0059話
日の昇りきった真昼の草原をオロスとエリの二人が行く。今日は二人が洞窟を出てから3日目となる。その間初日のような事はなく、二人が交代で不寝番をしているので俺はひたすらオロスの影で二人の動向を見守っている。
また、移動の最中や休憩中に何かが襲ってくる、と言ったことも無いため二人はゆったりと移動を続けていた。……初日の夜、俺がゴブリン達に遭遇したのは大分希な体験だったんだろうか……。
「ねぇ? 」
「ん? どうした、飯ならさっき食べたよな? 」
「あんたは何がなんでも私を腹ペコキャラにしたいの!? 大体このやり取り何回目よ! 」
「んー……多分5回目くらいか? 」
「そこは真面目に答えなくても良いのよ! 」
「……俺にどうしろと」
「普通に話を聞いてくれれば良いじゃない! 毎度毎度ボケをワンクッション挟まなくて良いの! 」
「それじゃあつまらんだろ……俺が(ボソッ」
「今俺が、って言った!? 言ったわよね! 」
「ッチ……無駄に耳が良いな」
「無駄にって何よ! 大体あんたはね―――」
オロスの言葉を皮切りに喧しいやり取りが始まる。……まぁ、こんなやり取りも、この数日でかなりあったからもう慣れたがな……と言うか、こう言うのは端から眺めてるから面白いのかもな。
やや辟易としたような顔をする元凶事オロスと、キャイキャイと仔犬の様に喚きたてる被害者エリ。そのやり取りは、やはりどこか懐かしさを感じさせる。……まぁ、だからと言って特に何か思い出せる訳ではないんだがな。
……っと……そんな事を考えてたら終わったか。
「はぁ……もう良いわよ。私が言いたかったのはもう歩き始めて三日になるけど、まだ何も見えて来ないわねって事よ」
「またその話か……だから言ってるだろう? 歩いてればいつかどこかには着くって。それにまだアンから貰った食料もあるし、あせる必要なんか無いだろう? 」
「それはそうなんだけど……でも何か屋根の無いところで寝るのって落ち着かないのよ……」
「もう三日だぞ? いい加減慣れたらどうだ? 」
「慣れるしか無いのは分かってるけど……こればっかりはどうしようも無いわよ……」
「ふむぅ……」
どこかしおらしさを感じさせるエリの言葉に思わず考え込むオロス。……まぁ、何だかんだ言ってもエリは見た目10歳そこらだし、体力的に問題なかったとしても辛いものは辛いか……。
不意にオロスが沈黙した為、エリも一緒に黙り混んでしまう。そのままどこか気まずい雰囲気の中、足を止めること無く進んでいく二人。
が、ふとオロスが立ち止まると、釣られてエリも足を止める。
「何よ急に立ち止まって? どうかしたの? 」
「うむ……しかし……いや、問題……か? 」
「ちょっと……! ねぇってば! 」
「よし! 俺に任せとけ! 」
「任せとけって、何を!? 」
「良いから良いから」
「ねぇ! ちょっと人の話を―――」
有無を言わさず幼い女の子に迫る全身をフード付きローブで隠した巨漢。……お巡りさんここです……! ってこのやり取り前にもやった気が……。
そんな下らない事を考えていると、いつの間にかオロスがエリを抱え上げ左肩に無理矢理座らせている。エリは突然の事にパニックとなっているのか、不安定な肩の上で暴れているがオロスに気にした様子は見られない。むしろ落ちないよう更にガッチリと固定しているようにも見える。
……ふむ、エリが小さいからか、はたまたオロスが大きいからかは分からないけど、何か様になってるな?
「よし! 行くぞ! 」
「ちょっと! 下ろして! 下ろしてってばぁ……! 」
「はっはっはー! あんまり口開けてると舌ぁ噛むぞぉ! 」
「ちょっ! まっ! いぃやぁー!! 」
肩上のエリなどお構い無しに猛然と走り出すオロス。蹴り出した足下から千切れた草とその下の土が舞い上がる。走り去った後にもうもうと立ち上がる土煙。
……ふむ? オロスの思考的に、時間が掛かってるからしんどい=急げば良い。って所からこんな行動に出たんだろうけど……エリ頑張れ……。
「おらおらー! 行くぜー!! 」
「もー嫌ぁぁぁ!! 」
いつもお読み頂き有難う御座います。
それと、少し先ですが年末進行の為12月は割と更新できない日が出るかと思われます……ご了承下さい。




