閑話007
『あんな別れ方で良かったのかい?』
オロス達と別れた後、転移した直後そんな声が聞こえてくる。思わずため息を吐いてしまう、がそのくらいは許されると思いたい。……しかし、今日はやけに絡んでくる……。
「お主暇か?暇なのか?仮にも神じゃろうに……」
『いやほら忙しいのは忙しいけど、ずっと単純作業ばかりしているとなんか他の事をやりたくなってくるじゃない? 』
「……はぁ……」
あまりにもあんまりな言い分に再びため息が漏れる。このアレな神が唯一神と言う訳では無いが、それでも人の世には重要な要素を司る神であることに違いはない。……もし聖職者等と名乗る輩がこの実態を知ったらどうなるかのぉ……
正直知ったことでは無いが、相手をしなければ暫くこうしてちょっかいを出してくるに違いない。ならば多少面倒でも相手をしない訳にはいかない。
「……で?なんの用じゃ、態々それだけの為に忙しい合間を縫ってこちらと交信しているわけでも無かろう」
『え?いや、本当に退屈だった―――』
「あ“ぁ“!?」
『いや!冗談!冗談だからね!?』
「……まったく……で?本題は」
『……君に干渉してきた奴等居たよね? 』
「うん? あぁ、そう言えばそんな者もおったの」
言われて改めて思いだす。こちらを“龍種”として認識し、その力を欲していた細目の男。……確かベンゾと名乗っていたか?
だが、それが何だと言うのか。こちらに干渉してきたのなら、それは自身とその周囲が破滅することも厭わないと言う事だ。その愚を犯してまで干渉してきたのだからきちんと対応するべきだろう。……まぁ、居場所が判明し次第殲滅するだけなのじゃがな。
『彼等に対して過度な干渉は禁止ね?』
「それは、どういう冗談じゃ?」
『冗談じゃ無いよ、彼等のする事を我々は静観する。故に君達が彼等に対して行動を起こす事は許容できない。あ、勿論自衛をするのは構わないよ? 』
何時に無く真面目な口調で語る古い知人に何があったのかを悟る。…成る程、こやつは貧乏クジを引かされただけか。
「して、決定を下したのは誰じゃ」
『最高神とその眷族達だ、そしてありがたいことに僕は君達にその事を伝える役目を仰せつかってね、今に至ると言う訳だ。だから他の子の所に行く前に少しでも気を晴らしたいんだよ』
…ふむ、ならば裏は無く、いつもの俗世に対する不干渉、と言うやつか。最高神とその周囲は“世界に凡てを捧げた身”なればこそ、我欲でその命を下すことはありえないしの。しかし解せないのは何故、態々念押しなどさせたのか、しかも干渉権限を持たないこいつを使って―――
深い思考の海に意識が沈む前に思考を打ち切る。何やら作為的な物を感じるが、今考える必要は無い。
「ならば、儂は場所を変え、また暫く籠るとしよう。まぁ、それでどれ程奴等の目から逃れられるのかは知らんがな」
『すまない』
「良い、お主の事は好きではないがアオイを助けてもらった事に関しては感謝しておる」
遠い昔、自分に新たな世界を見せてくれた唯一人の友人。普通の友人とは違った関係だったかもしれない、それでも彼女と過ごした日々は今でもこの胸をときめかす―――
…いかんな、先程から思考が逸れてばかりじゃ。
『―――サマー!!マダですかー!?早くしてくれないともう限界なんですけどー!!』
やれやれと頭を振り、苦笑を漏らしているとふと聞こえてくる懐かしい声。…ふふっ、相変わらず忙しないのぅ…。
『すまない、流石の彼女も限界みたいだ』
「そのようじゃの、早く行ってやれ」
さっさと帰れとばかりに手を振り交信の切断を促す。
『うん、それじゃあまた連絡するよ。今度は彼女も一緒に』
「ふん、お主は要らぬからあやつだけ寄越せ」
『…無理だって分かってる癖に無茶な事を言うね、君は…まぁ、良いよ何とかしてみるから』
「楽しみにしておるぞ?ではな」
『……うん、またね』
自分でも無理は承知だ、そう言う契約で彼女は救われたのだから。それでも、と願うだけなら良いではないか。まぁ、こやつが何とかする、と言ったのだ。もしかしたら本当に実現するかも知れない、それくらいは信用しても良いだろう。
そうしてあの喧しい声は聞こえなくなる。辺りは改めて静寂に包まれる。
「さて……行くか」
意識を集中して、跳ぶ。
さて、今度は何処に行くかの―――
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