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0057話




―――――――――――――――




(なぁ一つ聞いても良いか? )


「なんじゃ? ここを抜けるまでなら答えてやっても良いぞ? 」


それは、あの神を名乗る声が聞こえた後の事。ふと、気になったことがあり、地下の通路を進む間にアンに聞いてみたのだ。


(いや、“シャドウ”って具体的にどういう種族なのかと思ってな? ほら、影に潜んだり自分の体を変化させられたりするのは教えて貰ったけど、どんな種族なのかは聞いてなかったからさ)


「なんじゃそんな事か」


そうして、アンは語りだす。“シャドウ”とは本来“魂喰らい”なのだと言う。影に潜み、そこへ近付いた生者を殺し、その魂を喰らう。そうして喰らった魂を取り込み力を増す種族なのだとか。また、不定形のシャドウはそうして取り込んだ魂の持ち主と同じ姿を取ることが出来るようになるとも……。興味本意で聞いてみれば何とも物騒な話だ。


……しかし魂を喰らう、ねぇ……。


「―――中にはそうして魂を取り込んだ相手の知識や経験を手に入れ本人に成り代わり生活を送る者も居たそうじゃ。すべて伝聞故、事実だけとは限らんが……まぁ、儂が知っておるのはこのくらいじゃのぅ」


(成り代わる……か)


「うむ、唐突に気性が変わった者を“あいつは影と入れ替わってしまったんだ”等と言う噂が変化して“シャドウに襲われて成り代わってしまったんだ”となったとも言われておるが……まぁ、いくらか事実も混ざっておったのでは無いかと儂は思っておる」


(成る程な―――)




―――――――――――――――




道すがら洞窟内でアンとの会話を思い出す。……もしかして、あれが魂を取り込むって事なのか? 事実は分からない。だが、あの時確かに何かが入ってくるような感じがした。そしてその後に見た光景。あれは取り込んだ魂が見ていた光景だったとすれば納得は行く。


(糞っ! )


実際が何にせよ、いきなりスプラッタを見せられたこっちとしては最悪の気分だ。こんな物要らなかった、と言うのが正直な感想だ。


もう、あの声が頭の中で響く事は無いが、思い出そうと思えば何時でもあの光景を思い出せる気がする。まるで自分の魂に直接記憶を書き込まれたかのように……。


(あぁ!もうやめ!)


無理矢理思考を打ち切り移動を再開。仔犬が居た所へと戻る。


被せていた草葉を退けるとそこには先程と同じ体勢で仔犬が居た。ただ、荒く吐いていた息は今にも絶えてしまいそうなほど弱々しい。時折聞こえてくるか細い鳴き声が胸を刺す。


……もう、そっとしておこう。そう思い立ち去ろうと思った矢先、嫌な考えを思い付いてしまう。


それは先程自分に起こった出来事の検証。つまり、この目の前で息絶え掛けている小さな命を摘み取り、先程と同じような事が起こるのかを試すと言うもの。


葛藤する、確かにいずれは必要となる可能性が高い。あのゴブリン達の様に戦い、その命を刈り取る事もきっとあると思うのだ。だが、本当にそれを今する必要はあるか?


そうして迷っているとふと思い付く。こうして生き物の生死を自分がどうこう考える事自体が不遜なのではないかと。だってそうだろう。今もこうして懸命に死に抗おうとしている小さな命を、自らの手で摘み取るか否か迷うなど思い上がりも甚だしい。


そう考えると途端に迷っていたのが馬鹿馬鹿しくなる。用は言い訳がしたかっただけなのでは無いかと。


助ける事も出来ず、かと言って見つけてしまったが故に見捨てる事も出来ない。ならばせめて何か出来る事を、と考えた末に出た答えが自分の為にその命を使おうとは。我ながらなんと滑稽な。


忘れてはいけない、自分は既に4つの命を奪っていることを。確かに敵対者ではあった、多少の知恵も弄した。それでも最後に殺したのは自分だ。


俺は物語の主人公では無い。目につくもの全てを助け、その中心に居るべきヒーローには成れない。ならば好きにやらせて貰おう。人間(・・)らしく他者の命を使い、自分が生き残る為に何でもしよう。


例え、その結果として自分が死ぬことになろうとも―――

いつもお読み頂き有難う御座います。

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