0054話
少し短目
「ふぅ……やっと出たか」
霧と木々でできたトンネルを抜けて出た先は見晴らしの良い平原だった。道中ずっと周辺から聞こえてくる獣の呻き声や巨大な虫の羽音、奇怪な鳥の声が響いており気を張っていた為か、表情が分かりにくい豚の様なその顔にも疲労の色が見える。
ふくよかな腹部を揺らし、丸太の様な腕をグルグルと回したり、背筋を反らし、屈伸をしたりと全身を使って体をほぐしていく。
「本当にやっとね……と言うか何であんなに虫が大きいのよ」
黄金の髪を掻き上げ幼さの残る顔をしかめさせながら呟くのはエリ。細い腕を交差させ自らを抱くようにすると身震いを一つ。……恐らくトンネルを抜ける際に1度だけ出くわしたムカデの事を思い出しているのだろう。
オロスの腕ほどもあるムカデで、体長は凡そ60~70cmはあっただろうか?こちらに向かってくる事は無く目の前を横切っただけだったが……あそこまででかいとキモい、と言うより恐怖しか無かったな…。
「まぁ、もう森は抜けたんだ。暫く出くわす事も無いだろう…無いよな? 」
「知らないわよ。まぁ、2度と見たくないけどね」
「「はぁ……」」
顔を見合わせ二人そろってため息を吐く。オロスも蟻の足なんてゲテモノを食べるくせにムカデの様な多足類は苦手なようだ。……まぁ、アレが好きな人はなかなか居ないか…。
「さて、さっさと進んで忘れるぞ」
「そうね…でもその前に、森を抜けたんならあんたはアレ羽織っておきなさいよ」
「そうだったな…さて何処にしまったか―――」
背負っていたリュックを下ろしガサゴソと漁るオロス。
「おお、あったあった」
そう言って出て来て物を羽織る。それはオロスの巨体がしっかり隠れる程の大きなフード付きのローブ。アン曰くやはりオロスの見た目は少々問題があるようで、それを隠すためにも必要と言う事で貰っていた物の一つだ。
オークの見た目では、人里に近付く事すら難しいそうだがそれをローブで隠しフードを目深に被ってしまえば怪しい風体ではあるが、いきなり攻撃を受けることは無いだろう、との事だった。……まぁ、その後どうするかは良く考えろと言われていたが、さて……。
「よし、これで完璧だ!」
「バカやって無いで行くわよ」
シャキーンと効果音が付きそうな感じにポーズを決めるオロスだったがエリは取り合わずさっさと行ってしまう。……少しは構ってやれよ…凄い寂しそうな顔になってんじゃねぇか…。
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