……バルスト獣王国ってこの道を辿っていけば良いのかしら? 」


「ん? あぁ、そうだな。この道沿いに歩いていって大体一週間前後って所だろう。このまま歩けば国境壁……大きな壁が見えてくるからすぐに分かる筈だ」


「そ、そうなのね! 一週間……ありがとう助かったわ」


「何、これくらいは大した手間でも無いさ。それよりそちらは二人旅かね?」


「あ、ごめんなさい挨拶も無しに。私はエリ、それでそこの大きいのがオロスよ。二人とも旅には不馴れだからあんまり良く分かってなくて……」


「ふむ、俺はコンラートってもんだ、あっちの御者席に座ってるのが妻のアマーリエだ。まぁ、ここで会ったのも何かの縁だろうし旅は助け合いが基本だからな」


「そう言って貰えると助かるわ、ありがとうコンラートさん」


「おう、ちゃんとお礼が言えて偉いなエリちゃん」


「きゃっ……うぅ……」


そう言って乱雑にエリの頭を撫で回すコンラート。エリも特に嫌な素振りは見せずされるがままである。そうして暫くエリを撫でた後、コンラートはオロスの方を向く。


「で? そつちのオロスさんは保護者か何かかい? 」


「……まぁ、似たような物だ」


「そうかい、この辺は獣王軍の警戒範囲内だが一応気を付けてな」


「ご助言感謝する」


「堅てぇなぁ……まぁ良い、じゃあなエリちゃん獣王国に行くんならまた会うこともあるだろうよ」


「あ、はい。本当にありがとうございました! 」


そう言って馬車へとコンラートが戻ろうとした時、馬車の後方にあった林からゴブリンの軍勢がワラワラと這い出てくる。その数凡そ100近く、だが更にその奥からまだまだ這い出ようとしている。


「ちっ! おい! 」


「はいはい」


コンラートがそれに気付き声を掛けるとアマーリエが即応、馬車が急発進し少し先で小さく弧を描くようにしてUターンを決める。


「オロスさんよ、あんた達戦闘は? 」


「二人とも多少なら何とかなる、がエリは魔術を使う、できれば……」


「分かった、ならエリちゃんは馬車の方に下がって脇に逸れそうなのを相手してくれ! 」


「わ、分かったわ! 」


そう言って馬車の方へと走って行くエリ。そして、それを見届けるとオロスは背負ったリュックを降ろし身軽になるとその場で数度跳び、調子を確かめる。


林から出てきたゴブリン達もこちらを認識したのかバラバラにこちらへと走り迫る。手にそれぞれ不揃いの武器を持って駆け寄ってくる姿には恐怖を覚えそうになる。


「正面は俺が抑える。オロスさん、あんた武器は? 」


手に背負っていた巨大な戦斧を構え、迫り来るゴブリンの軍勢を待ち構えながらコンラートが声をあげる。それに応えるように、オロスは両の手に嵌めたガントレットをガチン、と撃ち合わせる。


「俺の武器はこれだ」


「っは! 良いね格闘術かい、ならこっちを抜けて馬車に向かいそうな奴は頼んだぞ」


「了解」


「行くぞオラッ! 」


それだけ言い残すとこちらへと向かい来る軍勢に駆け出すコンラート。そして次の瞬間激突する。

いつもお読み頂き有難う御座います。

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